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今月の野菜 野菜情報 2025年6月号

アスパラガスの需給動向

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調査情報部

主要産地

 タイトル: p025
 
 アスパラガスとは、「たくさん分かれる」「激しく裂ける」を意味するギリシャ語が語源であるといわれている。原産地は、南ヨーロッパからウクライナとされる。ヨーロッパでは春を告げる野菜として知られ、日本の「桜前線」のように「アスパラガス前線」が発表される。収穫はスペインから始まり、フランスからベルギー、オランダ、ドイツへと前線が北上していく。日本には、江戸時代にオランダから長崎へ観賞用として伝えられたとされ、正式な和名はキジが隠れるくらい葉が茂ることから「オランダキジカクシ」という。本格的な食用栽培は、大正時代に北海道で始まったとされ、当初はホワイトアスパラガスが栽培され、缶詰で流通していた。その後、特に戦後の物流の改善や食生活の変化などにより、生鮮のグリーンアスパラガスへと人気が移り、現在は、日本の流通量の9割以上をグリーンアスパラガスが占めている。その他、紫アスパラガス、ミニアスパラガス、ロングアスパラガスなど、色や大きさのバリエーションが増えている。

作付面積・出荷量・単収の推移

 令和5年の作付面積は、4140ヘクタール(前年比95.0%)と、前年に比べてやや減少した。
 上位5道県では、
●北海道  1030ヘクタール(同 93.6%)
●長野県    545ヘクタール(同 93.5%)
●福島県    330ヘクタール(同 98.8%)
●秋田県    318ヘクタール(同 96.4%)
●山形県    310ヘクタール(同 93.9%)
 となっている。

タイトル: p026a
 
 令和5年の出荷量は、2万2000トン(前年比95.2%)と、前年に比べてやや減少した。
 上位5道県では、
●北海道  3190トン(同 100.0%)
●熊本県  2130トン(同 98.2%)
●佐賀県  2090トン(同 99.1%)
●栃木県  1610トン(同 103.2%)
●長崎県  1580トン(同 100.0%)
 となっている。

タイトル: p026b
 
 出荷量上位5道県について、10アール当たりの収量を見ると、熊本県の2.27トンが最も多く、次いで佐賀県の1.99トン、長崎県の1.78トンと続いている。その他の県で多いのは、福岡県の1.91トンであり、全国平均は0.59トンとなっている。
 
タイトル: p026c

作付けされている主な品種等

 アスパラガスは、種から苗を育てて植え付けるなどし、収穫までに3年ほどを要する。その後、10年以上にわたって収穫ができるため、一度植え付けるとあまり品種を変えることがない。各産地とも、生育ぞろいが良く、露地栽培、ハウス半促成栽培、トンネル栽培のすべての作型に汎用性がある極早生種の「ウェルカム」が多いが、北海道では、低温萌芽(ほうが)性(低温時でも芽を出せること)に優れ、グリーンアスパラガスだけでなく、軟白栽培のホワイトアスパラガスにも利用できる「ガインリム」が栽培されている。

タイトル: p027a

東京都・大阪中央卸売市場における月別県別入荷実績

 東京都中央卸売市場の月別入荷実績(令和6年)を見ると、2月から佐賀産など国産が入荷し始め、3月には長崎産、栃木産、熊本産などの入荷がある。5月から山形産、北海道産、秋田産といった北日本の産地や長野産など高冷地の産地からの入荷が増える。9月以降は国産の入荷量が減り、10月から翌4月まで、輸入のメキシコ産や豪州産などの入荷がある。
 
タイトル: p027b
 
 大阪中央卸売市場の月別入荷実績(令和6年)を見ると、2月から佐賀産、福岡産、長崎産など九州の産地からの入荷が始まり、3月に一度目の入荷のピークとなる。4~5月の入荷量は減少し、6月から再度入荷量が増え、7月に二度目のピークとなり、佐賀産、長崎産、福岡産、熊本産など九州の産地からの入荷が中心となっている。9月には入荷量が7月の半分程度まで減少し、10月~翌2月は輸入のメキシコ産や豪州産の入荷がある。
 
タイトル: p028a

東京都中央卸売市場における価格の推移

 東京都中央卸売市場における国内産のアスパラガスの価格は、国内産の入荷が少なくなる11月から翌1月にかけ高値となる。2月頃から徐々に国内産の入荷量が増加することに伴い、価格は1キログラム当たり2000円を下回り、夏にかけてさらに下がり、7~10月は同1000円程度で推移している。年によって大きな変動はあまり見られず、令和6年は1キログラム当たり1055~2943円(年平均1484円)の間で推移した。令和6年は、他の野菜が全体として平年より高値で推移した年であったが、アスパラガスは、直近2年とおおむね同じ値動きであった。
 外国産のアスパラガスの価格は、夏場の7~8月が最も高く、その後徐々に下がって9~11月は安定して推移し、12月~翌1月にかけて高くなる傾向にある。令和6年は、直近2年よりも夏場の価格が高かったものの、1キログラム当たり814~2112円(年平均1158円)と、国内産の7割程度の価格で推移した。





輸入量の推移

 生鮮アスパラガスの輸入量は、平成29年から令和3年は1万トン前後で推移していたが、令和4年以降は減少傾向となっており、令和6年は5725トンとなった。主に秋から春先の国内産が少ない端境期に多く輸入されており、輸入先を見ると、平成29年はメキシコが6割、豪州が3割のシェアであったが、年々メキシコのシェアが伸びており、令和3年以降は約9割を占めている。
 調製アスパラガスの輸入量は、令和3年までは800トン前後で推移していたが、令和4年以降は600トンを下回って推移している。輸入先は、中国産が約7割を占める年もあるが、ペルー産と半々程度となる年もある。
 なお、当機構の海外情報において以下の記事を紹介しているのでご参照ください。

〇メキシコにおけるアスパラガスの生産、流通、消費および輸出動向(野菜情報2021年11月号)https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/kaigaijoho/2111_kaigaijoho1.html

〇ペルー産アスパラガスの生産・流通および輸出動向(野菜情報2023年2月号)
https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/kaigaijoho/2302_kaigaijoho1.html

タイトル: p029b

アスパラガスの消費動向

 アスパラガスの小売価格は、令和3年までは100グラム当たり190円程度で推移していたが、令和4年以降は200円を超え、上昇傾向で推移している。



 アスパラガスは、手軽な調理でおいしく食べられ、料理に彩りを添える野菜として人気が高い。また、その穂先には、ルチンというポリフェノールやアスパラギン酸(19世紀にアスパラガスから発見)といったアミノ酸を多く含んでおり、中でも多量に含まれているアスパラギン酸には、体内でエネルギー代謝を活発にし、疲労回復を早める効果がある。その他、葉酸などのビタミン類も豊富に含まれ、特にゆでても水に溶けにくい脂溶性ビタミン類を多く含むため、油と組み合わせて摂取すると良い。以下に、アスパラガスを使った料理のレシピと栄養成分を紹介する。


〇 アスパラガスのポーチドエッグ添えレシピ
https://www.alic.go.jp/y-kanri/yagyomu03_000001_00086.html

〇 アスパラガスの栄養成分
https://www.alic.go.jp/y-kanri/yagyomu03_000001_00039.html