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調査・報告 野菜情報 2023年8月号

加工・業務用野菜における輸入野菜利用の実態、野菜消費形態の変化に関する調査結果について

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野菜振興部
 近年、生鮮品の購入量が減少する一方で加工調理品の消費が増加するなど、野菜需要の約6割が加工・業務用となっている。そのうち3割程度が輸入品で賄われており、今後も国産野菜の需要を安定的に確保するためには、この加工・業務用野菜の国産への切り換えを推進する必要があることから、消費形態やニーズの変化、加工・業務用野菜の国産切換えの可能性などに関する情報について調査を実施したので報告する。

1 調査目的

 野菜については、近年、生鮮品の購入量が減少する一方でサラダなどの加工調理品の消費が増加するなど、家計消費用から加工・業務用に徐々に需要がシフトし、野菜需要の約6割が加工・業務用となっている。そのうち3割程度が輸入品で賄われており、今後も国産野菜の需要を安定的に確保するためには、この加工・業務用野菜の国産への切換えを推進する必要がある。
 農林水産省では、国民の消費生活上重要な指定野菜については、野菜生産出荷安定法に基づき、おおむね5年後の需要および供給の見通し(以下「5年後需給見通し」という)を策定していることから、その機会を捉え、今後、各産地が消費者や実需者のニーズを捉まえて主要野菜の生産・供給を戦略的・安定的に行っていく上で、5年後需給見通しに加え、消費形態やニーズの変化、加工・業務用野菜の国産切り換えの可能性などに関する情報を併せて提示していくことが有効ではないかという方針を踏まえ、野菜生産出荷安定法に基づく野菜価格安定制度を実施する独立行政法人農畜産業振興機構において、輸入野菜利用の実態や野菜消費形態の変化に関する状況の調査・整理を行ったもの。

2 調査対象および調査方法

 本調査は、冷凍食品製造業者、その他加工業者ならびに輸入商社の総計12者(冷食事業者5者、惣菜事業者1者、集団給食業者2者、カット業者1者、輸入商社3者)に対し、往訪によるインタビュー調査として実施。

3 調査期間

 令和4年11月30日~12月22日

4 調査内容

1 輸入および加工・業務利用の実態(輸入時の形状、輸入のリードタイム、用途など)
(1)輸入野菜および同加工品の輸入数量
(2)輸入先国から国内への物流手段(海輸・空輸)
(3)発注から納品までの最短リードタイム
(4)輸入野菜および同加工品の用途
(5)野菜および同加工品輸入における課題

2 消費形態の変化と5年後の可能性(生鮮→カット品→?)

(1)過去5か年の売れ筋(トレンド)
(2)現在の売れ筋(トレンド)
(3)過去から現在の売れ筋(トレンド)の変化の要因
(4)中期的な将来(5年後程度まで)を見越した売れ筋の変化(トレンド)→野菜加工商材、品目の変化など
(5)現在から中期的な将来の売れ筋(トレンド)の変化の要因
(6)普遍的に変わらないと思われる売れ筋
(7)普遍的に変わらない売れ筋(トレンド)である要因
(8)普遍的および中期的な売れ筋(トレンド)に即した商品、メニューなどのために生産を拡大してほしい野菜品目

3 国産野菜が狙っていくべき加工・業務用用途(冷凍野菜など)やその実現のための課題

(1)輸入野菜を国産野菜に置き換えることを検討しているか
(2)置き換える野菜の具体的な用途(商品、メニューなど)
(3)置き換えることを検討している理由
(4)置き換えることによる価格転嫁について
(5)置き換えるつもりがない理由
(6)どうすれば国産野菜に置き換えることを検討できるようになるか
(7)国産野菜、生産者および野菜施策に期待すること

5 調査結果の概要(まとめ)

1 輸入野菜のメリット(優位性)およびデメリット(課題)

タイトル: p071

2 今後のニーズ(全体)

(1)健康志向の高まりから、惣菜における野菜の使用量が増加傾向にある。
(2)スーパーマーケットなどの顧客先における労働力不足を背景に省力化に貢献する商品が求められており、業務用野菜でもミールキット、カット野菜などの需要が増加している。
(3)SDGsの観点から食品残渣の削減に取り組む企業が増えたことから、業務用野菜でのカット野菜のニーズが増えている。
(4)いわゆるZ世代(1990年代中盤から2010年代序盤までに生まれた世代)は環境問題への意識が非常に高いことから、環境への配慮について消費者へ訴求することが重要になってくる。
(5)外食産業では廃棄ロスを減らす必要があるため、消費期限が長く、切り口が変色しにくい品種などが人気である。
(6)これまでの簡便化志向のほか、コロナ禍での行動制限の反動による高級志向の高まりなどがみられる。
(7)行動制限が緩和されても在宅勤務は定着しており、自宅で食事を取る機会が増加するという消費行動は継続すると考えられる。
(8)高齢化の進展に伴い、形態食(食べる機能や飲み込む機能が低下した人のために工夫された食事)に対応した業務用野菜の形状が求められるようになるのではないか(特に高齢者には、「細かく」、「軟らかく」といった要望が多くなっている)。

3 実需者の国産野菜への評価・要望(全体)
(1)野菜全体としては、依然として国産と輸入野菜の価格差が大きいため、国産への切り替えが困難とする者が多いが、生鮮の一部品目では輸入価格の高騰に伴い、国産野菜に割安感が出てきたため、特に価格にシビアな業務用向けで国産割合を増やすとする者もみられる。
(2)国産野菜は、企業農業経営の輸入野菜と異なり、中小規模の家族経営が主体となっているために生産コストが高く、同一産地内でも経営体ごとに品質差が大きいことから、価格、数量、品質といった「定時、定量、定価格、定品質(規格や異物混入)」の面から置き換えが難しいとする意見は多い。一方で、これらを順守できるようであれば国産を使いたいとの需要先の要望は高い。国産野菜と長期で付き合うためには、市況に左右されない加工・業務用に特化した産地づくりが重要。
(3)国産のみでは必要数量を揃えることが困難。数百トン~千トン単位の規模感で安定出荷できる産地が必要。国内は加工場の規模が小さく、また、規模的に一つの産地で完結することは困難であると考えられることから、特定の野菜について産地リレーによって数量を確保しつつ、業務用向けの大規模加工工場を整備するといった取り組みが必要。
(4)加工・業務用の国産野菜の供給の拡大を図るためには、生産数量の確保と、洗浄・カット・冷凍などの加工をセットとした枠組みを前提に考えてほしい。また、水田転作により新規作物の導入を志向する産地に期待している。そのような取り組みをしたい産地があれば少量からでも協力していきたい(品目としてはブロッコリー、ねぎ、たまねぎなど)。
(5)生産工程管理のエビデンスを強化する観点から、国内生産者のGAP取得を進めることが必要。

4 輸出の可能性
(1)日本の野菜や加工食品は品質が良く、また、国内取引は価格競争が激しく収益が見込みにくい一方で、海外ではインフレの進行や円安の進展から驚くほど高い値段で輸出できる可能性がある。ただ、輸出する場合は、ホールやカット品ではなく、何らかの付加価値があった方が良いので、国産の野菜を使用した餃子や春巻きなどに加工して輸出すれば、国内取引よりも大きな収益が見込めるのではないか。
(2)中国などの富裕層は、高品質で食味が良いものとして日本ブランドを信用しており、販売先として有望。
(3)かんしょの国産品は、市場出荷向けやブームとなっている干しいも・焼き芋向けが多いため、国内でも必要量が確保できない状況となっているが、海外(特にアジア圏)でのヒットも確実。

5 品目別の輸入・国産の利用状況、今後のトレンド、置き換えに当たっての課題

タイトル: p073
(参考)
※1:「スマート農業の導入による野菜生産力増強の課題~宮崎県におけるピーマンとほうれんそうの事例から~」〈https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/senmon/2004_chosa01.html〉野菜情報2020年4月号
※2:「冷凍えだまめの輸出事業への取り組みと課題~北海道 JA中札内村の事例分析~」〈https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/senmon/1103_chosa02.html〉野菜情報2011年3月号