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調査・報告 野菜情報 2026年2月号

水田地帯での加工・業務用キャベツの安定生産に向けた取り組みと課題~機械収穫の取り組み事例をもとに~

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国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構
本部 島 義史
野菜花き研究部門 板橋 悦子、福田 真知子
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1 はじめに

 消費者の食の外部化が進む中、加工・業務用野菜の需要が拡大している。国内の野菜の用途別出荷量を見ると、出荷量首位のばれいしょは加工・業務用の割合が7割近くに到達しており、それに続くキャベツは葉茎菜類の中でも加工・業務用のシェアが高く、20.4%となっている(表1)。農林水産省の食品・流通加工関連事業者への意向調査によると、国産加工・業務用野菜のうち今後利用を増やしたい、取り扱いたい品目としてキャベツを挙げる事業者の割合が高いことが示されている(農林水産省、2022)(1)
 
タイトル: p038
 
 加工・業務用キャベツの需要拡大に応じるべく、水田を利用したキャベツ産地の形成が各地で進められてきた。今後の需要拡大も見込めることから、引き続き加工・業務用キャベツを安定的に供給していくことが求められる。そこで、本稿では、水田地帯における野菜産地の形成と持続的発展に向けた取り組みの参考に資することを目的に、富山県における三つの事例経営体を対象に行った現地調査を基に、加工・業務用キャベツの定着を可能にしたこれまでの取り組みと今後の課題を整理する。まず、富山県の野菜作の動向についてキャベツを中心に概観する。その上で、農業従事者の減少が見込まれる中で、労働時間の多くを占める収穫作業の省力化がこれまで以上に重要になると考えられることから、特に、事例経営体におけるキャベツの機械収穫に関わる取り組みを中心に検討を行う。

2 富山県の野菜作の動向

 富山県は、主食用米の需要の減少と米価の低下の中で、水田における米以外の品目の生産振興を図ってきた。2010年度から園芸作物を中心に高収益作物の生産拡大を目指す「1億円産地づくり支援事業(県単独事業)」を実施し、県内のJAごとに戦略品目が選定され、作付けの拡大が推進された。その後、「水田農業高収益化推進計画」(20年4月策定、22年6月見直し)では、水田園芸拡大品目としてたまねぎ、にんじん、さといも、キャベツといった品目について、引き続き生産拡大・産地化を進めることとされている。
 また、18年には「とやま型農業経営モデル」が策定された。これによると、とやま型農業経営モデルを「地域を担う法人経営体であり、主穀作(水稲・大麦・大豆)と園芸等を組合せ、周年的に所得と人材を確保する経営モデル」と定義し、園芸作の導入などによる経営の複合化を通じ、所得向上を実現する「目指す姿」を提示している。目指す姿は、1)メガファームタイプ:主穀作の規模拡大と園芸導入、2)6次産業化タイプ:主穀作に加え園芸の直売や観光農園等6次産業化の実践、3)集落営農雇用タイプ:主穀作に加え園芸の導入で従業員を雇用、4)園芸重点タイプ:水田フル活用による園芸の重点的な生産拡大―の4タイプとし、その普及・啓発と経営体の支援に向けて、県内の実践事例を基にして、具体的な取り組み内容やそこでの経営発展の要点、さらに各種の経営指標をタイプごとに整理している。これらの取り組みにより、富山県の水田作において園芸品目は経営内の重要な部門になってきている。
 富山県の野菜の生産状況を表2に整理した。作付面積、出荷量で上位にあるのが、たまねぎ、だいこん、キャベツ、ねぎである。たまねぎについては、となみ野農業協同組合(JAとなみ野)における生産振興の成果が知られている(戸田、2015)(2)。湿害対策の実施と機械化体系の構築、共同育苗や共同選果などの作業支援体制の確立といった総合的な取り組みは、水田における野菜産地形成のモデル的な事例と言える。
 富山県における野菜生産のうち、本稿で取り上げるキャベツについて、過去20年間の生産のトレンドを示したのが図である。出荷量は15年まで700~900トンで推移していたが、その後増加し、20年代に入って以降は1700~1900トンとなっている。その中で加工・業務用の割合は、10年以降徐々に高まっている。年により増減はあるものの、21年には66.7%にまで上昇し、直近の23年は45.0%となっている。
 
タイトル: p039a

タイトル: p039b
 
 キャベツの出荷量に占める加工・業務用の割合について、先の表1に示した国内全体のそれと富山県を比べると、前者の20.4%を富山県(45.0%)が大きく上回っている。富山県では、水田における加工・業務用キャベツの栽培技術を確立するとともに、JAによる機械の貸し出しを通じて生産者の費用負担を抑制しつつ作業の省力化を進めたほか、集荷体制も構築してきた(宮元、2022(3)・徳田、2019(4))。図は、富山県が各種の生産振興策を通じて加工・業務用キャベツ産地として確立されてきたことを示している。

3 事例経営体の概要

 本稿では、富山市の農事組合法人高島営農、()()()()の農事組合法人金屋本江アイリスファーム、高岡市の有限会社中山農産の3経営体を対象として実施した現地調査の結果を整理する。事例経営体の概要は、表3に示す通りである。
 
タイトル: p040
 
 高島営農は、農家19戸で構成される農事組合法人で、なのはな農業協同組合(以下「JAなのはな」という)管内においてキャベツ生産を行う4経営体のうちの一つである。作付延べ面積は32.9ヘクタールで、うちキャベツが1.6ヘクタールとなっている。主な労働力は構成農家を中心とする12人であり、2024年から40代1人を常時雇用で確保している。キャベツは水稲作との作業競合を考慮して夏まき秋冬どりの作型に取り組み、「輝吉」、「おきなSP」、「湖月SP」を栽培している。収穫機は、16年よりJAなのはなからのレンタルで利用を開始した。それ以前は60アール程度の面積を手作業で収穫していたが、収穫機を利用することで作付け拡大が可能となった。収穫機の作業能率は、1日当たり15アールで、おおむね7人で収穫作業を行っている。収穫時期に降雨日が多いが、晴天が続けば作業能率は上げられるとしている。富山県では11月に入ってから秋冬どりキャベツの出荷が本格化するが、高島営農は10月下旬から出荷を行っている。契約による長期的・安定的な出荷が求められる中で、高島営農は出荷者数が少ない出荷初期の供給を担っている。
 アイリスファームは、農家22戸で構成される農事組合法人で、いなば農業協同組合(以下「JAいなば」という)管内に位置する。作付延べ面積は39.2ヘクタールで、うちキャベツは2.7ヘクタールとなっている。主な労働力は6人で、構成農家以外から30代1人を常時雇用で確保している。キャベツの作付面積は、22年に5.8ヘクタールまで拡大してきたが、それ以降は減少している。春まき初夏どりでは「初恋」と「恋舞」の2品種を、夏まき冬春どりでは「冬くぐり」、「冬穫B号」、「冬のぼり」の3品種を選定している。取引先の中間事業者からの提案を受け、端境期となる春どりの栽培を2023年から開始している。収穫機は17年から導入しており、それに合わせてキャベツの作付面積を拡大した。また、初夏どりでは、JAいなばの予冷庫を利用している。収穫機の作業能率は1日当たり15アール程度で、初夏どりでは、キャベツの品質維持のために気温が上がる時間帯を避けて収穫作業を行っている。
 中山農産は作付延べ面積が80.4ヘクタールであり、うち水稲37.0ヘクタール、ハトムギ15.0ヘクタールのほか、多品目の野菜を生産している。施設栽培でも、こまつな、ほうれんそうを作付けしている。キャベツは13年から栽培を開始し、2年間は手作業で収穫をしていた。その後、4ヘクタールほどまで拡大した15年に1台目の収穫機を、さらに18年には2台目の収穫機を導入し、現在7.5ヘクタールにまで作付面積を拡大している。春まき初夏どり、夏まき秋冬どりの2作型で、品種は初夏どりが「初恋」、「おきなSP」、「恋舞」、秋冬どりが「初恋」、「おきなSP」、「冬くぐり」である。2台目の収穫機は、初夏どりの収穫期間の短縮化を図るために導入したものである。適期で収穫することによって高温による病害の広がりを克服し、初夏どりでのロスを低減させている。
 なお、高島営農は全量を加工・業務用に、アイリスファームと中山農産は一部を青果用に出荷している。出荷先の違いも各経営の品種選びに影響しているとみられる。
 

4 機械収穫の実施と効率化に向けた取り組みのポイント

 富山県では、加工・業務用キャベツの産地形成に向けて、機械化一貫体系の確立が図られてきた。特に、手間を要する収穫作業の機械化が進んだ点が重要であったと考えられる。生産現場では、収穫に関わるさまざまな条件を機械収穫に適合させることで、収穫作業の機械化を定着させてきた。事例経営体への聞き取りを通じ、取り組みのポイントとして以下の4点が共通的に抽出された。
 
(1)品種選択
 品種の選定に当たっては、3経営体ともに、収量性の良さ、病虫害耐性の高さ、内部障害の少なさ、販売先の要望といった点とともに、機械収穫適性を考慮している。機械収穫適性が品種選択の最優先の事項ではないが、加工・業務用で重視される他の事項と併せて総合的な検討の下で品種が選択されている。各経営体の現状の栽培品種は表3に示す通りであるが、いずれの経営体とも、これまでにさまざまな品種を試作してきており、機械収穫に合わず採用に至らなかった品種もあったという。引き続き関係機関と連携した試験栽培を実施するほか、近隣のキャベツ生産者からも情報収集を行い、加工・業務用出荷により適した品種の選定に向けた取り組みを行っている(写真1)。
 
タイトル: p042
 
 機械収穫適性という点で重視されるのが、栽培特性の面では耐倒伏性や生育の斉一性である。耐倒伏性に関しては、軸が長い方が収穫しやすい反面、倒伏しやすくなるので、品種選定の際のポイントの一つとなる。生育の斉一性については、特に夏まき秋冬どりで、近年問題となっている結球時の高温への反応が品種によって異なり、これまで試した品種の中に生育のバラツキが出やすいものがあった。調査対象とした経営体では、加工・業務用キャベツの出荷基準となっている一玉1.2キログラムを下限としている。資材費をはじめとする生産費が上昇する中で、生育のバラツキによる基準重量未達で収穫ロスが発生しないような品種選びが、以前に増して重要となっている。
 これに加えて、株形の面では、扁平過ぎず下部が丸いこと、また、軸の長さや硬さが適切(収穫機の刃の入れやすさ、調製のしやすさ)という点も品種選定の際に留意されている。扁平過ぎないという点は倒伏のしやすさにも関連するが、ある経営体では、以前試験栽培した品種について、収穫機の挟持(きょうじ)ベルト(結球部をつかむ部分)でうまく保持することができず、脱落する球が多数発生したという経験をしている。
 下部が丸いというのは、キャベツの下部の軸部近くの形状が丸くなっているかどうかである。外葉の中肋(ちゅうろく)(葉の中央を走る太い葉脈)が湾曲して垂れ下がり、下部が平らになってしまうと、収穫機のカッターで球を切り込みやすくなり、損傷球の発生が多くなる。これについて、同じ品種でも作期によって軸部近くの形状が違い、初夏どりなら良いが秋冬どりだと機械収穫に向かなくなるものがあるとの声があった。また、軸の硬さについては、収穫機後部に搭乗して調製を行う作業者の負担軽減を考えた留意点として挙げられた。作業者の高齢化が進む中で、機械収穫の作業能率や労働負荷に関わる要因として、株形や軸の硬さも、品種属性としてこれまで以上に考慮されるようになっている。
 
(2)圃場(ほじょう)の選定と排水対策
 水田地帯における露地野菜作で共通して課題となるのが、圃場の排水性の確保である。富山県では「排水対策のための野菜作付け予定ほ場調査及び対策早見表」を策定している。この早見表は、田面から落水口底面までの落差をはじめ、キャベツの作付けが予定される水田について確認すべき排水条件を決定木で階層的に整理し、選ぶべき圃場の条件と必要となる排水対策を提示している。調査事例においても、排水性を重視して圃場を選んだ上で、圃場条件に応じて額縁排水や弾丸暗渠(あんきょ)が施工されている(写真2)。このほか、事例経営体では、キャベツの前作に大麦やハトムギを作付けることで土壌の排水性の向上を図っている。
 
タイトル: p043
 
 契約栽培での加工・業務用キャベツの単価は、青果向け市場出荷に比べて安定的である反面、低めに設定されることが多い。従って、収量性が重要となる。県の経営指標として、目標単収は10アール当たり4.5トンとされているが、収量の圃場間差は大きく、ある経営体では、これまで最大で同7トンを達成した圃場もあれば、同1トンにとどまった圃場もあったという。圃場の排水性は病害の発生にも関係し、排水対策が収量確保に向けた最大の課題であると指摘した経営体もあった。近年は、調査地域においても温暖化により局地的な豪雨が生じており、湿害回避がより一層重要なポイントとなっている。
 圃場の排水性は、収穫作業にも影響する。現地では秋冬どりの収穫期に雨天となる日も多く、土壌軟化により機械収穫の作業性が悪化する。このため、機械収穫の面からも乾きやすい圃場が選ばれている。
 加えて、区画の大きさも収穫機の運用に影響することから、キャベツ作付け圃場を選定する際の条件となる。収穫機が能力を発揮するためには、最低30アールでなおかつ長辺が長く、旋回する回数が少なくて済む圃場が必要と見て、条件に合う圃場でキャベツが栽培されている。また、収穫機の旋回のために、キャベツを植え付けない枕地として5~6メートルを確保している。収穫機の作業能率だけでなく、枕地部分の割合が大きくなると圃場利用の効率性も落ちることから、一定以上の区画面積の圃場がキャベツに向けられている。
 水田でのキャベツ栽培において、圃場選定と排水対策はこれまでも重要なポイントであった。近年の気候変動、生産費上昇の下で加工・業務用キャベツの収益性を確保するため、収量の高位安定化に向けた圃場の選定と排水対策の実施が従来以上に重要となっている。
 
(3)栽培方法の調整
 栽培方法については県、JAによるマニュアルをベースにした栽培が実践されており、これと併せて経営体独自の工夫も見られた。育苗管理においては、育苗時の生育の揃いと徒長の防止が重視されている。育苗時の生育の揃いの良し悪しは本圃(ほんぽ)への定植後の生育にも影響し、収穫機による一斉収穫の際に収穫歩留まりを大きく左右することとなる。徒長の防止は倒伏の回避のために重要で、普及指導員からの助言を基に対策を行っている。
 また、定植については、栽培マニュアルに沿った畝の形状、条間・株間を基本にしている。畝の形状に関しては、栽培マニュアルでは排水性の確保のため、収穫機の取扱説明書に示された参考値よりも畝高は10センチメートル高く、畝幅は30センチメートル広くされている(写真3)。一方、2条植えの条間は、取扱説明書に示されたものよりやや狭く設定されている。これは、後述する畝の肩の崩れも考慮した調整であり、畝の肩が崩れると畝の外側に株が倒れやすくなり、機械収穫の能率を落としてしまう。そのため、なるべく畝の内側に植える対策を行っている。収穫機の取扱説明書に示されている条間から、最大10センチメートル間隔を詰めて定植を行っている経営体もある。
 加えて、機械収穫で重要となる生育の斉一性の確保に向けた取り組みが行われている。生育の斉一性にはさまざまな要因が関わるが、特に、夏まき作型では定植が高温期に当たり、本圃定植後の活着や初期生育がその後の生育の揃いに影響する。夏まき作型においては、いずれの経営体とも定植直後にかん水を実施しており、定植直後の活着を促進して初期生育を揃えるよう努めている(写真4)。この点は、用水が利用できる水田で栽培する利点と言える。
 
タイトル: p044
 
 ただし、畝間(うねま)かん水は畝間の雑草を繁茂させる可能性もあり、畝の肩の崩れを引き起こしてキャベツの倒伏の原因ともなる。そこで、畝上部からミスト状に散水ができる装置を別途用意してかん水を行っている経営体があった。この経営体では、定植直後のかん水と併せて生育途上でも適宜かん水を実施して球の肥大と生育揃いを良くし、規格に満たず圃場廃棄となる球がほとんど出ないくらいに斉一性を確保している。
 
(4)機械収穫と作業班編成
 調査対象とした事例経営体では、自己所有機、JAからのレンタル機の違いはあるものの、畝立て機・移植機・収穫機を利用した機械化体系が確立している。機械収穫では一斉収穫となるため、収穫適期の見極めが重要となる。事前にキャベツ圃場を一筆ずつ回り、試し切りを行った上でJA、普及指導員の助言を参考にして収穫日を決定している。
 調査事例はいずれも切り取り・調製・鉄コンテナへの詰め込み・搬出を一連の作業として実施している。1日当たりの収穫面積は、どの経営体も15アール程度である。収穫機の作業能率とともに、予冷庫のキャパシティとの関係などで1日当たりの収穫面積が決まってくる。
 農事組合法人である高島営農とアイリスファームでは、収穫は基本的に6~7人体制で実施している。収穫機のオペレーター1人、選別・調製2人、鉄コンテナへの詰め込み2人、運搬作業1人である(写真5)。キャベツの倒伏程度が大きい場合には、収穫機の刃の先でキャベツの姿勢を直す補助者を置いて収穫する場合がある。また、生育が良く歩留まり率が高い時は、収穫の人員をもう1人追加することもある。複数の従事者が収穫機のオペレーターとなる体制としている。農事組合法人の2事例では、同じ人数がいれば、1日当たりの収穫面積は手収穫でも機械収穫の場合と変わらないが、収穫機を利用した方が軽労で面積を拡大することが可能になったとしている。
 
タイトル: p045
 
 中山農産は、収穫機1台につきオペレーターを含め4人体制を基本としている。収穫機1台を稼働させる場合は、調製・詰め込み作業を行う3人のうちの1人が運搬作業も行う。収穫機2台を同時に運用する初夏どりでは、別途運搬のみを行う人員を配置して、2台合計で9~10人で収穫作業を行うようにする(写真6)。比較的区画の大きい圃場でキャベツを栽培していることもあるが、運搬作業までを含めた一連の作業をトータルで効率的に行っている。ユンボに爪を取り付け、収穫機後部のキャベツが詰め込まれた鉄コンテナを作業道からユンボで持ち上げて運搬車に移し替えられるようにするなどの工夫を随所で行い、省人的な収穫作業を実現している。
 
タイトル: p046

5 産地の持続的発展に向けた課題

 先にも触れたが、県の指標では加工・業務用キャベツの収益性を考慮して、収量目標を10アール当たり4.5トンとしている。しかしながら、これまでおおむね収量目標を達成してきた事例経営体においても、近年の高温や大雨、病害の発生により、その達成が難しくなってきていると感じているという。一方で、肥料をはじめとする資材価格や輸送費などの上昇もあり、収益性を確保するためには、従来目標としてきた同4.5トン以上の収量が求められるという声も聞かれた。
 また、農事組合法人の事例で見られた、機械収穫時にキャベツの倒伏に対処するため、補助者を配置するといった取り組みは、これまで労働力に比較的余裕があったことから可能であったものと考えられる。しかし、従事者の高齢化が進み、キャベツ栽培に人手を掛けられなくなってきて、栽培面積が減少しているという経営体もあった。
 富山県では、栽培マニュアルの策定と栽培指導、加工・業務用の規格の提示、JAによる収穫機・移植機・鉄コンテナなどの機械・設備のレンタルや、販路確保といった各種の支援策を実施し、加工・業務用キャベツの産地化を実現させている。直近の2023年では、キャベツ出荷量の45.0%を加工・業務用に出荷しており、相当程度加工・業務用に特化したキャベツ生産が行われている。その中で、ここにきて近年の気候変動に対応した栽培技術の確立、資材費などの各種経費が上昇する中での収益性の確保、今後急速に進むと見込まれる労働力不足への対応が重要となっている。加工・業務用キャベツ産地の持続的発展に向けて、新たな作型をはじめとする新技術の導入や販売対応の変更など、従来の取り組みの見直しが必要な場面もあると考えられる。

6 おわりに

 調査の対象となった農事組合法人の事例では、加工・業務用キャベツの生産により収穫機のオペレーターも担う若手人材の確保を実現している。また、県の農林振興センターと連携し、作型の追加による収穫期間の延長に試験的に取り組むなど、次の打ち手にも取りかかっている。従事者の減少・高齢化が続く中で、これまで収穫人員を不足なく確保でき、手作業で収穫を行ってきた産地の中にも、今後、収穫作業の機械化が迫られる地域が出てくると見込まれる。その際には、本稿で取り上げた3経営体の取り組みが参考になるだろう。
 以上、水田作経営の収益向上を目指して、園芸品目の導入を進めてきた富山県における加工・業務用キャベツに取り組む3経営体の事例調査の結果を整理したが、水田での野菜作は、当然のことながら水稲の作付けに大きく影響される。稲作を巡る昨今の情勢も踏まえ、今後の水田地帯での野菜生産の動向を継続的に注視していきたい。
 
 本研究は、生物系特定産業技術研究支援センター(生研支援センター)「食料安全保障強化に向けた革新的新品種開発プロジェクト」(JPJ012713)の支援を受けて行った。

 謝辞:本稿の作成に当たり、現地での聞き取り調査や資料提供に多大な協力を頂いた農事組合法人高島営農、農事組合法人金屋本江アイリスファーム、有限会社中山農産、なのはな農業協同組合、いなば農業協同組合、富山県農林水産総合技術センター園芸研究所、富山農林振興センター、高岡農林振興センターの関係各位に厚く御礼を申し上げます。
 
 
引用文献
(1)農林水産省(2022)
「令和3年度 食料・農林水産業・農山漁村に関する意識・意向調査 加工・業務用野菜の実需者ニーズに関する意識・意向調査結果」
https://www.maff.go.jp/j/finding/mind/attach/pdf/index-71.pdf(2025年9月8日参照)
(2)戸田義久(2015)
「水田転換畑におけるたまねぎ生産~JAとなみ野の機械化一貫体系の取り組み~」『野菜情報』2015年7月号、
https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/senmon/1507_chosa03.html(2025年9月8日参照)
(3)宮元史登(2022)
「機械化体系による水田での加工・業務用キャベツの生産振興について」『水田利用の園芸作物転換技術導入事例集』
https://www.vedica.jp/wp-content/uploads/2015/05/水田利用の園芸作物転換技術導入事例集.pdf(2025年9月8日参照)
(4)徳田博美(2019)
「野菜作導入で経営多角化を進める 富山県の大規模水田作経営」『野菜情報』2019年5月号、https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/senmon/1905_chosa01.html