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調査・報告(野菜情報 2017年12月号)


野菜需給協議会現地協議会の概要

野菜需給部

要約

 野菜需給協議会(座長:中村靖彦、事務局:農畜産業振興機構野菜需給部)は、平成29年10月10日(火)、会員(消費者団体、流通・小売団体など)を対象に、野菜の生産現場への理解を深めるため、群馬県のJA邑楽館林管内で現地協議会を開催し、富士食品工業株式会社の野菜カット工場などの視察や、生産者団体と意見交換会を行った。

1 視察先の概要

 富士食品工業株式会社のカット野菜工場

●もやし、カット野菜などの製造販売を行っている企業である。「水」と「土」には特にこだわっており、日光の清らかな水を使用できる場所にもやしの生産工場(栃木県・日光工場)を建設している。また、カット野菜は本社工場で加工しており、カット野菜の原料となる野菜については、土壌分析から始まる健全な土づくりを基に生産を行っている。

●土づくりは、日光工場内に処理プラント「命を守る土づくりセンター」を設置し、もやしカスなどの排出物を完熟堆肥に生まれ変わらせる資源循環システムを推進しており、自社農場や契約農家において、野菜の栽培に役立てている。

●理学博士・なかしま常允とどむ先生が提唱した理論に基づく、ミネラル農法への取り組みを行っており、野菜の食味向上や作物の健全な生育を図っている。

●現在は、邑楽おうらたてばやし地区に同社関連の農地が40ヘクタール点在しており、これを集積し100ヘクタールにして、キャベツ、レタスの一大産地を形成してモデル地区にする予定である。

●日本農業の担い手の育成に向けて、農業高校の生徒や農業大学校の学生に、同社にいったん就職してもらい、同社の契約生産者が作った生産法人で一定期間就農した後に、同社の社員として継続するか、生産者として独立するかを選択してもらう取り組みを行っている。

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(2)きゅうりの圃場

●管内のきゅうり生産者1戸当たりの平均的な経営面積は0.165ヘクタール(500坪)である。

●きゅうりの作型は2作あり、今回視察したのは抑制型で、8月5日にしゅ、同月12日にかぼちゃの台木にきゅうりを接ぎ木し、同月20日に定植、9月13日ごろから11月まで収穫する。もう一つは促成型であり、12月下旬に定植し、1月下旬から6月まで収穫する。

●今年は、8月の盆時期が長雨となり軟弱徒長になったが、幸いにしてミナミキイロアザミウマ、アブラムシなど害虫の発生が少なく病気の発生が少なかったため歩留まりが高まり、出荷数量が増加した。

●かぼちゃにきゅうりを接ぎ木すると、根張りがよくなり耐病性も高まる。9割の生産者が接ぎ木した苗を購入して植えている。

●接ぎ木しないきゅうりは、果粉(ブルーム)である白い粉が表面に付いているので、「ブルームきゅうり」と呼ばれている。棚持ちはしないが皮は軟らかく、本来のきゅうりの味がする。一方、接ぎ木したきゅうりは「ブルームレスきゅうり」といい、現在はこれが主流になっている。表面がツルツル、ツヤツヤとしており、ブルームきゅうりに比べて皮が硬く歯ごたえがあるのが特徴である。

●きゅうりの表面のイボイボのところに雑菌が入る可能性があるため、イボイボをなくした加工・業務用の「フリーダム」という品種があるが、収量は通常の品種に比べて若干落ちる。

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(3)農産物直売所「ぽんぽこ」

●JA邑楽館林の直売所であり、11月で9周年を迎え、売上高は年間で10億円を超える。

●地元の鮮度の高い農産物を中心に品ぞろえすることで、競合店と差別化している。

●朝7時30分からバックヤードに生産者が荷物を運んでくる。荷物を持ち込む生産者は、1日当たり100~150名である。

●市場出荷する野菜は規格が決まっているが、直売所には規格外の野菜も含めて出荷される。近隣の競合店舗の価格を参考にして、直売所のバックヤードに大袋、小袋の荷姿ごとに目安となる最低販売単価を表示し、生産コストを度外視した安売りを防いでいる。

●1日4回、生産者に追加の出荷をしてもらうために販売状況をメール配信しており、その効果もあって夕方まで品物が陳列されるようになっている。店内では、職員がお客さんに食べ方をアピールしたり、コミュニケーションをとるように心掛けている。また、生産者が荷物を持ち込む時間帯に演歌を流したり、開店時間以降は1970年代の音楽を流すなど、生産者も消費者も楽しめる店舗にするよう工夫している。

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(4)集出荷場など

●群馬県は温暖な気候と日照時間に恵まれていることもあり、きゅうりの出荷量は全国2位である(平成28年産野菜生産出荷統計)。管内は県内一の生産量を誇り、県内出荷量の半数以上を占めている。

●卸売市場に出荷できるきゅうりの出荷規格は7つである。生産者は「長さ」「重量」「曲がり」などを基に選別・箱詰めを行い、12~14時ごろに集出荷場に搬入する。

●卸売市場からJAに代金が振り込まれる前に、JAが立て替え払いを行うことで、生産者は出荷した翌々日に代金を受け取っている。

●他の産地と同様に高齢化が進んでおり、生産者(現在581戸)の負担軽減を図るため、コンテナにバラ詰めの状態で出荷してもらい、その後、JA職員が1袋に4本詰めなどのパッケージを行っている。

●葉物野菜も出荷しているが、葉物野菜は棚持ちするように真空予冷した後に冷蔵保管し、順次保冷トラックで出荷している。

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2 意見交換会

(1)概要

意見交換会はJA邑楽館林本所会議室で開催された。まず、JA全農ぐんまから群馬県の園芸について説明があり、JA邑楽館林から管内の青果物の販売戦略について説明が行われた。

ア 群馬県の園芸

●県産の農産物のうち、生産量が全国5位以内に入るものは、キャベツ、きゅうり、レタス、こんにゃくなど15品目に上る。

●平成27年の農業算出額は、全国5位である。

●標高101400メートル地帯に耕地が広がり、年間を通じ、標高差を利用してさまざまな野菜を生産している。利根沼田・吾妻地域の中山間地・高冷地では、夏の冷涼な気候を生かしたキャベツなどの生産が盛んである。中部・西部・東部地域の平たん地では、果菜類などの露地栽培に加え、冬場の施設栽培も盛んである。

イ JA邑楽館林の青果物

●販売額は、きゅうりが半分を占めており、次いではくさい、なすが続く。

●北海道から大阪までの54の卸売市場に出荷しており、市場外流通は12社と取引している。

●重点市場、パートナー店を定めて販売戦略を共有し、積極的な企画提案や販促活動により価格交渉力を強化している。

●加工・業務向けについては、相手先ごとに市場外流通(直販)や市場経由の相対販売など、販売方法を明確にし、計画的な安定販売に努めている。

●商品力、提案力が不可欠であり、ご当地アイドル「Menkoiガールズ・サラダ」による消費宣伝イベントも開催している。

(2)主な質疑応答

 他県の産地のように、規格の選別を自動化しない理由は何か。

 管内の生産者全員分を受け入れるだけの大規模施設はコスト面などで難しいと判断した。しかし、160名の生産者が機械選果を望んでいるため、機械選果の導入を検討している。

 今後3割の生産者が離農する可能性があるとのことだが、生産減少を補うために集約化を図ることは可能か。

 栽培の機械化は、成長を促すため、木姿を見ながら芽や葉を摘み取る摘心・摘葉をして実を肥大させており、状況に応じた作業が必要となるため困難である。ただし、作業の効率化については、7つの出荷規格をさらに簡素化して労働コストを削減したり、商流は卸売市場とするものの、物流は実需者に直送する量を拡大することで物流コストの削減することを検討している。

 どのような消費宣伝を行っているのか。

 店頭でマネキンを導入して新鮮なきゅうりの試食宣伝を行っている。マネキンはコストが掛かるため瞬間での利益は度外視しており、小売で物が動かないときに産地主導で動かす際の手法として重要視している。その際にJAとしては、消費者が「どのような時にきゅうりを買って」「どのような時にきゅうりを食べるのか」を聞き出すようにしている。

 等階級ごとの食べ方・メニュー提案も必要ではないか。

 参考にしたい。

 出荷は卸売市場から契約取引へシフトしてきているのか。

 契約取引の場合、収入は安定するものの、欠品することができないので余剰作付けが生じてしまう。そのため、その分の販売力をつけることが課題である。

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