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調査・報告 野菜情報 2022年7月号

地方自治体におけるねぎ産地振興の取り組み ~能代市農林水産部ねぎ課の事例を中心に~

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弘前大学 農学生命科学部 国際園芸農学科 教授 石塚 哉史
弘前大学 農学生命科学部 国際園芸農学科 田中 あさひ

【要約】

 本稿の目的は、近年においてねぎ生産の増加傾向が確認できる秋田県能代市を事例に、産地自治体を中心とした野菜産地支援の取り組みの展開と課題について明らかにすることにおかれる。具体的には、能代市におけるねぎ生産・流通の実態を整理した後、農林水産部ねぎ課が取り組んでいる支援内容の特徴について検討していく。

1 はじめに

 周知の通り、政府は1966年に指定野菜と野菜指定産地を定め、「主要な野菜についての当該生産地域における生産及び出荷の安定等を図り、もつて野菜農業の健全な発展と国民消費生活の安定に資すること」(農林水産省「昭和41年法律第103号 野菜生産出荷安定法」第1章第1条)を目的に野菜生産出荷安定法を策定した。同法において定められた指定野菜は、「消費量が相対的に多く又は多くなることが見込まれる野菜」であり、キャベツ、きゅうり、さといも、だいこん、たまねぎ、トマト、なす、ねぎ、にんじん、はくさい、ばれいしょ、ピーマン、ほうれんそう、レタスの14品目が該当する。野菜指定産地の条件は品目や状況によって異なるものの、作付面積は8~20ヘクタール、共同出荷組織もしくは大規模生産者による出荷が2/3以上であることが求められており、2021年8月時点で約900カ所が指定されている(注1)
 2020年の野菜産地における野菜指定産地の比率は、作付面積34.7%、収穫量52.1%、出荷量55.4%であり、需給面で重要な役割を担っていることが理解できる。最近10カ年において野菜指定産地が占める作付面積、収穫量、出荷量の比率が上昇した品目として、にんじん、ばれいしょ、ほうれんそう、ねぎ、たまねぎ、なす、ピーマンの7品目が確認できる。これらの品目の中で野菜指定産地数が最も多い品目としてねぎが挙げられる(79カ所)。それに加えて、野菜指定産地において作付面積、収穫量、出荷量の全てが増加傾向を示していることを確認できるのはねぎとピーマンの2品目のみである。
 上述の点を踏まえてねぎをめぐる情勢をみると、輸入品の増加によって2001年に農産物として初めてのセーフガード暫定措置(注2)の対象となったことからも理解できるように国際化の波にさらされている。したがって、国内産地の維持と強化がより求められる状況下であるために指定産地を中心に生産振興が重要な局面にあるといえよう。セーフガード暫定措置の発動要因として、輸入ねぎの急増による国産品の価格低下、それによる長期的な作付面積の減少などが挙げられていた(注3)。2020年時点でねぎの生産量上位の地域として、千葉県、埼玉県、茨城県、群馬県、北海道が挙げられる(表)。このような主産地の動向をみると微増・微減を繰り返してはいるものの、趨勢(すうせい)的にはゆるやかな減少傾向を示していることは否めない。


表 わが国の主産地におけるねぎ生産の推移


 しかしながら、最近のねぎ生産の新たなトピックとして、前述の主産県と比較すると産地の規模は限定されているが、2013年から現在にかけて収穫量の増加傾向を確認できる地域として秋田県が挙げられる。一般的に、昨今の農業を取り巻く情勢に違わず、多くの野菜産地の規模も停滞傾向を示す中で8年も継続して伸長している点は評価に値するものといえよう。近年の収穫量の増加により、秋田県のねぎ収穫量の順位も13位から8位にまで上昇している。また、2018年には青森県を抜き、東北地方におけるねぎの最大産地の座に躍り出ている。さらに、秋田県の野菜生産においてもねぎは出荷量1位、収穫量、作付面積は共に2位となっており、地域内でも重要な品目となっている。
 そこで秋田県内のねぎ指定産地についてみていくと、能代(能代市)、北秋(ほくしゅう)鹿角(かづの)(北秋田市、大館市、小坂町、鹿角(かづの)市)、にかほ(由利本荘市、にかほ市)の3地域が確認できる。市町村別にみると、ねぎの収穫量が最も多い地域は秋冬ねぎの指定産地である能代市となっており、2019年の収穫量は約3300トンと秋田県のねぎ収穫量の24.8%を占めている。
 以上の点を踏まえて本稿では、近年のねぎ産地としての伸長が確認できる秋田県の有力産地である能代市に焦点を当て、市の担当者を対象としたヒアリング調査結果に基づいて地方自治体を中心とした野菜産地支援の取り組みの展開と課題について明らかにしていく。具体的には、能代市におけるねぎ生産・流通の実態整理をした後、農林水産部ねぎ課が取り組んでいる支援内容の特徴について検討していく。なお、本稿において能代市を事例として設定した理由は、前述の収穫量が増加傾向を継続していることに加え、市行政(農林水産部)にねぎ課という野菜の単独品目で専門部局を設置するなど他産地と比較すると積極的な支援体制の構築が確認できるためである(注4)

(注1) 指定野菜および指定産地に関しては、参考文献(4)が詳しいため、参照されたい。

(注2) 輸入増加により、同種貨物、競合貨物を生産する国内産業に生じた重大な損害などを防止・救済するために認められている緊急措置。

(注3) 財務省・経済産業省・農林水産省「ねぎ等3品目に関するセーフガード暫定措置について」2001年4月13日<https://www.maff.go.jp/j/kokusai/boueki/sg_kanren/pdf/zantei.pdf>

(注4) 地域特産物の青果物を市町村の部課名として設置しているのは、代表的なものとして弘前市(青森県)のりんご課、有田市(和歌山県)のみかん課、みなべ町(和歌山県)のうめ課などが挙げられ、野菜では他に確認できておらず特徴的な取り組みといえよう。田子町(青森県)にたっこにんにく振興室はあるものの、産業振興課内のセクションであり、単独の課とは言い難い。詳細は2018年4月21日付朝日新聞 <https://www.asahi.com/articles/ASL4J3Q4HL4JUBUB009.html>を参照。

2 能代市の概要

 能代市は秋田県北西部に位置しており、北は八峰町および藤里町、東に北秋田市および上小阿仁かみこあに村、西に日本海、南は三種町に接している(図1)。面積は427平方キロメートルであり、うち農用地が85平方キロメートル(20.0%)を占めている。農用地の内訳は、田71平方キロメートル、畑14平方キロメートルである。冬季は低温かつ年間降雪日数が70日程度であり、日本海側の地域特有の北西から強い季節風が吹く気候特性を有している。


図1  能代市の位置


 市内の世帯数は2万4238世帯、人口5万1003人(令和3年3月31日現在)であり、農業経営体数をみると2000年の2896体から2020年には1175体まで減少している。また高齢化も進行しており、農業就業人口(2362人、2015年)に占める60歳以上の比率は約8割(1858人、78.7%)と著しく高い。耕地面積も農地の転用が進み、2000年に7800ヘクタールであったものが、2020年には7530ヘクタールとなり、4%減少した。耕地面積の90%は稲作が占めており、残りの10%において野菜生産が行われている。野菜の主力品目は、ねぎ、うど、みょうがである。能代市では、1950年代からねぎの作付けが開始されており、当初は自家消費用の余剰分を販売していた。その後、作付面積の拡大と共に県外出荷にも取り組んだことに伴い産地の規模も拡大し、1972年には秋冬ねぎの野菜指定産地となって現在に至る。
 2018年には「白神ねぎ」を中心としたねぎの生産と販売への効果的・効率的な支援を目指すため、能代市庁内にねぎ課を新設した(注5)。単独品目専門の課を新設した目的は、地域ブランド農産物である「白神ねぎ」の生産量の増加を図り、農家所得の向上や新規就農者の確保、雇用の創出、耕作放棄地の解消などを促進することが挙げられる。ねぎ課の主要業務として、(1)生産拡大の推進(2)優良品種の推奨および技術指導(3)生育、生産および被害状況の調査(4)病害虫発生予察および防除技術指導(5)農業関係団体などとの連絡調整―の5点が指摘できる。それに加えて、栽培農家からの生育不良や病害虫防除の相談・指導および新規就農者を中心とした作付指導や営農相談なども挙げられる。

(注5) 「白神ねぎ」は、あきた白神農業協同組合から出荷されているねぎが有している地域ブランド農産物の名称であり、2012年に商標登録されている。2015年には「白神ねぎ」の販売金額が初めて10億円を突破し、2021年には販売金額20億円を達成するなど近年の成長は目覚ましい。なお、「白神ねぎ」に関しては、参考文献(2)、(3)が詳しいため、参照されたい。
 

3 能代市におけるねぎ生産・流通の実態

 能代市で栽培されているねぎの作型は、(1)春ねぎ(2)早どり夏ねぎ(3)夏ねぎ(4)秋冬ねぎ、の4種類である(図2および図3参照)。早どり夏ねぎは他産地の出荷が限定された端境期の流通を目的としており、2010年頃から能代市が導入した比較的新しい作型である。2020年時点の作付面積は小規模ではあるものの、周年出荷を実現する上では欠かせない作型である。


図2  ねぎの作型別栽培暦


図3 能代市における作型別ねぎの作付面積の推移


 このように能代市は、ねぎの作型体系を複数組み合わせることを推奨しており、市内の農家は2種類以上の作型を導入して栽培している。作型の中で主要なものとして秋冬ねぎと夏ねぎが位置付けられており、2種類の合計のみで作付面積全体の85.1%を占めている。ほとんどの作型が増加傾向を示している中、春ねぎの作付面積のみ停滞している。その要因は、他の作型と比較して葉が硬く、すじが残りやすいという品質面の課題が挙げられる。
 次いで能代市内の地域ブランド農産物の主力品目である「白神ねぎ」についてみていこう。図4は白神ねぎの販売規模の推移を示したものである。ヒアリングによると、1993年前後に機械化により作業負担が軽減して以降は、1999年が1000トン、2003年が2000トン、2007年は3000トンに達しており、おおむね増加傾向を示している。その後も一時的に停滞した期間は確認できるものの、2019年は4000トン台、2021年は5000トン台を超過し、現在に至っている。

図4 白神ねぎにおける販売規模(数量、金額)の推移

 出荷数量が減少した年次をみると、2009年は降水量が多くベト病の多発した点や(ひょう)害などの影響に伴う生育不良の発生が影響した。翌2010年は春先の低温や夏場の猛暑、暖冬の影響で全国同様に作柄が芳しくなかった。2011年は低温と降雨による定植時期の遅れ、フェーン現象の影響による軟腐病の発生に加えて暖冬による消費低迷も打撃を与えた。2012年は夏場の猛暑や干ばつに伴う収穫量の減少と品質低下が発生した。その後(2013年以降)は天候不順や病虫害の影響を受けることなく、出荷数量も増加傾向を続けていることが確認できる。
 ヒアリングによると新規ねぎ栽培者も政府や秋田県による「メガ団地等大規模園芸拠点育成事業」(注6)や「農業次世代人材投資資金」(注7)などの事業の追い風を受け、1年に5~10人程度増加していた。事業実施前は農業後継者中心であったが、現在は他産業からの就農者やUターン、水稲専業農家からの転作のシェアが拡大している。現在、1経営体当たりの作付面積は平均で1ヘクタール、最大で約6ヘクタールとなっており、規模拡大を実現している。
 前述のように能代市は、複数の作型による栽培・出荷の実現によって周年供給体制の構築を目指している。とりわけ、主産地の端境期(6~7月)は、出荷量が不安定であるために、夏ねぎの収穫(7月下旬)を早め、早どり夏ねぎとして7月上旬から出荷するという取り組みを行っている。
 次いで「白神ねぎ」の販売金額をみると、前述の出荷数量とほぼ同様な動向を示している。2010年に9億6000万円を達成し、10億円達成が目前と迫ったものの、その後はしばらくの期間、足踏み状態が続き、2015年に念願の10億円台を突破することなった。2016年以降の数年間は13~15億円の範囲で推移していたが、2020年に17億円、2021年には20億円と再び増加傾向を示している(図4)。
 販売金額が変動した要因は、他の主産地の作況に応じて能代市産の販売単価が変動していた点が指摘できる。2010年には猛暑の影響を受けて全国的にねぎの作柄が不良であり、単価の上昇に伴い販売金額も急増した。前述の通り、その後10億円台を突破するまでに年数を要した理由として、他産地の出荷時期が以前よりも長期化し、能代市産ねぎの消費市場における強みが見出しにくくなったためである。2012年には茨城県や北海道のねぎ生育不良によって価格上昇が起こり、販売金額も増加した。また、2014年には北海道・東北の出荷時期が早まったことで夏ねぎの価格が低下し、販売金額も8億1000万円近くまで落ち込んだ。さらに、2017年の販売金額が17億円に上昇した理由は、台風の影響によって関東地方に立地する産地の出荷量が減少したためである。なお、ヒアリングによると「白神ねぎ」は、市場流通を経て首都圏を中心とした東日本に立地する青果物専門の卸売会社やスーパーマーケットで販売されている。西日本の地域については出荷コストや輸送日数などを考慮し、現時点では積極的な出荷は行っていない。

(注6) 園芸品目の生産を拡大させ、複合型生産構造への転換を加速させるため、園芸振興をけん引する大規模園芸拠点(メガ団地)の展開に向けた支援を行う事業。詳細は参考文献(1)を参照されたい。

(注7) 次世代を担う農業者となることを志向する者に対し、就農前の研修を後押しする資金(2年以内)および就農直後の経営確立を支援する資金(3年以内)を交付する事業。

4 能代市によるねぎ関連支援の特徴

 能代市が取り組んでいるねぎ関連の主要な支援として、(1)農業用機械・施設などへの助成(2)土地改良事業への支援(3)農業者の法人化への支援(4)新規就農者や新規栽培者への支援(5)労働力確保への支援(6)栽培実証(7)PR活動―の7点が挙げられる。(1)~(3)に関しては政府や県による関連事業を中心に取り組んでいる。(4)~(7)に関しては、能代市による独自の展開も確認できるため、以下の取り組みに着目して言及していく。
 (4)の新規就農・新規栽培者への支援では、4~5年前からUターン・Iターン希望者が見受けられたために栽培講習会、市内の農家での実施研修、土壌診断などの支援を行っている。土壌診断については、以前は定期的な検査中心であったが、最近では、新規参入や転作する農家の増加に比例して、農地がねぎ栽培に適するか、否かという点の検査依頼も増加している。
 (5)の労働力確保については、2018年から秋田県、能代市、JAあきた白神によって「園芸労働力確保に関する意見交換会」が開催され、県・市町村・農業団体などの複数の組織が連携した取り組みを行っている。また関係機関が協力して「白神ねぎお仕事体験会」を開催し、箱詰め・皮むき作業を中心とした短期就業に対応(日数だけでなく、時短も含む)した雇用確保に取り組んでいる。また、子育て世代の母親にも働きやすい環境整備が模索されている。
 (6)の栽培実証では、能代市に適した優良品種を選定するため、種苗会社と連携して実証栽培を行っている。ヒアリングによると、2021年時点の主力品種は、春ねぎ「元晴晩生」、夏ねぎ「夏扇パワー」、秋冬ねぎ「夏扇パワー」および「夏扇4号」、雪中ねぎ「夏扇4号」であった。現在は中長期的な気候変動を想定して温暖化に対応可能な品種開発に取り組んでいる段階であった。この選定は、近年の猛暑が続いたことによって「夏扇4号」の開葉期に不調が確認できたことを契機に取り組みをスタートし、他品種への作付転換を検討していた。調査時点では「森の奏で」「名月一文字」などを代替品種とする実証試験が行われていた。また、春ねぎについても栽培に適した品種の検討を進めており、「羽緑」や「秋田はるっこ」などの実証試験に取り組んでいた。
 (7)のPR活動では、2018年に4年連続で「白神ねぎ」の販売金額が10億円を達成した記念イベントとして、能代市、藤里町、JAあきた白神主催の「第1回白神ねぎまつり」を開催した。このイベントは、前述の市町村内の地元住民による「白神ねぎ」に対する認知度向上を目指した取り組みである。具体的には、生産者と関係機関が一体となってねぎの即売会や皮むき体験などを実施した。翌年の2019年には能代市ねぎ課のマスコットキャラクターとして、公募で集まったデザインの中から「白神ねぎのん」が決定し、名称・デザインの商標登録を行った(図5)。「白神ねぎのん」は「白神ねぎまつり」など多くのイベントに参加し、「白神ねぎ」と能代市のPR活動を行っている。さらに、11月23日を「能代ねぎらいの日」とし、テレビへの出演や県内のショッピングセンターで「白神ねぎ」の販売を行うことによって地産地消を推進している。

図5 能代市ねぎ課マスコットキャラクター 「白神ねぎのん」

5 おわりに

 本稿では、能代市の事例を中心に、産地自治体を中心とした野菜産地支援の取り組みの展開についてみてきた。最後にまとめとして、能代市によるねぎ産地振興の特徴と残された課題について示していきたい。
 第1は、政府(全国)および秋田県が規模拡大、新規就農や転作(ねぎ以外も含む)などに力点をおいた支援を中心に行っているのに対し、能代市は、ねぎ課が先頭に立ち、前述の国や県による支援メニューでカバーしきれていない点に力点をおいて支援していることである。国・県・市の各段階による多種多様かつ重層的な支援体制は、能代市のねぎ生産における特徴的な取り組みであり、自治体の産地振興としても評価に値するものである。
 第2は、ねぎ課の設置によって、産地の持続的発展に関連する支援への注力ができるようになった点である。とりわけ、新規就農や転作という基幹的農業従事者のみの支援だけでなく、パートタイムにも代表される短期就業者の雇用創出に向けた取り組みは、ねぎ農家による規模拡大が進展している中で、労働力確保という点で重要な役割を果たしている。
 第3は、地域ブランドを有している「白神ねぎ」が東日本を中心に好調な販売実績を上げている現状において次の一手として、地産地消の推進に積極的な取り組みを示していることである。このことは、流通チャネルを増やすことによって他産地との作柄や市況による影響を受ける需給変動を抑制することが主目的であると考えられる。だが、それ以外にも地域住民への農作業体験や即売会などを通じて認知度を高め、地域資源として「白神ねぎ」の位置付けを確立させて、産地全体でねぎ生産の振興を目指す足かがりとしているものと理解できよう。
 このように、近年において伸長を続けている能代市のねぎ生産であるが、課題も残されている。有力な地域ブランド農産物の「白神ねぎ」であるものの、一部の消費者において能代市のイメージが定着していない点が指摘できる。ニュースなど報道では「白神ねぎ」という名称は幾度も取り上げられる機会はあるものの、能代市が「白神ねぎ」の産地として消費者に定着しているとはいいがたい。このような事象を解消するには、前述のプロモーション活動を継続することによって地域内外での認知度向上を徹底することが求められよう。
 以上のように若干の克服すべき課題が存在しているものの、ねぎ課を中心とした近年の能代市による収穫量の伸長は、他産地にとっても参考となる事象であると判断できるため、筆者グループも今後の動向を注視していきたい。

謝辞
 本稿の作成にあたり、筆者グループは2021年11月に秋田県能代市農林水産部ねぎ課を対象とした訪問面接調査を実施した。ご多用中でなおかつコロナ禍の厳しい最中にも関わらず、ご協力頂いた佐藤栄一課長、佐々木由紀子係長をはじめ、関係職員の皆様へこの場を借りて謝意を申し上げる。

参考文献
(1) 上田賢悦「稲作単作地帯における園芸振興への挑戦~秋田県の園芸メガ団地育成事業による大規模園芸生産拠点の創出を事例として~」『野菜情報』2022年6月号、
    <https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/senmon/2206_chosa1.html>(2022/6/17 アクセス)

(2) 清野誠喜「園芸メガ団地で「白神ねぎ」ブランド強化~あきた白神農業協同組合~」『野菜情報』2020年4月号、53~60頁、2020年。

(3) 佐藤重樹「秋田県 あきた白神農業協同組合(ねぎ)~白神山地の恩恵を受けた「白神ねぎ」の産地~」『野菜情報』2012年10月号、
   <https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/santi/1210_santi1.html>(2022/6/17 アクセス)

(4) 独立行政法人農畜産業振興機構編『野菜価格安定制度と野菜産地の進展~野菜価格安定制度創設から半世紀を経て~』農林統計出版、全248頁、2021年。