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海外情報 野菜情報 2021年11月号

メキシコにおけるアスパラガスの生産、流通、消費および輸出動向

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調査情報部

【要約】

 メキシコのアスパラガス生産は、米国向け輸出を念頭に栽培が開始され、米国の重要なアスパラガスの供給地となっている。そのため、生産や流通などは、米国の加工業者や輸出業者の関与が大きく、それらの知見が活かされ、日本をはじめEU などへの輸出も行われている。近年、オーガニック需要の増加にも対応し始め、今後もその生産は拡大に向かうとみられている。

1 はじめに

 メキシコのアスパラガス生産は、1950年代後半に米国の大手野菜缶詰業者により開始された。現在では、主にメキシコの北部と中部の4州でアスパラガスが生産され、生産量と栽培面積は拡大し続けている。特に米国市場が主要な輸出先であるため、メキシコのアスパラガス生産は、米国の端境期に向けた輸出を中心に発展している。以下、同国のアスパラガスの生産、流通、消費および輸出動向について紹介する。なお、本稿中の為替レートは、1米ドル113円(9月末日現在のTTSレート(注1))を用いた。
 
(注1) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の月末TTS相場。

2 生産状況

(1)生産地域
 メキシコのアスパラガス生産は、米国市場向けの供給を目的に始まった。1950年代後半から米国のデルモンテ、ハインツ、キャンベルなどの野菜缶詰企業がメキシコでにんじんなどの野菜を栽培し始めたのと同時期にアスパラガスも持ち込まれたとされる。
 アスパラガスの主な生産地は、北西部のソノラ州、バハ・カリフォルニア州およびバハ・カリフォルニア・スル州と中部のグアナフアト州である(図1)。これら4州で国内アスパラガス作付面積の92%を占めており、その中でも最大の生産州は米国と国境を接するソノラ州である。同州では特にアルタル大砂漠を囲む地域での栽培が盛んであり、2020年の作付面積はメキシコ全体の51%に相当する約1万9000ヘクタールとなった。メキシコ北西部に広がる砂状の土壌がアスパラガス栽培に適しており、乾燥した気候から病害虫の被害も受けにくく、当該地域の気温も温度変化に敏感なアスパラガスの生育に適している。


 
(2)作付面積
 同国のアスパラガスの作付面積は右肩上がりに推移し、直近10年で130%増加している。この間の主要4州の増加率を見ると、ソノラ州99.9%増、バハ・カリフォルニア・スル州342.3%増、バハ・カリフォルニア州83.4%増、グアナファト州53.1%増となっている。また、主要4州ではないものの、国内中央部に位置するケレタロ州は約12倍に増加し、急速な拡大となった。2020年現在、メキシコ全土でのアスパラガスの作付面積は約3万7000ヘクタールであり、栽培地域は、2011年時点の5州から2020年には25州に広がっており、この間に作付面積は約2.3倍に拡大している(表1)。



 ソノラ州、バハ・カリフォルニア・スル州、バハ・カリフォルニア州などのあるメキシコ北西部では、従来から生産されてきた小麦やトウモロコシの農業技術が不十分なため、コスト高な生産となって収益を上げにくい状況となっている。このため、輸出に直結し、収益性の高いブルーベリー、アボカド、レモン、ウォールナッツ、アスパラガスなどへの転作が国によって推進され、その財政支援にメキシコ銀行とメキシコ農業信託基金(FIRA)が協力している。FIRAによれば、1ヘクタール当たりのアスパラガスの生産価値は、トウモロコシの25.5ヘクタール分に相当するとしている。
 この10年間で新規にアスパラガスの生産に乗り出したミチョアカン州、シナロア州、コアウイラ州、ドゥランゴ州などでも作付面積は増加傾向にある。このように新規参入州が拡大する背景には、前述の国の財政支援が関わっている。
 メキシコ農業農村開発省(SADER)によれば、アスパラガスの主産地であるソノラ州のサンルイス・リオ・コロラド市では、2020年に新たに2226ヘクタールの農地でアスパラガスの栽培が許可されており、2021年春に播種(はしゅ)が行われれば、3年後の冬には初収穫が見込まれている。
 一方、アスパラガスの生産には大きな課題もある。収穫面積を見ると、地域により大きな隔たりがあり、全国レベルでは2020年に収穫が行われなかった面積は4947ヘクタール、実に作付面積の13.4%に上る(表1)。
 次に収穫率を見ると、ソノラ州やグアナフアト州では安定した高い収穫率であり、続くバハ・カリフォルニア州では2018年に、ケレタロ州では2019、2020年にそれぞれやや低い数値を示している。一方で、バハ・カリフォルニア・スル州では2018年以降、下降傾向となっている。また、シナロア州では作付面積の拡大は見られるものの、収穫率はかなり低い水準となっている(表1)。この要因の一つに気候条件が挙げられるが、メキシコ政府によれば、生産地によりアスパラガス栽培ノウハウが異なるため、生産歴の浅い地域では収穫まで結びつかないことが多いとされる。ソノラ州やグアナフアト州では、栽培のノウハウが既に蓄積されているため、収穫の割合が高くなる傾向がある。
 
(3)生産量
 2020年のアスパラガス生産量は約30万トンに上り、この10年間では約3.5倍増加している。これは、同期間の収穫面積の増加率に比べ大きく、単収の向上が生産量の増加に寄与していることがわかる。生産量が最も多いのはソノラ州であり、全体の65%を占める。これに次ぐのはグアナフアト州とバハ・カリフォルニア・スル州であり、それぞれの同13%、同9%を占めている(表2)。



 各州での農業生産額に占めるアスパラガス生産額の割合を見ると、ソノラ州では13.6%となり、ブドウ、小麦に続く3番目の主要作物となっている。また、バハ・カリフォルニア・スル州では同22.2%となり、トマトに続く2番目の主要作物となっている 。一方、グアナフアト州とバハ・カリフォルニア州は、いずれも上位5位には入っていない。
 また近年、主要輸出先である米国でのオーガニックの需要の高まりを受け、オーガニックのアスパラガス生産が行われるようになり、徐々にではあるが増加傾向にある(表3、写真1)。





 
(4)単収
 メキシコのアスパラガスの単収はこの10年間で62%増となり、生産量増加の大きな要因となっている。2020年の主要4生産州の単収を見ると、ソノラ州とグアナフアト州ではそれぞれ1ヘクタール当たりの単収が10.6トン、同9.2トンと高く、バハ・カリフォルニア・スル州とバハ・カリフォルニア州ではそれぞれ同7.8トン、同7.7トンとやや低い(表4)。



 メキシコの平均的な単収は世界的に見るとそれほど高くはない。世界の主要アスパラガス生産国の一つであるペルーを見ると、1ヘクタール当たりの単収は14トン(2017年)と大きく、同国ではアスパラガスの単収は最高で同18トンまで目指すことができるとされている。よって、メキシコでのアスパラガス生産には、単収に関して改善の余地があると言える。
 単収が低い原因の一つとして指摘されているのは、栽培ノウハウの問題がある。今後、優良種子の導入や適切な手入れ作業が拡大すれば、単収が改善されるとみられている。
 単収の増加を促すための取り組みは、これまでのところ民間主導で行われており、過去にはメキシコ国家科学技術審議会(CONACYT)が研究資金を投入したことがあるが、現在ではそのような政府による資金投入は見られない。
 
(5)品種および栽培暦
 メキシコで栽培される主な品種は、米国のカリフォルニア州で栽培される品種(UC157、Atlas、Brockなど)と同じである。アスパラガスの若茎は色によって、紫、紫/緑、緑と分別される。メキシコには緑色のアスパラガスのみ栽培されており、以下の種類がある。
 Constanza:緑色の約20cmの細い若茎
 Bassano:太い緑色の茎で、葉や穂先が紫色で柔らかい
 Colosal de Connover:米国産のハイブリッド品種、太いやや白味かかった色の茎
 米国でのアスパラガス生産の端境期に向けた輸出や地域の気候条件を考慮し、ソノラ州やバハ・カリフォルニア州などの北部地域での収穫期は1月から4月がピークとなり、気候条件により5月まで延びることもある。一方、メキシコの中部に位置するグアナフアト州の収穫期は5月から9月となっている。近年、ソノラ州では栽培地を南部に広げる動きがあり、収穫開始期が10月に早まっている(図2)。



 図3はメキシコの生鮮アスパラガス月別生産量を表している。メキシコでは年間を通じた生産が可能であるが、1月から4月の生産量が年間生産量の63%を占めている。同国のアスパラガス生産は米国市場への供給が主要な目的であり、米国さらには米国向けの輸出が多いペルーの端境期に合わせて、一年を通じて供給が可能となるよう調整が行われている。



 
(6)播種から収穫までの一連の栽培方法
 アスパラガスは多年性の植物であり、直播の場合、収穫が可能になるまで3~4年が必要となる。一方、植え付けした場合は2年目以降に収穫が可能である。また、アスパラガスの通常の寿命は12~15年と言われているが、生産量が減少するため、メキシコでは約10年ごとに再植え付けが推奨されている。
 アスパラガスは温度の変化や風に敏感である(風が強いと穂先が傷むことがある)。生産者は、種子を加工業者(パッカー)または輸出業者(シッパー)から受け取り、大手生産者の場合は専用施設(グリーンハウス)で育苗してから植え付けが行われる。
 メキシコでの収穫はすべて手作業で行われ、刃の鋭い包丁で刈り取られる。通常、土からの高さが約 23センチ(9インチ)、直径が0.5センチになったころで収穫される。なお、メキシコでは播種の機械化率は100%、かんがい率も100%となっており化学肥料の使用も非常に高い。
 ソノラ州の植物衛生委員会は、同州の生産品の品質向上を目的に食品安全プログラムを策定し、農食品の汚染を出来る限り防ぐための対策について記している。同プログラムの中にはアスパラガスの生産に関するマニュアルも作成されており、世界標準であるHACCPおよび適正農業規範(GAP)の規定に則っている。アスパラガスは輸出品目であるため、米国企業からの指導もあり、多くの生産者や加工業者などは世界的な品質標準であるGAPやHACCPなどを取得しており、欧米市場の需要に応じて近年ではオーガニック製品の生産も盛んになっている。
 メキシコ産アスパラガスは、生鮮および加工の2つの形態で流通されている。ただし、栽培当初の用途とされた加工アスパラガス(瓶詰など)の生産は少なくなり、付加価値の高い生鮮アスパラガスの流通が大半を占めている。
【生鮮アスパラガス】
 手作業での収穫、集荷、洗浄の後、カット、選別、梱包を経て、その日のうちに米国へと送られる。米国への輸送は主にトラックであり、低温輸送が可能なリーファーコンテナが使われる。輸送トラックは地元の輸送業者を使うことが主流である。米国に到着した貨物はそのまま米国の提携企業に向けられる。
【加工アスパラガス】
 加工業者大手(San Miguel社)の場合、生産者から直接アスパラガスを購入しており、買取価格はその時の時価また品質、量により変動する。その他、自社栽培を行う場合もあり、契約栽培の場合は生産者への技術指導も行われる。収穫は生鮮アスパラガスと同じく、朝早くから行われ、品質劣化を防ぐため加工工程も素早く行われる。前述の洗浄、カット、選別の他に殺菌、乾燥、真空密閉が行われる。加工の後にトラックに載せて米国へと輸出される。米国では直接小売用として販売されるほか、流通業者を通じて各店舗へ卸される。

3 流通

(1)流通経路
 アスパラガスは傷みやすい作物であるため、収穫から輸出まで一貫した温度管理の下で行われる。収穫されたアスパラガスはプラスチックの箱に入れられ、温度管理のできるトラックでパック工場まで運ばれる。工場では洗浄、カットの後に選別作業と梱包が行われる。梱包されたアスパラガスは出荷まで1~4度の低温倉庫で保管される。梱包後の輸送は温度管理が可能なトラックで行われることが主流である。
 流通するサイズは特に規定はないが、主要な市場である米国で流通するサイズに合わせた選別と袋詰めが行われる(表5)。



 メキシコのアスパラガスの流通には、生産者、パッカーおよびシッパーの3者がそれぞれ主要な役割を果たしている。生産者は、主にパッカーとの契約栽培の下でアスパラガスの生産を行う。販売価格は高く、また、一度植えれば約10年の収穫が可能なため、生産者にとって安定した利益の高い作物となっている。
 アスパラガスは傷みやすい野菜であるため、収穫後すぐに冷蔵での取り扱いが必要となる。これらの施設を有するのはパッカーであり、その多くはメキシコ資本の中小企業となっている。パッカーの中には自社圃場(ほじょう)を所有する会社もあるが、需要が大きいため、他生産者からの調達も行う。パッカーは米国にあるシッパーと専属契約があり、供給量が確保されている。パッカーは米国内で卸売りまたは小売りを行うことはほとんどなく、メキシコ国内でのアスパラガスの集荷と加工、そして米国への輸送までを担っている。
 メキシコ産アスパラガスは米国市場が主要な輸出先であるため、アスパラガスの最終的な輸送先は主にカリフォルニア州にあるアスパラガスのシッパーとなる。米国内でメキシコ産アスパラガスを扱うシッパーは25社程度あると言われており、メキシコやペルーからアスパラガスを調達している。これらシッパーの中には、カリフォルニア州でアスパラガスを生産している会社もあり、メキシコから調達することで、1年を通じて米国市場にアスパラガスを供給する体制を整えている。シッパーはまた、欧州や日本向けの輸出を手掛けており、メキシコのパッカーから運ばれるアスパラガスを選別し、日本や欧州向けに空輸で輸出している。
 なお、メキシコ国内向けに出回るアスパラガスは生産者またはパッカーから供給されるものであり、輸出向けと同じ種類・品質であるが、主にシッパーの基準から外れたものである(写真2)。



 
(2)主要企業
 前述のとおり、メキシコのアスパラガス生産は米国の野菜缶詰業者により始まった。そのため、今でも米国大手野菜業者がメキシコで加工などを行っている。これらの企業は生産者から直接野菜を調達しており、アスパラガスの他にブロッコリー、カリフラワー、にんじん、果物などの青果をも取り扱っている。
【米国系企業】
〇General Mills社
 同社の野菜部門ブランドであるグリーン・ジャイアント(Green Giant)は、メキシコ中央部のグアナフアト州に冷凍野菜の生産拠点を持っている。グアナフアト州近辺の生産者からアスパラガスをはじめ各種の野菜を調達している。
〇Birdeyes社
 1960年代にグアナフアト州に冷凍野菜施設を建設して以降、同地域からの種々の野菜や果物の冷凍加工を行い米国向けに輸出している。
〇Coastline Family Farms社
 米カリフォルニア州とアリゾナ州のアスパラガス生産を補う形でメキシコ産アスパラガスを扱っているシッパー。
〇Progressive社
 米カリフォルニア州とワシントン州の他に、メキシコの8カ所の生産地で栽培契約を行い、さらにペルーの2カ所でアスパラガスの生産を行っている。同社は3カ国にまたがる生産体制を確立することで、通年生産体制を可能にしている。
〇Jacobs,Malcom & Burtt Produce社
 米カリフォルニア州にある自社農園およびメキシコ、ペルー、カナダでの契約生産者からアスパラガスを調達し、米国市場のみならずアジア、欧州市場に対して通年供給をしている。米国ではオーガニック生鮮アスパラガスの国内供給がメキシコからの輸入だけでは追いつかず、同社では一層オーガニック生産に注力する予定だとする報道もある(図4)。


 

〇Grower Direct Marketing社
 米カリフォルニア州でのアスパラガス生産と並行し、メキシコおよびペルーでのアスパラガスの生産から加工、輸出までを行っており、顧客ニーズに合わせ27種類もの異なる加工・パッキングを行う。
【メキシコ系企業】
〇ALTAR Produce社
 メキシコ資本で生産から輸出までの全工程を一手に手掛けている最大手企業。同社は米国に事務所を構えながら、グアナフアト州やソノラ州などを中心に合計1万2952ヘクタールのアスパラガス圃場を抱え、年間約6万8500トン以上の生鮮グリーンアスパラガスを栽培するほか、他社同様ペルーにも圃場を持つ。また、日本向け輸出も行っている。ただし、自社の圃場で生産する量では需要を賄いきれないため、他のパッカーや生産者からアスパラガスの調達を行っている(図5)。



〇Horticola del Desierto社
 ソノラ州に17カ所に圃場があり、2つの加工場を保有している。米国ではGlobal Direct Marketing(GDM)社と提携し、自社野野菜を米国および日本向けに出荷している。

4 輸出動向

(1)輸出量および輸出額
 メキシコ政府および業界紙の統計によれば、生鮮アスパラガスの輸出量は年を追うごとに増加しており、2019年は17万トンを超え、同年の輸出金額は4億5000万米ドル(508億5000万円)に達した。また、輸出単価は1キログラム当たり2.6米ドル(294円)であった(表6、図6)。






 表7は、メキシコからの輸出先別輸出量の推移である(注2)。米国と他の国と比較すると、その数量は桁違いであり、メキシコ産生鮮アスパラガスの輸出が米国パッカーおよびシッパーと切り離せないものになっている。日本に輸入されるメキシコ産生鮮アスパラガスのうち、直接日本に入ってくるもの以外を米国経由とすると、メキシコから米国に輸出されるうち、日本へ振り分けられる割合は2019年で4.0%となる。


 
(注2) メキシコ側の統計では、米国経由で日本に入るメキシコ産アスパラガスは米国への輸出として集計されるため、日本の財務省貿易統計(表8)とは合致しない。
 
 生鮮アスパラガスの米国向け輸出は主に1~4月に行われる。米国市場では、カリフォルニア州、ワシントン州、ミシガン州などで生産されるアスパラガスが5~7月の間にもっともよく出回り、ペルー産は9~12月の間に供給される。
 米国市場のこうした端境期に合わせて、メキシコの主要地域では生産体制が調整される。ソノラ州およびバハ・カリフォルニア州からは、1月に総生産の20~25%が米国に輸出され、2月には同40%が輸出される。3~4月は生産量と輸出量が落ち着きを見せ、5月にソノラ州からの輸出が再び増加する。6月になると、生産が多いグアナファト州からの輸出が増え、以降、9月までは同様の傾向が続く。9月から翌1月の間は、少量ながらメキシコ全土からの輸出が行われる。
 陸路でつながる米国への輸送手段は海上輸送よりも安価なトラックとなり、収穫した同日の米国への生鮮アスパラガス輸送が可能なことも、商品の鮮度保持に貢献している。さらに、収穫作業や梱包作業は労働集約的であるため、人件費の安いメキシコは米国産のアスパラガスに比べ、より廉価な商品を提供できるメリットがある。
 加えて、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA) も、メキシコのアスパラガスの米国向け輸出に寄与している。米国では、生鮮アスパラガスの輸入関税率は5%(9月15日から11月15日)および21.3%(11月16日から9月14日)と高いが、メキシコ産の場合はUSMCAにより関税が撤廃されている。なお、競合国であるペルーについては、米国向け輸出は1991年からアンデス特恵関税制度により米国の輸入関税が免除されており、2009年からは米・ペルー自由貿易協定(FTA)により関税が撤廃されている。
 
(2)輸出形態
 輸出の形態としては生鮮がほとんどである。ITC(国際貿易センター)によれば、瓶詰アスパラガスの輸出実績は少なく、直近実績を見ると2016年は7.7トンがドミニカ共和国とジャマイカへ、2017年は6.7トンが英国へ、2018年には32キロがその他諸国へ輸出されたのみである。
 
(3)対日輸出形態
 日本向けのアスパラガスは、米国向けやメキシコ国内で流通するものとは異なり、穂先が緑色のものとなる。これは「輸出規格」とされ、主に日本と欧州向けに輸出される。一方、米国向けや国内市場には、品種が同じで穂先がやや白い「国内規格」とされるものが主体となる。また、米国向けは通常1ポンド(約454グラム)で11~20本、日本向けは通常100グラムで3~4本に束ねられる。これらの梱包は全てメキシコで行われており、植物衛生証明書などもメキシコで用意されている。メキシコから届く貨物は米国で保管され、航空便にそのまま格納されるので、米国で加工が行われることはない。
 財務省貿易統計によれば、日本はメキシコから生鮮アスパラガスのみを輸入しており、冷凍および調製での輸入実績はない。
 2020年の日本の生鮮アスパラガス輸入量は9307トンとなり(注3)、このうちメキシコからの輸入は全体輸入量の83%に当たる7682トンと最も多く、次にオーストラリアが同約13%に当たる1225トン、ペルーが164トンと続く(表8、図7)。



 

 
(注3) (注2)のとおり、メキシコ側の統計と日本の財務省貿易統計とは合致しない。
 
 各国からの輸入には季節性が極めて顕著であるが、メキシコの生鮮アスパラガスは多くの量を通年供給できることにより、そのシェアを維持している。
 メキシコから日本向けに直接アスパラガスを輸出する場合は、一部では海上コンテナによる輸送もあるが、その数は限られ(2015年実績は総輸出量の1%)、特に輸出量が多くなる2月から3月に行われる程度である。日本・メキシコ経済連携協定(EPA)により、メキシコからのアスパラガスの輸入関税率は0%となっている(通常は5%)。
 日本向けの輸出の一つの特徴は米国経由で行われることが多いという点である。アスパラガスは傷みやすい野菜であることから、そのほとんどは空輸で日本に運ばれる。米国にあるシッパーは、カリフォルニア州のロサンゼルスまたはサンフランシスコの空港から東京または関西の空港に輸出している。米国企業を通じて輸出が行われる理由としては、米国企業の有する輸出ノウハウが挙げられる。メキシコのパッカーは、陸上輸送で米国に商品を輸出するノウハウを有していても、空輸のノウハウは少なく、またこれに伴うリスクやコストなどの負担にも慣れていない。そのため、日本への輸出の際、米国のシッパーを通じて行われることが多い。カリフォルニア(ロサンゼルス、サンフランシスコ)から日本への直行便数の多さも、米国を経由する一つの要因となっているようである
 
(4)今後の対日輸出の見通し
 メキシコは、米国に隣接する地理的利便性を生かして多くは米国資本パッカーやシッパーのサポートのもと、日本に向けて安定したアスパラガス供給の継続が可能とみられる。
 メキシコからの対日輸出が増加している理由としては、対米輸出と同じく供給時期の多様性、生産コストを含む価格競争力、前述のEPAによる関税の優遇が挙げられる。日本向けの主な輸出業者は、メキシコ資本のALTAR社の他に、JMB社、Global Marketing社およびKings Crown Packing社が挙げられる。
 メキシコ農業諮問委員会(GCMA)発行の「農産物に関する展望2020」によれば、欧州市場におけるアスパラガスの競合国はペルーなどの南米諸国であるとされ、メキシコ企業の情報収集力・マーケティング力の強化、国および州政府による公共支援の強化が重要とされている。現在、メキシコは日本の輸入アスパラガス市場で圧倒的なシェアを持っており、競合国とされるペルーとの間に大きな差はあるものの、日本のアスパラガス輸入シェアでペルーは第3位につけている。ペルーは生鮮のみならず調製アスパラガスも日本に輸出しており、そのシェアは37%と低くはない。単収のさらなる上昇でメキシコに比べて不利とされる輸送コストを克服でき、価格面で競争力を持てるようになれば、日本市場でのペルー産との競争がより高まってくると考えられる。

5 おわりに

 米国市場への供給源として栽培が始まったメキシコでのアスパラガス生産は、拡大を続け、現在では時期をずらしながらの通年栽培が行われている。米国の大手シッパーは、契約栽培などを通じて生産工程から大きく関わっており、日本への輸出についても大きな役割を担っている。栽培時期、消費地への近接性、安い人件費および他国との積極的な経済連携協定の締結が、メキシコ産アスパラガスの競争力の要因となっている。
 近年、メキシコでは北西部や中部の農地で国を挙げた転作支援が行われており、アスパラガスもその支援対象作物となっている。このため、今後も生産は増加するとみられている。ただし、ペルーとの比較でわかるように単収の低さが大きな課題である。
 一方、主要輸出先である米国での需要の高まりを受け、オーガニック・アスパラガスの生産が大手企業によって開始されている。世界的な健康・安全志向の高まりと、病害虫被害の少なさ、そしてより高い付加価値への追及が求められていくことを考慮すると、今後、オーガニック生産への転換も一層拡大していくと予想される。



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