富山県では、加工・業務用キャベツの産地形成に向けて、機械化一貫体系の確立が図られてきた。特に、手間を要する収穫作業の機械化が進んだ点が重要であったと考えられる。生産現場では、収穫に関わるさまざまな条件を機械収穫に適合させることで、収穫作業の機械化を定着させてきた。事例経営体への聞き取りを通じ、取り組みのポイントとして以下の4点が共通的に抽出された。
(1)品種選択
品種の選定に当たっては、3経営体ともに、収量性の良さ、病虫害耐性の高さ、内部障害の少なさ、販売先の要望といった点とともに、機械収穫適性を考慮している。機械収穫適性が品種選択の最優先の事項ではないが、加工・業務用で重視される他の事項と併せて総合的な検討の下で品種が選択されている。各経営体の現状の栽培品種は表3に示す通りであるが、いずれの経営体とも、これまでにさまざまな品種を試作してきており、機械収穫に合わず採用に至らなかった品種もあったという。引き続き関係機関と連携した試験栽培を実施するほか、近隣のキャベツ生産者からも情報収集を行い、加工・業務用出荷により適した品種の選定に向けた取り組みを行っている(写真1)。
機械収穫適性という点で重視されるのが、栽培特性の面では耐倒伏性や生育の斉一性である。耐倒伏性に関しては、軸が長い方が収穫しやすい反面、倒伏しやすくなるので、品種選定の際のポイントの一つとなる。生育の斉一性については、特に夏まき秋冬どりで、近年問題となっている結球時の高温への反応が品種によって異なり、これまで試した品種の中に生育のバラツキが出やすいものがあった。調査対象とした経営体では、加工・業務用キャベツの出荷基準となっている一玉1.2キログラムを下限としている。資材費をはじめとする生産費が上昇する中で、生育のバラツキによる基準重量未達で収穫ロスが発生しないような品種選びが、以前に増して重要となっている。
これに加えて、株形の面では、扁平過ぎず下部が丸いこと、また、軸の長さや硬さが適切(収穫機の刃の入れやすさ、調製のしやすさ)という点も品種選定の際に留意されている。扁平過ぎないという点は倒伏のしやすさにも関連するが、ある経営体では、以前試験栽培した品種について、収穫機の
挟持ベルト(結球部をつかむ部分)でうまく保持することができず、脱落する球が多数発生したという経験をしている。
下部が丸いというのは、キャベツの下部の軸部近くの形状が丸くなっているかどうかである。外葉の
中肋(葉の中央を走る太い葉脈)が湾曲して垂れ下がり、下部が平らになってしまうと、収穫機のカッターで球を切り込みやすくなり、損傷球の発生が多くなる。これについて、同じ品種でも作期によって軸部近くの形状が違い、初夏どりなら良いが秋冬どりだと機械収穫に向かなくなるものがあるとの声があった。また、軸の硬さについては、収穫機後部に搭乗して調製を行う作業者の負担軽減を考えた留意点として挙げられた。作業者の高齢化が進む中で、機械収穫の作業能率や労働負荷に関わる要因として、株形や軸の硬さも、品種属性としてこれまで以上に考慮されるようになっている。
(2)圃場(ほじょう)の選定と排水対策
水田地帯における露地野菜作で共通して課題となるのが、圃場の排水性の確保である。富山県では「排水対策のための野菜作付け予定ほ場調査及び対策早見表」を策定している。この早見表は、田面から落水口底面までの落差をはじめ、キャベツの作付けが予定される水田について確認すべき排水条件を決定木で階層的に整理し、選ぶべき圃場の条件と必要となる排水対策を提示している。調査事例においても、排水性を重視して圃場を選んだ上で、圃場条件に応じて額縁排水や弾丸
暗渠が施工されている(写真2)。このほか、事例経営体では、キャベツの前作に大麦やハトムギを作付けることで土壌の排水性の向上を図っている。
契約栽培での加工・業務用キャベツの単価は、青果向け市場出荷に比べて安定的である反面、低めに設定されることが多い。従って、収量性が重要となる。県の経営指標として、目標単収は10アール当たり4.5トンとされているが、収量の圃場間差は大きく、ある経営体では、これまで最大で同7トンを達成した圃場もあれば、同1トンにとどまった圃場もあったという。圃場の排水性は病害の発生にも関係し、排水対策が収量確保に向けた最大の課題であると指摘した経営体もあった。近年は、調査地域においても温暖化により局地的な豪雨が生じており、湿害回避がより一層重要なポイントとなっている。
圃場の排水性は、収穫作業にも影響する。現地では秋冬どりの収穫期に雨天となる日も多く、土壌軟化により機械収穫の作業性が悪化する。このため、機械収穫の面からも乾きやすい圃場が選ばれている。
加えて、区画の大きさも収穫機の運用に影響することから、キャベツ作付け圃場を選定する際の条件となる。収穫機が能力を発揮するためには、最低30アールでなおかつ長辺が長く、旋回する回数が少なくて済む圃場が必要と見て、条件に合う圃場でキャベツが栽培されている。また、収穫機の旋回のために、キャベツを植え付けない枕地として5~6メートルを確保している。収穫機の作業能率だけでなく、枕地部分の割合が大きくなると圃場利用の効率性も落ちることから、一定以上の区画面積の圃場がキャベツに向けられている。
水田でのキャベツ栽培において、圃場選定と排水対策はこれまでも重要なポイントであった。近年の気候変動、生産費上昇の下で加工・業務用キャベツの収益性を確保するため、収量の高位安定化に向けた圃場の選定と排水対策の実施が従来以上に重要となっている。
(3)栽培方法の調整
栽培方法については県、JAによるマニュアルをベースにした栽培が実践されており、これと併せて経営体独自の工夫も見られた。育苗管理においては、育苗時の生育の揃いと徒長の防止が重視されている。育苗時の生育の揃いの良し悪しは
本圃への定植後の生育にも影響し、収穫機による一斉収穫の際に収穫歩留まりを大きく左右することとなる。徒長の防止は倒伏の回避のために重要で、普及指導員からの助言を基に対策を行っている。
また、定植については、栽培マニュアルに沿った畝の形状、条間・株間を基本にしている。畝の形状に関しては、栽培マニュアルでは排水性の確保のため、収穫機の取扱説明書に示された参考値よりも畝高は10センチメートル高く、畝幅は30センチメートル広くされている(写真3)。一方、2条植えの条間は、取扱説明書に示されたものよりやや狭く設定されている。これは、後述する畝の肩の崩れも考慮した調整であり、畝の肩が崩れると畝の外側に株が倒れやすくなり、機械収穫の能率を落としてしまう。そのため、なるべく畝の内側に植える対策を行っている。収穫機の取扱説明書に示されている条間から、最大10センチメートル間隔を詰めて定植を行っている経営体もある。
加えて、機械収穫で重要となる生育の斉一性の確保に向けた取り組みが行われている。生育の斉一性にはさまざまな要因が関わるが、特に、夏まき作型では定植が高温期に当たり、本圃定植後の活着や初期生育がその後の生育の揃いに影響する。夏まき作型においては、いずれの経営体とも定植直後にかん水を実施しており、定植直後の活着を促進して初期生育を揃えるよう努めている(写真4)。この点は、用水が利用できる水田で栽培する利点と言える。
ただし、
畝間かん水は畝間の雑草を繁茂させる可能性もあり、畝の肩の崩れを引き起こしてキャベツの倒伏の原因ともなる。そこで、畝上部からミスト状に散水ができる装置を別途用意してかん水を行っている経営体があった。この経営体では、定植直後のかん水と併せて生育途上でも適宜かん水を実施して球の肥大と生育揃いを良くし、規格に満たず圃場廃棄となる球がほとんど出ないくらいに斉一性を確保している。
(4)機械収穫と作業班編成
調査対象とした事例経営体では、自己所有機、JAからのレンタル機の違いはあるものの、畝立て機・移植機・収穫機を利用した機械化体系が確立している。機械収穫では一斉収穫となるため、収穫適期の見極めが重要となる。事前にキャベツ圃場を一筆ずつ回り、試し切りを行った上でJA、普及指導員の助言を参考にして収穫日を決定している。
調査事例はいずれも切り取り・調製・鉄コンテナへの詰め込み・搬出を一連の作業として実施している。1日当たりの収穫面積は、どの経営体も15アール程度である。収穫機の作業能率とともに、予冷庫のキャパシティとの関係などで1日当たりの収穫面積が決まってくる。
農事組合法人である高島営農とアイリスファームでは、収穫は基本的に6~7人体制で実施している。収穫機のオペレーター1人、選別・調製2人、鉄コンテナへの詰め込み2人、運搬作業1人である(写真5)。キャベツの倒伏程度が大きい場合には、収穫機の刃の先でキャベツの姿勢を直す補助者を置いて収穫する場合がある。また、生育が良く歩留まり率が高い時は、収穫の人員をもう1人追加することもある。複数の従事者が収穫機のオペレーターとなる体制としている。農事組合法人の2事例では、同じ人数がいれば、1日当たりの収穫面積は手収穫でも機械収穫の場合と変わらないが、収穫機を利用した方が軽労で面積を拡大することが可能になったとしている。
中山農産は、収穫機1台につきオペレーターを含め4人体制を基本としている。収穫機1台を稼働させる場合は、調製・詰め込み作業を行う3人のうちの1人が運搬作業も行う。収穫機2台を同時に運用する初夏どりでは、別途運搬のみを行う人員を配置して、2台合計で9~10人で収穫作業を行うようにする(写真6)。比較的区画の大きい圃場でキャベツを栽培していることもあるが、運搬作業までを含めた一連の作業をトータルで効率的に行っている。ユンボに爪を取り付け、収穫機後部のキャベツが詰め込まれた鉄コンテナを作業道からユンボで持ち上げて運搬車に移し替えられるようにするなどの工夫を随所で行い、省人的な収穫作業を実現している。