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調査・報告(野菜情報 2017年8月号)


加工・業務用野菜の安定供給に果たす中間業者の機能
~平成28年度需要構造実態調査の結果から~

野菜需給部

要約

 当機構が平成28年度に実施した加工・業務用野菜の需要構造実態調査の調査結果によると、中間事業者は、国産の加工・業務用野菜の安定調達と調達コストの低減を図るため、産地(生産者、農協など)との契約による調達割合を高く設定している。また、販売先との契約は、価格だけを決め、納入量は販売先からの指示によることが最も多いため、不作により野菜価格が高騰して調達コストが増加しても、納品価格が固定のため、中間事業者は経営的に非常に厳しい局面に置かれる場合がある。

1 はじめに

国産加工・業務用野菜の生産振興・安定供給を図っていく上で、中間事業者(産地と食品製造事業者や外食事業者をつなぎ、産地から購入した農産物を食品製造事業者などのニーズに合わせて安定的に供給することに加え、加工・業務用需要に対応できる産地を育成・指導する機能を有する個人または法人)の果たす機能が重要視されているが、その全体像は、必ずしも明らかにされているとは言い難い。このため、農畜産業振興機構では、まずは野菜または野菜の加工品を取り扱っている流通事業者・加工事業者などを対象に中間事業者を特定・抽出・分類することを目的として、平成28年度において加工・業務用野菜の需要構造実態調査を実施したので、その結果概要を報告する。なお、中間事業者における加工・業務用野菜の調達・販売のフローチャートは、図1の通りである。

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2 調査時期および調査の方法

(1)調査時期

平成28年12月~29年3月

(2)調査方法

加工・業務用野菜を扱っていると思われる卸売業者、仲卸業者、問屋・商社等、カット・野菜加工事業者などの中間事業者を対象にした、アンケート調査およびアンケート調査では把握が困難な事項についてヒアリング調査を実施した(表1)。ここでのカット・野菜加工事業者は、一次処理(皮むき・芯抜き等)、二次処理(カット野菜製造)などを行っている事業者をいう。

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3 調査結果の概要

(1)加工・業務用野菜を扱っている企業の業務内容

卸売・仲卸(75.7%)、次いでカット野菜製造(25.5%)、野菜産地での集出荷(24.7%)と続いている(図2)。それぞれの業態別の業務内容は、以下の通り。

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ア 卸売業者

本業の他に、「野菜産地での集出荷」(35.4%)が比較的多く、集荷力の強化などの一環で実施している卸売業者が多いと考えられる。これ以外には、「カット野菜製造」(11.0%)、「一次加工(皮むき・芯抜き等)」(9.8%)など、原体野菜の卸売にとどまらず、業務内容が多角化している傾向が見られる。

イ 仲卸業者

本業の他に、「一次加工(皮むき・芯抜き等)」(23.2%)や「カット野菜製造」(13.4%)など加工業務まで実施している企業が比較的多い。

これは、卸売市場法(昭和46年法律第35号。以下「市場法」という)において、卸売業者は、仲卸業者または売買参加者に販売先が制限されているのに対して、仲卸業者は多様な実需者に販売することが可能であることから、実需者のニーズに対応して加工業務まで行っているものと考えられる。

ウ 問屋・商社等

卸売・仲卸(42.3%)、「加工食品の製造・販売」(38.5%)、「冷凍加工・加熱加工」(28.8)、「野菜産地での集出荷」(26.9%)、「物流業務」(19.2%)、「カット野菜製造」(19.2%)、「一次加工(皮むき・芯抜き等)」(17.3%)、「選別・調製」(17.3%)など幅広い業務に対応している。

エ カット・野菜加工事業者

本業の他に、「野菜の生産」を実施している企業の割合が全業態の中で最も高い25.5%となっている。これは、カット野菜の原料を安定的に調達するためと考えられる。本業に次いで、「卸売・仲卸」(38.3%)を行っている企業も多い。

ヒアリングからは、本来業務以外にも、野菜を安定的に調達するために自社または子会社が農業に参入して野菜を生産したり、契約生産者に対する営農指導および収穫作業の支援、生産資材の販売、栄養分析および残留農薬分析を行うための理化学分析、販売先からの適時、適量などの注文に配送できるように自社または子会社が物流事業に参入するなど、事業の多角化を図っていることが明らかとなった。

具体的には、大きく以下の三つに分類される。

一つ目が、本来業務を円滑、効率的または確実に行うためのものであり、いわば本来業務のサポート的な役割を果たすものである。

(例)・自社または子会社による野菜生産

 ・契約生産者への営農指導および収穫作業の支援

 ・生産資材の販売

二つ目が、実需者のニーズに対応するために行うものであり、いわば販売先の確保・拡大の役割を果たすものである。

(例)・自社または子会社による物流事業

 ・残留農薬その他の理化学分析

 ・一次加工

三つ目が、経営のリスク分散・事業間のシナジーなどを目的とするものである。

(例)・弁当・惣菜製造

 ・加工食品の製造・販売

(2)国産の加工・業務用野菜の契約取引の割合

国産の加工・業務用野菜のうち、安定調達を図るため契約取引の割合は平均62.8%であり、100%という企業も約2割存在する(図3)。

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市場法では、仲卸業者は、所属市場の卸売業者以外の者からの買い入れが制限されている中で、契約取引をせずとも卸売業者から調達することで、数量的・品質的などにも事足りている企業もあるため、契約取引の比率は最も低く、次いで集荷機能のある卸売業者が低くなっている。

また、問屋・商社等およびカット・野菜加工事業者は、加工・業務用野菜の割合が他業態に比べて高く、国産野菜を安定的に調達するために契約取引の割合が高くなっていると考えられる。

(3)加工・業務用野菜の調達

ア 契約取引を行っている品目数

国産の加工・業務用野菜で、契約取引を行っている品目数を質問したところ、全業態では、平均9.7品目、中央値で6.0品目となっている(図4)。

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業態別に見ると、問屋・商社等は平均品目12.8品目となっており、幅広い品目を安定的に調達しようと取り組んでいることが分かる。また、カット・野菜加工事業者は8品目以上の割合が他業態に比べて特に多くなっており、品ぞろえに取り組んでいる企業が多いことが分かる。

イ 契約取引による調達数量の多い品目

国産の加工・業務用野菜で契約取引による調達数量上位5品目を質問したところ、「キャベツ(42.6%)」、 「たまねぎ(38.0%)」、 「にんじん(31.6%)」、 「だいこん(28.9%)」、 「ばれいしょ(20.5%)」、 「レタス(20.2%)」、 「はくさい(15.6%)」、 「ねぎ(14.1%)」などの指定野菜が上位に挙がっている(多くの企業で調達数量が多い品目に挙がっている)(図5)。

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指定野菜14品目以外では「かぼちゃ」、「ごぼう」、「かんしょ」などが挙がっている。

また、キャベツは全業態で最も割合が高くなっている。キャベツはコンシューマーカット野菜(小袋、パック)での使用量が多い。カット・野菜加工事業者の過半以上の者は、キャベツおよびにんじんを使用していると考えられる。

ヒアリング調査では、中間事業者が契約取引を行う理由としては、加工・業務用野菜の需要が大きいキャベツ・たまねぎ・だいこん・にんじん・レタスなどを安定調達することを挙げる事業者が多かった。これ以外にも、販売先からのセット納品の要望が高まる中、品ぞろえの充実を図る観点から、葉菜類・根菜類などと多様な品目を取扱う中間事業者も見られた一方で、専門性を高め差別化を図ることを目的として、レタス、キャベツといった特定の品目に特化する中間事業者もあれば、減農薬野菜、希少野菜、機能性野菜、国産の外国野菜などといった付加価値の高い野菜に重点を置いた中間事業者も見られた。

また、キャベツ(寒玉系)が3~5月、だいこんおよびにんじんは7~8月、たまねぎは6~8月が品不足になる傾向があるため、調達に課題があるとの意見があった。

ウ 国産の加工・業務用野菜の契約取引における調達先割合

国産の加工・業務用野菜について、契約取引における調達先割合を調達数量ベースで質問した。

全体の平均値では、「農協・経済連(JAの部会を含む)」が24.2%で最も高く、次いで「卸売業者」(20.8%)、「生産者(法人)」(16.7%)、「生産者(個人)」(14.7%)などとなっている(図6)。

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市場法により調達先が制限されている仲卸業者以外の業態は、産地(生産者(個人・法人)、農協・経済連)からの調達割合を高くし、安定調達と調達コストの低減を図っていることが見て取れる。

【ヒアリングでの主な回答】

・産地との契約取引の割合を高めたいが、昨今の天候不順を背景として契約割合が低下傾向にある。

・契約の相手方である生産者(個人・法人)を探すよりも、既に契約実績があって信頼できる生産者との契約数量を高めたい。

・生産者には任意組合を組織してもらうが、生産出荷計画の確認や目ぞろえ会などを行うばかりでなく、互いに生産力を意識し合う場ともなっており有効である。

・契約の相手方である生産者を探し出しても、品質的・数量的に安定するまで時間とコストがかかるため、それよりはJAを通じた契約の方が、生産資材の調達、栽培・品質管理、配送の手配などで信頼でき即効性がある。

(4)加工・業務用野菜の加工・販売

ア 加工・業務用野菜(原体)および一次加工・最終加工製品の販売先

「量販店・食品スーパー」(53.2%)が最も高く、次いで「外食・中食事業者」(50.2%)、「給食事業者」(41.1%)、「弁当・惣菜事業者」(30.4%)の順になっている(図7)。

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業態別に見ると、卸売業者は「カット野菜製造業者」、「一次加工業者」の割合が全業態の中で最も高く、原材料供給の面で大きな役割を果たしていることが見て取れる。

仲卸業者は、「量販店・食品スーパー」、「外食・中食事業者」、「給食事業者」が50%前後で並んでいる。特に「給食事業者」は全業態の中で最も高い。

問屋・商社等は、「外食・中食事業者」が全業態の中で最も多い。

カット・野菜加工事業者は、主に最終製品の販売先として「量販店・食品スーパー」(80.9%)が最も高く、「コンビニエンスストア」も全業態の中で最も高い。加工品の販売先として「弁当・惣菜事業者」や「病院・介護施設」の割合も全業態の中で最も高い。

イ 契約取引の内容

販売先との契約取引の内容のうち、価格と納入量について見ると、「価格だけを決め、納入量は販売先からの指示による」が54.9%で最も高く、次いで「1ヵ月分の納入量と価格を決めている」(27.4%)、「日々の納入量と価格を決めている」(26.3%)、「1週間分の納入量と価格を決めている」(21.1%)の順になっている(図8)。

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「価格だけを決め、納入量は販売先からの指示による」は、卸売業者を除く業態で最も割合が高くなっている。

業態別に見ると、卸売業者は、「1ヵ月分の納入量と価格を決めている」割合が最も高いものの、他の取り組みについても40%前後のものが多く、販売先に応じて柔軟な契約を行っていることが見て取れる。

仲卸業者は、「日々の納入量と価格を決めている」割合が全業態の中で最も高く40%を超えており、その販売先には、多様な小規模事業者も多く含まれていると推察される。ただし、この取引割合は、仲卸業者だけでなく卸売業者においても39%と同じように高いことから、卸売業者の売買参加者への販売を含め、多様な規模の業種・業態の事業者への販売という、卸売市場の集・分荷面での特徴を反映したものともいえる。

問屋・商社等は、「その他」が全業態の中で最も高く、さまざまな内容の契約取引が行われているものと思われる。

カット・野菜加工事業者は、「価格だけを決め、納入量は販売先からの指示による」(82.9%)が非常に高くなっている。これは、製造したコンシューマーカット野菜(小袋、パック)が「量販店・食品スーパー」に最も多く販売されている(80.9%)ためと考えられる(図7)。

ヒアリング調査からは、販売先との契約内容の決め方は、販売先によってさまざまであり、数量は日々変動または一定期間固定であったりする。価格も1キログラム当たり、1ケース当たりなどとなっていることが明らかになった。

価格の改定・見直しについては、市場価格が高騰した場合には見直しをしてもらえることもあるが、コンシューマーカット野菜(小袋、パック)の場合には、小売価格が固定されているために見直しが難しいとする中間事業者が少なくなかった。また、野菜の供給形態(原体、加工品)や販売先規模(大企業、中小企業)により価格の改定・見直しの対応に差異が見られた。

不作により野菜価格が高騰すると、家計消費用野菜(原体野菜)の消費が減少する一方で、小売価格が固定されているコンシューマーカット野菜(小袋、パック)が代替品として消費が増加するため、小売業者からカット・野菜加工事業者に対する発注数量が増加する。カット・野菜加工事業者は、不作で契約野菜の調達が計画通りにいかない中、納品義務を果たすため市場で高騰した野菜を調達せざるを得なくなるが、販売先への納品価格は固定されているため、生産すればするほど損失が拡大し、経営的に非常に厳しい局面に置かれるとの回答もあった。

また、不作で国産野菜の流通量が減少している場合であっても、消費者の安全・安心志向に応えようと、小売業者から中間事業者に対して国産使用のオーダーが入るため、簡単に輸入品に切り替えることは難しいとの意見や、仮に輸入に切り替えようとしても、予約なしでの緊急措置はコスト的・品質的に厳しいなどの意見があった。

4 おわりに-次回調査に向けて

国産加工・業務用野菜の生産振興・安定供給を図っていく上で、中間事業者の果たす機能が重要視されているが、その全体像は、必ずしも明らかにされているとは言い難いことから、平成28年度の調査では、野菜または野菜の加工品を取り扱っている流通事業者・加工事業者などを対象に中間事業者を特定することに主眼を置いたアンケート調査を実施するとともに、アンケート調査では把握が困難な事項についてヒアリング調査を実施した。

農林水産省は、平成20年10月に、「加工・業務用野菜の生産・流通対策の方向性~「中間事業者」の機能を活用した流通経路の構築に向けて~」を公表した際に、中間事業者としての機能を例示しているが、今般のヒアリング調査では、不作時などでも安定調達ができるように自らが農業参入する事例や、独自に開発した肥料による土づくり、繁忙期などにおける農作業支援、大型冷蔵庫を備えた貯蔵、最終製品(コンシューマーカット野菜(小袋、パック))の生産、自社生産した珍しい品種の外食などへの販売促進、理化学分析(残留農薬検査、土壌診断、栄養成分評価など)など、新しい取り組みを確認することができた。また、今般のアンケート調査により加工・業務用野菜の調達・販売の大まかな流れを把握することができた。

わが国の食料消費は、年齢や所得、家族構成といったデモグラフィック(人口動態)要因に加えて、趣味やライフスタイル、パーソナリティーなどのサイコグラフィック(心理的動態)要因の影響を受けて、消費者の食に対する志向は多様化するとともに変化のスピードは早まっている。このような消費者と直面する小売業者などの川下と、川上の生産者の中間に位置する中間事業者に対しては、川上・川下の双方から求められる機能・役割が多様化しており、川上・川下双方の要求に応えるための取り組みが創出されているものと考えられる。

平成29年度調査では、中間事業者の取り組みを推進する上での課題を明らかにするため本調査により特定した中間事業者に対して、どのようにしてリスクを負担しているかなど深掘りしたアンケート調査を実施するとともに、アンケート調査では把握が困難な事項についてヒアリング調査を実施して、その結果を国産加工・業務用野菜の生産振興に係る契約野菜安定供給事業などの検証や円滑な推進に役立てることとしたい。

なお、今回報告した「加工・業務用野菜の需要構造実態調査」の詳細な調査結果については、当機構ホームページ(http://www.alic.go.jp/content/000138431.pdf)に掲載してあるので参照願いたい。



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