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海外情報 野菜情報 2023年2月号

ペルー産アスパラガスの生産・流通および輸出動向

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調査情報部

【要約】

 ペルーのアスパラガス生産は、調製ホワイト・アスパラガスの欧州向け輸出を目的として1950年代に始まった。現在では、生鮮グリーン・アスパラガスを中心として一年を通した生産・出荷が行われており、米国やEU向けを中心に日本向けも含め、世界第1位のアスパラガス輸出国となっている。アスパラガスは、同国農産物の輸出重点品目の一つに位置付けられており、政府による支援の下、今後も国際市場における影響力を維持するものとみられる。

1 はじめに

 財務省貿易統計によると、2021年の日本の生鮮アスパラガス輸入量は9037トンであり、12年の1万5243トンと比較して40.7%減少した(図1)。これは輸送コストや出荷時期(豪州と一部重複)といった面での競争力低下とみられる。
 輸入先別に見ると、メキシコからの輸入が全体の9割を占め、豪州(同6.6%)、ぺルー(同1.8%)がこれに続いている。12年には豪州、ぺルー、タイ産がある程度の割合を有していたが、近年はこれらの国からの輸入が減少し、メキシコ産の割合が高まっている。ぺルー産は、直近10年間で輸入量の最も多かった13年(1868トン)と比べ、21年(164トン)には10分の1以下に減少しているものの、一年を通して輸入されている。

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 また、21年の調製アスパラガスの輸入量は733トンであり、生鮮アスパラガスの減少と同様に12年の1509トンと比較して51.4%減少した(図2)。
 輸入先別に見ると、中国が全体の6割弱(58.8%)、ペルーが4割(同40.6%)と、この2カ国でほぼ独占している。ペルー産は、直近10年間では20年の501トンが最大で、毎年200~500トン程度輸入されている。

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 本稿では、ペルーの主要な農産物の一つであるアスパラガスの生産、流通および輸出動向について報告する。
 なお、本稿中の為替レートは、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均為替相場」2022年12月末TTS相場の1ヌエボ・ソル=35.16円、1米ドル=133.70円を使用した。

2 生産動向

(1) 生産地域
 ペルーは、南米大陸北西部の太平洋岸に位置する。国土面積は日本の約3.4倍の128万5000平方キロメートルで、南米ではブラジル、アルゼンチンに次ぐ大きさである。国土は南北に2000キロメートル超にわたり、赤道直下の南緯0度から18度に位置する。地理的には熱帯と亜熱帯にまたがるが、気候は地勢状の3地域により異なる。南北にアンデス山脈が走っており、3つに大別すると、国土の28%がアンデスの山岳地域(シエラ)、12%が太平洋に面する沿岸地域(コスタ)、60%が内陸部の熱帯雨林地域(セルバ)となる(図3)。このうち、農地面積は、国土面積の19%に相当する24万4000平方キロメートルであり、アスパラガスは沿岸地域の比較的温暖な気候の下で栽培されている。


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(2) 主な生産地
 ペルーのアスパラガス生産は、北部が調製ホワイト・アスパラガスを中心とする一方、南部では生鮮グリーン・アスパラガスが中心と特徴付けられる。これは、両地域の気候によるところが大きく、北部のラ・リベルタ州では曇天が多いのに対し、南部のイカ州では日照時間が長く、光合成によりグリーン・アスパラガスの緑色が濃くなるという性質に適しているためである。また、北部ラ・リベルタ州に比べ南部イカ州は季節による気温の寒暖差が大きい。このため、北部では年間を通して収量が安定している一方、南部では気温が上昇する9~12月に収量が多くなる傾向がみられる(図4、5)。

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 このほか、生鮮グリーン・アスパラガスを輸出するための空港や港湾施設などへのアクセスの良さも産地形成に関与している。ペルーのアスパラガスは、ほとんどがリマ国際空港、もしくはそれに近接するカヤオ港から輸出される。輸出地までの距離は、北部ラ・リベルタ州トルヒーヨ市から600キロメートルであるのに対し、南部イカ州イカ市は200キロメートルで交通アクセスが良い。しかしながら、この輸出アクセスが不利であるにもかかわらず、北部でも2000年代に入ってからは生鮮輸出用のグリーン・アスパラガスの生産が増加している。北部でのアスパラガス生産は、品質や単収面で南部より不利とされているが、寒暖差の小さい気候を利用し南部と競合しない時期に出荷を行っている。

(3) アスパラガス生産の経緯
 ペルーの農産物輸出は、コーヒーなどの伝統的作物とブドウ(生食用)、マンゴー、ブルーベリー、バナナ、アスパラガスなどの非伝統的作物に分類される。輸出額で見ると、アスパラガスはブドウ、マンゴーに次ぐ輸出規模であり、輸出重点品目の一つとして位置付けられる。
ペルーのアスパラガス生産は1950年代に始まり、以下の3つの段階を経て現在に至っている。

ア 第1期(1950~70年代)
 ペルーのアスパラガス生産は、50年代初めに北部沿岸地域にあるラ・リベルタ州で、欧州向け缶詰用として調製ホワイト・アスパラガスが導入、栽培されたのが始まりとされる。80年代半ばまで最大の輸出先はデンマークであり、こうした輸出需要を背景に、生産量は増加基調で推移した。

イ 第2期(1980~90年代前半)
 アスパラガス生産量は、80年代から90年代前半にかけて作付面積および単収の増加により拡大した。これは、80年代に調製ホワイト・アスパラガス輸出市場で大きな割合を占めていた台湾からの輸出が減少したためであり、台湾に代わりペルーおよび中国からの輸出が増加した。
 その一方で、生鮮グリーン・アスパラガスの輸出市場開拓に向けた取り組みを開始した。南部の沿岸地域にあるイカ州では、86年に輸出用生鮮グリーン・アスパラガスの生産プログラムが開始され、生鮮品を中心にアスパラガスの生産が行われた。
 伝統的な作物生産から脱却し新たな輸出作物の導入を模索していた南部イカ州の農協では、米国南部市場でのビジネスチャンスを求め、米国国際開発庁(USAID)からの農業支援や貿易振興に関する提案、資金などの支援を受け、同国向け輸出作物として、メロン、パプリカ、豆類、グリーン・アスパラガスなどの試験栽培評価が行われた。この結果、ペルーのグリーン・アスパラガス生産は、米国市場における端境期の供給作物として採用された。この端境期供給プロジェクトでは、イカ州の農協が生産者に呼び掛け500ヘクタールの農地でグリーン・アスパラガスを生産するとともに、加工・出荷施設を建設したことで、同州のグリーン・アスパラガス生産の産業化に至った。80年代末に導入された輸出向け生鮮グリーン・アスパラガス生産はその後急速に拡大し、90年代には、生鮮グリーン・アスパラガスが調製ホワイト・アスパラガスの生産量を上回った。

ウ 第3期(1990年代後半~)
 90年代後半になると、アスパラガスの生産の中心は、欧州向けなどの調製ホワイト・アスパラガスから米国向け生鮮グリーン・アスパラガスに移行した。これは、中国のアスパラガスの生産・輸出状況の影響を受けている。中国のアスパラガス生産量は、98年の35万トンから01年には62万トンに増加するとともに、調製ホワイト・アスパラガスの輸出量も7万8000トンから9万6000トンに増加した。また、調製ホワイト・アスパラガスの輸出単価は、中国産(2001年、0.86米ドル、115円)がペルー産(同1.93米ドル、258円)より圧倒的に安価であった。ペルー産アスパラガスの市場価格は、中国産の輸出拡大に伴い下落した結果、生産者の収益性悪化につながった。このため、ペルーでは調製ホワイト・アスパラガスから生鮮グリーン・アスパラガスへ生産の転換が進んだ。

(4) 収穫面積・生産量
ア 収穫面積

 ペルー農業灌漑(かんがい)省(MIDAGRI)によると、2020年の収穫面積は3万2446ヘクタール(前年比2.4%増)とわずかに増加した(表1)。南部イカ州が最大の生産州であり、これに次ぐ北部ラ・リベルタ州と合わせると全体の8割を占め、2大産地となっている。20年の収穫面積を15年と比較すると4.4%減となっており、やや減少傾向で推移している。州別では、イカ州が増加する一方、ラ・リベルタ州が減少傾向で推移している。

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イ 生産量
 2021年のアスパラガス生産量は、35万7806トン(前年比3.1%減)とやや減少した。15年と比較すると3.2%減少しているものの、この間の生産量に大きな変化は見られない(表2)。
 州別に見ると、生鮮グリーン・アスパラガスの生産が盛んなイカ州では、15年から19年にかけて増加傾向で推移し、16年にラ・リベルタ州を抜いて最大の生産州となった。21年は減少したものの、生産量全体の50.2%を占める最大の生産州である。これに次ぐラ・リベルタ州の生産量は、15年から19年まで減少傾向で推移したが、20年以降はやや回復基調となっている。調製ホワイト・アスパラガスの生産が多い同州では、調製品の輸出減に伴い、生鮮グリーン・アスパラガスやその他の輸出向け作物(マンゴーなど)へ作付けの転換が進んでいる。

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(5) 品種
 1950年代にラ・リベルタ州でアスパラガスの栽培が始まった際には、缶詰用のホワイト・アスパラガスとして、メアリー・ワシントン(Mary Washington)という品種が導入された。現在では、米カリフォルニア大学で開発されたUC157F1が全体の85%程度を占める。このほか、UC157F1の改良型であるUC115を利用する生産者もある。ペルーでの主な栽培品種は表3の通りである。

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(6) 関連政策など
ア 政府の支援プログラム
 MIDAGRIは、2010年から競争力強化のための支援プログラム(Agroideas)を実施している。このプログラムは、アスパラガスなど20種類以上の野菜や果物の生産チェーンの強化を目的としており、生産・流通の合理化のための機械やインフラの設備、農業資材の導入、技術支援などを行っている。
 また、サブセクター灌漑(かんがい)プログラム(PSI)を通じ、同国で課題となっている灌漑施設整備として、大規模な水力発電・灌漑整備工事や灌漑水路の改修工事などが行われている。

イ 農業振興法
 ペルーでは2001年、都市部(リマおよびカヤオ)を除く地域の農業投資を促進するため「農業振興法(農業セクターの振興に関する法律)」が制定された。この法律は19年に改正され、新農業振興法として31年まで実施期間が延長された。新農業振興法では、農業従事者の権利の拡大や小規模家族経営農家の待遇改善を図るため、最低賃金の引き上げなど一層の労働条件の改善などが課された。この結果、人件コストなどが上昇し、収益性が低いアスパラガス栽培などからの撤退やアボカド、ブルーベリー、ブドウなど高収益作物への転換が進んでいる。

3 流通、消費動向

(1) 流通(加工、輸送)
 ペルーのアスパラガスの流通は、全体の約8割が生産から加工・出荷、輸出に至るまで企業による一元的管理が行われているとされる。輸出企業の中には、自社で()場を所有している場合もあり、原料が不足する場合には契約生産者から調達を行う。加工・出荷についても自社工場または契約先企業が行っている。
 生鮮グリーン・アスパラガスの場合、加工・出荷工場では、高圧水での予備洗浄、消毒冷却を行う。その後、高圧洗浄、異物除去、選別・分類、茎の下の部分のカット作業を行い、結束、箱詰めを行う。箱詰めされたアスパラガスは、出荷までの間、冷蔵保管(2度)される。加工施設のあるイカ州から国際空港のあるリマまでは輸送トラックで6時間程度を要する。
 空港に到着したアスパラガスは冷蔵倉庫で保管され、温度管理された航空機で目的地に運ばれる。海上輸送は航空輸送より安価であるが輸送時間が長いため、生鮮アスパラガスでは輸送期間が最長9~13日以内の場合に利用している。ペルー統合外国貿易情報システム(SISCEX)によると、生鮮グリーン・アスパラガスは全体の8割程度が航空輸送とされる。一方、調製品や冷凍品はほぼ全量が海上輸送される。リマのホルヘ・チャベス国際空港には最新の冷蔵室が整備されており、生鮮アスパラガスの8割程度が当該空港から輸出される。
 なお、米国に輸出される生鮮グリーン・アスパラガスは、米国内に到着後、一時保管場所に輸送する前段階で臭化メチルにより燻蒸処理されることが義務付けられている。

(2) 輸出業者
 生鮮アスパラガスの輸出業者は61社あり、このうち、上位2社(Beta社およびDanper社)のそれぞれの取扱量が10%を超える(表4)。大手輸出業者の多くは首都リマに本社があり、複数の地域に自社圃場を有し、それぞれの地域で生産から加工・出荷までの流通体制を整えている。

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(3) 価格
 MIDAGRIによると、2020年のアスパラガスの生産者販売価格は、全国平均で1キログラム当たり3.28ヌエボ・ソル(115円)であった(図6)。15~20年の間の価格は、17年の3.69ヌエボ・ソル(130円)が最も高く、20年が最も安い。
主要生産地の価格を見ると、イカ州はラ・リベルタ州より高い価格で取引されている。これは、イカ州では生鮮グリーン・アスパラガスの生産が中心であり、調製ホワイト・アスパラガスの取引が多いラ・リベルタ州より高値で取引されているためとみられる。

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(4) 消費
 ペルーでは、アスパラガスは日常的に消費される野菜ではなく、国内での消費量は少ない。同国では栄養価の高いグルメ商品と位置付けられており、高所得者層の多い都市部以外での流通は少ない。2017年にリマ大学が公表した調査結果によると、1人当たりの年間アスパラガス消費量は1キログラム未満であり、国内消費は、生産量全体の1~3%と推定される。
 販売形態を見ると、スーパーマーケットでは、通常、束ねられて販売されており、袋詰めされ生産者タグが付いたものもある。また、市場などでは、客の要望により輪ゴムなどで束ねられて販売されていることもある(写真1~3)。

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4 輸出動向

 ペルー貿易観光促進庁(PROMPERU)の輸出統計によると、次の通り生鮮品、調製品、冷凍品のアスパラガスが輸出されている。

(1) 生鮮品
 2021年の生鮮アスパラガス輸出量は、13万5978トン(前年比6.2%増)となった。直近10年間では21年が最大で、この間11万~13万トン台で推移している(図7)。

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 輸出先別に見ると、米国向けが9万8648トンと最も多く全体の72.5%を占める。このほか、オランダ(全体の7.3%)、スペイン(同7.2%)、英国(同6.6%)、カナダ(同1.2%)と欧州、北米地域が続いており、上位5カ国で全体の94.7%を占める。21年の日本向けは167トン(前年比10.6%増)となった。直近10年間では13年の1617トンが最大で、その後、20年まで減少傾向で推移し13年の10分の1程度となった(表5)。

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(2) 調製品
 2021年の調製アスパラガス輸出量は、3万1989トン(前年比6.3%減)となった。直近10年間では12年が5万4189トンと最大で、17年まで減少傾向が続き、18年以降は20年まで増加傾向で推移したが、長期的には減少傾向となっている(図8)。

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 輸出先別に見ると、スペイン向けが1万1300トンと最も大きく全体の35.3%を占める。このほか、米国(全体の24.7%)、フランス(同15.7%)、ドイツ(同11.8%)、イタリア(同2.2%)と欧州、北米地域が続いており、上位5カ国で全体の89.7%を占める。21年の日本向けは313トン(前年比31.7%減)と大幅に減少した。直近10年間では20年の458トンが最大で、16年から20年まで回復基調で推移した(表6)。

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(3) 冷凍品
 2021年の冷凍アスパラガス輸出量は、8046トン(前年比4.1%減)となり、生鮮、加工品と比べて少量である。直近10年間では12年が最大でその後減少傾向で推移したが、18年に大きく増加しその後は再び減少傾向で推移している(図9)。

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 輸出先別に見ると、米国向けが3452トンと最も多く全体の42.9%を占める。このほか、日本(全体の39.8%)、スペイン(同6.8%)、ドイツ(同2.0%)、韓国(同2.0%)とアジア、欧州地域が続いており、上位5カ国で全体の93.6%を占める。21年の日本向けは3203トン(前年比19.6%増)となった。直近10年間では18年の3212トンが最大で、その後は3000トン前後輸出されている(表7)。

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5 課題および見通し

 ペルーのアスパラガス輸出は生鮮品が中心で輸出額の7割程度を占め、米国向けが最大の輸出市場である。そして、米国市場においては、メキシコ産アスパラガスとの競合を経て成長してきたといえる。ペルー、メキシコ双方にとってアスパラガスは非伝統的農産物としての輸出品目であり、政府の支援の下、周年出荷体制を整備するなど市場開拓に向けて強化を図ってきた。ただし、生産・輸出体制を比較すると、メキシコ産は米国企業主導で展開しているのに対し、ぺルー産は独自の流通チャンネルを使って展開してきた。このため、独自の流通チャンネルを有するペルーは、今後も新たな輸出戦略を展開できる可能性があるとみられる。
 また、日本向け輸出について見ると、生鮮品はこの10年で大幅に減少したが、少量ながら大きなサイズの生鮮ホワイト・アスパラガスが一年を通して出荷されている。一方、調製品については、輸出が回復基調で推移している。また、冷凍品についても米国に次ぐ輸出先として安定的に輸出されており、日本市場において、主に中食、外食用商材として一定の需要があるとみられる。
 一方、生産面では、前述のとおり、新農業振興法の施行により生産基盤の脆弱化が懸念されている。こういった課題を克服するためには、アスパラガスの差別化、高付加価値化などによる競争力強化を図り、生産者の収益性を改善していく必要がある。

6 おわりに

 ペルーのアスパラガス生産は1950年代に調製アスパラガスの欧州向け輸出を目的として始まり、80年代には米国向けに生鮮アスパラガスの市場開拓をするなど、市場ニーズの変化に対応して世界有数の生産、輸出国としての地位を確立してきた。同国のアスパラガス生産は一年を通した出荷体制が整っており、また、アスパラガス輸出においては独自の流通チャンネルを有するといった強みを生かし、今後も新たな輸出戦略を展開できる可能性があるとみられる。
 近年では、地球温暖化に伴う異常気象、世界的なインフレの進行、輸送コストの上昇などにより農産物の安定供給の重要性が増している。こうした中、同国のアスパラガス生産は、輸出重点品目の一つとして、政府などの支援の下、安定的に推移しており、世界的に需給変動リスクが高まる中でも引き続き国際市場において影響力を維持するものとみられる。