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今月の野菜

風味豊かな健康冬野菜“やまのいも”

流通の大半を占める‘ながいも’
長期保存のために、保湿力の高いおがくずに包まれて流通します

求めやすく、持ち帰りに便利な、カットされた‘自然薯’


市場から

 

 ネバネバ系食品の中でも代表選手のやまのいもは、食欲増進や滋養強壮に効果のある健康野菜です。

 ヤマノイモ科ヤマノイモ属は、世界中に600種類以上も分布しており、日本で食用として栽培されているものは、中国原産の山芋、日本原産の 自然薯 じねんじょ 、東南アジア原産の 大薯 だいしょ の3種類に分けられ、この総称として“やまのいも”と呼ばれています。さらに山芋は、イモの形により円筒形の‘ながいも’、扁平形の‘いちょういも’、球形の‘やまのいも’の3つの品種群に大別できます。

 やまのいもの歴史は米よりも古く、古代縄文時代から食されていました。小説などにも頻繁に登場し、鎌倉時代に書かれた「平家物語」や江戸時代の儒学者であった貝原益軒の「 養生訓 ようじょうくん 」、近年に入っては、芥川龍之介の「 芋粥 いもがゆ 」などさまざまな時代の文学に精力源や無上の佳味として書き残されています。

 連作を嫌い、土づくりや掘り起こし作業など技術が要りますが、産地では大型機械を使用するなどして大規模生産が行われ、安定した出荷となっています。主に11~12月にかけて収穫されますが、貯蔵性が高いため、土の中で越冬させ、翌年の春に収穫する春掘りと併用することで、一年を通して出回ります。

 すり下ろしてお好み焼きのタネに混ぜたり、そばのつなぎやお菓子に利用したりと、用途が広く、生で食べても加熱してもおいしいやまのいもは、健康食志向も相まって、国内での消費は堅調です。近年は、日本食ブームを追い風に、台湾や米国など、海外でのながいもの需要が高まっており、輸出量も増加しています。

 最近の価格動向を見ると、安定した生産と消費に支えられて、堅調に推移しています。

もっとおいしく! オススメの食べ方


 酢の物、煮物、揚げ物、汁の実など幅広く使えます。すり下ろしたとろろにだし汁を加え、ご飯にかけていただくとろろ汁は、何杯でも食が進みます。火を通すと粘り気が少なくなり、ホクホクした食感になるので、焼いて食べるのもおすすめです。 情報提供:東京青果株式会社
 加藤 宏一
おいしい“やまのいも”を選ぼう!

おいしいやまといもを選ぼう!

 

 全体的にずっしりと重みがあり、切り口が白いものが新鮮です。また、ひげ根が多いものは粘り気が強い証拠です。表面に張りがあり、皮が薄く自然な肌色のものを選びましょう。白すぎるものは漂白している場合があるので注意しましょう。

 真空パックの中に空気が入り込んだものは、鮮度が低下している場合があります。


やまのいもの栄養と機能性
やまといもの栄養と機能性

 中国では、「 山薬 さんやく 」と呼ばれ、肺や腎臓の働きを補う滋養強壮の漢方薬として利用されているやまのいもは、高血圧の予防に効果があるカリウム、マグネシウムなどのミネラルや、ビタミンB群、Cなどをバランス良く含む健康野菜です。

 昔から「とろろ麦飯は何杯食べても腹を壊さない」といわれるのは、でん粉の分解酵素であるジアスターゼを豊富に含んでいるからで、胃腸の働きを促す効果が期待できます。熱に弱い酵素の働きを失わないよう、調理の際にとろろを薄めるときは、熱いだし汁を使わないようにしましょう。


「五訂日本食品標準成分表」 ながいも(塊根、生)より
 30歳の女性1日当たりの食事摂取基準を100とした場合におけるながいも(塊根、生)100グラム中に含まれる主な栄養素の割合(ただし、カリウム・パントテン酸は目安量の値を、そのほかは推奨量の値を用いた)。



やまのいものいろいろ 種類・品種の特徴 やまといものいろいろ
※クリックすると拡大します。

監修:元農林水産省野菜試験場育種部 芦澤 正和

やまのいもの主要産地 やまといもの主要産地と収穫時期
注:図中の番号は収穫量の多い順番、期間は主な出荷期間を表しています。
資料:農林水産省「平成20年産野菜生産出荷統計」、東京都中央卸売市場統計、大阪府中央卸売市場統計
調理のヒントと保存方法
【調理のヒント】

 種類によって、料理法を選びましょう。シャキッとした食感を楽しむならながいも、とろろ汁や山かけには粘り気のあるやまといも、とろろ本来の香りを味わいたいなら自然薯を使いましょう。

 皮をむいたら、あく抜きのために、酢を入れた水にさらします。これにより変色や手がかゆくなるのを防ぎます。また、すり下ろすときは、金気のある調理器具を使うと変色するので、下ろし金を使わずに、すり鉢の回りに軽く当てて回しながらすり下ろします。最後にすりこぎで仕上げると、一段と口当たりの良いフワッとしたとろろができます。

【保存方法】

 丸ごと一本なら、長期保存が可能です。新聞紙に包んで風通しの良い冷暗所に保管しましょう。

 カットものは、切り口から水分が失われ変色していくので、切り口が空気に触れないようにラップに包み冷蔵庫で保存し、一週間以内に使い切りましょう。

 すり下ろしたものや千切りにしたものは、冷凍保存が可能です。とろろは薄く延ばして、千切りにしたものは小分けにしてラップに包んで保存すると、必要な分だけ解凍して使えて便利です。




1 作付面積・出荷量の推移
作付面積の推移

出荷量の推移

2007年産ながいも作付面積の割合

2007年産ながいも出荷量の割合

2007年産やまといも等作付面積の割合

2007年産やまといも等出荷量の割合

 作付面積は、2004年の8,640ヘクタールから2008年の8,050ヘクタールと漸減傾向にあり、出荷数量も同様に2004年の159,200トンから2008年の146,400トンへと漸減傾向にある。2007年産の品種別の作付面積と出荷量を見ると、ながいもがそれぞれ69%、85%、やまといも、いちょういも等がそれぞれ31%、15%を占めている。主産県は、ながいもでは青森県、北海道が作付面積の80%、出荷量の89%を占め、やまといも等では群馬県、千葉県が作付面積の45%、出荷量の52%を占めている。主な収穫期間は11月~12月であるが、長期貯蔵により年間を通して供給されている。

 東京都中央卸売市場のやまといもの入荷量を見ると、2004年3,800トン、2006年3,300トン、2008年2,800トンと減少傾向にあることから、やまのいもの生産量の減少は、主にやまといも等の減少によるものと推測される。

平成20年 ながいも月別県別出荷実績(東京都中央卸売市場計)

資料:農畜産業振興機構HP(http://vegetan.vegenet.jp/ippan/vt-yasaimap.htm
平成20年東京都中央卸売市場年報より作成

2 東京都中央卸売市場における価格の推移
東京都中央卸売市場 ながいも・やまといも 国産価格動向

※クリックすると拡大します。

 中国産の入荷量は、ながいもが2004年に74トン、2008年では0.6トン、自然薯は、中国からの入荷はほとんどない。輸入ながいも、やまといもは、市場外流通により、業務用として消費されていると推測される。

 価格は、ながいもがキログラム当たり200円~300円、やまといもが同400円~600円であるが、やまといもの価格は、入荷量が減少傾向にあることから上昇傾向である。

3 輸入動向
ながいも等生鮮輸入数量の推移

2000年国別生鮮輸入数量

2008年国別生鮮輸入数量

ながいも等冷凍輸入数量の推移

2000年国別冷凍輸入数量

2008年国別冷凍輸入数量

資料:農畜産業振興機構「べジ探」、原資料:財務省「貿易統計」
(注)ながいも等:アロルート、サレッフ、菊芋、その他これらに類するでん粉又はイヌリンを多量に含有する根及び塊茎(生鮮・冷蔵・乾燥)並びにサゴやしの髄(カッサバ芋、その他(粉末又はペレット、飼料用以外))(実行関税率表(日本関税協会)より抜粋)

 生鮮ながいも等の輸入数量は、2004年4,612トン、2005年3,455トン、2006年3,705トン、2007年3,160トン、2008年3,051トンと減少している。輸入量の90%以上を占める中国産の食品安全性が大きな問題となったことから、近年の輸入数量は、減少傾向となっている。また、農林水産省植物防疫所「植物防疫統計」の検査数量により品種別の輸入動向を見ると、ながいもは、2004年1,561トン、2005年351トン、2006年136トン、2007年165トン、2008年218トン、自然薯は、2004年の22トンから2005年以降は1トンに満たない検査数量となっており、生鮮輸入量の大宗はながいもが占めている。

 一方、冷凍ながいも等の輸入量は、2004年2,117トン、2005年2,022トン、2006年2,490トン、2007年2,552トンと増加傾向であったが、2008年は、生鮮と同様に主要輸入先国である中国産が1,901トンと減少した。また、「植物防疫統計」の検査数量により品種別の輸入動向を見ると、ながいもは、2004年493トン、2005年385トン、2006年317トン、2007年269トン、2008年231トン、自然薯は、2004年9トン、2005年38トン、2006年271トン、2007年181トン、2008年56トンとなっており、ながいもと自然薯を主体に輸入されている。

4 輸入動向
さといも、ながいもの輸出動向

※クリックすると拡大します。
2000年輸出先国

2008年輸出先国

資料:農畜産業振興機構「べジ探」、原資料:財務省「貿易統計」
(注)野菜情報2006年6月号にてとうほく天間農協(青森県)と帯広大正農協(北海道)のながいもの輸出の状況が詳しく報告されているので、参照されたい。http://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/senmon/0606/senmon1.html






青森県 とうほく天間農業協同組合(ながいも) 

産地紹介
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