野菜 野菜分野の各種業務の情報、情報誌「野菜情報」の記事、統計資料など

ホーム > 野菜 > 野菜の情報 > なすの需給動向

今月の野菜 野菜情報 2025年7月号

なすの需給動向

印刷ページ
調査情報部

主要産地

タイトル: p024
 

  なすの原産地はインド東部といわれ、日本には中国を経て8世紀ごろに伝わったとされている。東大寺正倉院に、なすを献上したという記録があり、奈良時代にはすでに栽培されていたようである。日本でも古くから栽培され、現在でも「一富士二鷹三茄子(なすび)」と縁起の良い初夢の決まり文句となっており、徳川幕府は駿府になすの農園を造り、初夏には早飛脚で江戸まで運ばせたといわれている。
 関東の卵形なす、東海・関西の(ちょう)(らん)(けい)なす、東北や関西以西の長なす、九州の(おお)(なが)なすや、北陸・京都の丸なす、山形の小なすなど、地域ごとに特徴のある大きさや形で発展した。また、現在はさまざまな色のなすも栽培されており、白い縞模様が入ったゼブラなすや、青なす(翡翠なす・緑なす)や白なすなどもある。
 なすの生育適温は20~30度と高く、かつては夏の代表的な野菜であったが、現在では施設栽培の普及などにより周年供給体制が構築されている。出荷時期により、冬春なす(12月~翌6月)と夏秋なす(7~11月)とに区分され、冬春なすは高知県や熊本県などの温暖な地域でビニールハウスや温室などにより促成栽培されている。また、夏秋なすは群馬県や茨城県、栃木県などで主に露地栽培により生産されている。

作付面積・出荷量・単収の推移

 令和5年の作付面積は、7730ヘクタール(前年比97.2%)と、前年よりわずかに減少した。
 上位5県では、
●群馬県  505ヘクタール(同 96.4%)
●新潟県  430ヘクタール(同 94.5%)
●茨城県  409ヘクタール(同 96.9%)
●熊本県  397ヘクタール(同 98.5%)
●秋田県  367ヘクタール(同 97.6%)
 となっている。
 上位5県の占める割合は全国の27.3%となっており、他の都道府県でも作付けが多いことが分かる。
 
タイトル: p025a
 
 令和5年の出荷量は、23万3500トン(前年比98.6%)と、前年よりわずかに減少した。
 上位5県では、
●高知県  3万8400トン(同 99.2%)
●熊本県  3万3400トン(同 108.1%)
●群馬県  2万3800トン(同 96.0%)
●福岡県  1万6100トン(同 100.6%)
●茨城県  1万4800トン(同 92.5%)
 となっている。
 出荷量は、上位5県で全国の54.2%と半数以上を占めている。
 
タイトル: p025b
 
 出荷量上位5県について、10アール当たりの収量を見ると、高知県の12.80トンが最も多く、次いで熊本県の9.14トン、福岡県の7.61トンと続いている。その他の府県で多いのは、徳島県の7.08トン、大阪府の6.08トンであり、全国平均は3.74トンとなっている。
 
タイトル: p025c

作付けされている主な品種等

 なすは、色や形状など地域色が豊かで、地方にさまざまな在来品種が残っているものの、次第に減ってきており、最近では、栽培が容易で色がよい長卵形の一代雑種が全国的に広く栽培されている。丸なすは、かつて全国的に栽培されていたが、近年では秋田、山形、新潟、福島、京都などで生産されているだけとなっており、京都の「賀茂なす」や山形の「(みん)(でん)なす」などが有名である。関西では長卵形なすが多く、西日本では長なす、大長なすが多く「博多長」などがある。また、長なすは東北でも栽培され「南部長」や「仙台長」なども知られている。
 
タイトル: p026a
 
 東京都中央卸売市場に入荷するなすの入荷数量(令和6年)を形状別に見ると、長卵形を主体とする「なす」が7割以上を占め、続いて「長なす」が2割以上、米なすが2%に満たず、小なすはわずかに入荷がある。
 
タイトル: p026b

東京都・大阪中央卸売市場における月別県別入荷実績

 東京都中央卸売市場の月別入荷実績(令和6年)を見ると、入荷量は1月から徐々に増え6月にピークとなる。冬春なすは高知産が入荷量のトップで多くの割合を占め、続いて福岡産や熊本産と九州の産地からの入荷がある。4月頃から群馬産や栃木産、茨城産など東京近郊からの入荷が多くなっている。
 
タイトル: p027a
 
 大阪中央卸売市場の月別入荷実績(令和6年)を見ると、入荷量は3月から増え始め6月がピークとなる。冬春なすは高知産がトップであるものの、その占める割合は東京よりも少なく、福岡産や熊本産などの九州の産地に加え、大阪産や岡山産の入荷がある。夏秋なすは山梨産に加え、徳島産、大阪産、京都産など、大阪市場の近郊の産地を含め各地から入荷している。
 
タイトル: p027b

東京都中央卸売市場における価格の推移

 東京都中央卸売市場におけるなすの令和6年の価格の推移を見ると、1キログラム当たり391~688円(年平均437円)となっている。4年および5年は、281~483円と年間の価格差は比較的小さかった一方で6年は野菜の全体的な高値の影響などにより過去2年を上回り、日照不足などの影響により、特に11月および12月は大幅な高値となった。
 
タイトル: p028a

輸入量の推移

 なすの輸入量は、生鮮では令和元年の74トンをピークに年々減少し、5年および6年の輸入はほとんどなかった。また、輸入先は、平成30年にオランダからスポット的な輸入があったものの、ほとんどが韓国産である。
 
タイトル: p028b
 
 
タイトル: p029a
 
 なすの輸入は塩蔵等が多く、令和6年の輸入量を見ると、なす(塩蔵等)は1036トン(前年比104.5%)、こなす(塩蔵等)は769トン(同102.1%)であったが、ここ数年は減少傾向にある。輸入先は、なす(塩蔵等)、こなす(塩蔵等)ともに中国が9割以上を占めており、その他(タイ、ベトナム)は1割にも満たない。
 なす(冷凍)は、輸入品の分類を示す輸入統計品目表で特定できず、統計上は具体的品目が明らかにされていないものの、「冷凍野菜」の「その他の冷凍野菜」に包含されているとみられる。その他の冷凍野菜の令和6年の輸入先は、中国が約9割を占め、その他にベトナムやインドネシア、タイなどアジアからの輸入がある。当機構の海外情報において、ベトナムの冷凍野菜(冷凍なすを含む)の記事を紹介しているのでご参照ください。

〇ベトナムの冷凍野菜の生産および輸出動向(野菜情報2022年5月号)
https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/kaigaijoho/2205_kaigaijoho1.html
 
タイトル: p029c

消費の動向

 なすの1人当たり年間購入量は、1300~1500グラム前半で推移している。小売価格(東京都区部)の動向を見ると、ほぼ横ばいとなっているが、令和6年は野菜の全体的な高値の影響を受けて、1キログラム当たり800円を超えた。
 なすは水分が多い淡色野菜であるが、主な栄養成分は、カリウム、葉酸をバランスよく含んでおり、食物繊維も豊富である。なすは、抗酸化作用や動脈硬化・がん予防としての効果が期待できるポリフェノールの一つであるナスニンやクロロゲン酸を含んでいる。なすは「アク抜きすると良い」とされているが、なすを長時間水に浸すと抗酸化物質やポリフェノールが溶け出てしまうため、アク抜きせずに調理したい。また、なすの新しい機能性関与成分である「ナス由来コリンエステル(アセチルコリン)」が高めの血圧を改善するという研究報告もあり、以下に紹介する。

○なすの食品機能と機能性表示食品(野菜情報2021年10月号)
https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/senmon/2110_chosa1.html
 
 なすは、果肉がスポンジ状になっているため、調理をすると味や油をよく吸収する。また、焼くことでうまみ成分であるグルタミン酸が増え、よりおいしさが増すという特徴がある。夏バテなどで体力が落ちているときに食欲アップのため、なすと肉などを上手に組み合わせた料理もおすすめである。なすを使ったレシピを以下に紹介する。
 
 



タイトル: p030c

〇肉詰めなすのこってり煮
https://www.alic.go.jp/koho/kikaku03_000236.html

フレッシュなすのオープン・サンド(ブルスケッタ)
https://www.alic.go.jp/y-kanri/yagyomu03_000001_00058.html

〇焼きなすとヨーグルトのギリシャ風サラダ
https://www.alic.go.jp/y-kanri/yagyomu03_000001_00318.html