野菜業務部直接契約課
【要約】
平成29年3月7日、当機構は野菜流通カット協議会との共催により、第28回加工・業務用野菜産地と実需者との交流会(通称:国産野菜の契約取引マッチング・フェア)を、東京国際フォーラムにおいて開催した。全国各地から多彩な111の事業者・団体が出展し、また、加工・業務用野菜の機械化一貫体系に関するセミナーが併せて開催された。
野菜の全需要量に占める加工・業務用需要の割合は、昭和50年ごろは4割程度であったが、食の外部化の進展などにより、平成22年には6割近くまでに増加している。
一方、国産野菜の供給は、過半が家計消費用に仕向けられており、今後とも増加が見込まれる加工・業務用需要に対する国産野菜の安定的な供給体制を確立することが重要となっている。
このため、当機構では、平成18年度から野菜流通カット協議会との共催により、国産野菜の契約取引マッチング・フェアを開催しており、平成29年3月7日、第28回目のマッチング・フェアを東京国際フォーラム(東京都千代田区)において開催した(写真1)。
主催者を代表して当機構 宮坂理事長からの挨拶と、来賓としてお越しいただいた農林水産省生産局 鈴木生産振興審議官から祝辞を頂戴した後、鈴木審議官、有限会社佐野ファーム 佐野代表取締役、農業生産法人有限会社新福青果 新福代表取締役、野菜流通カット協議会 木村会長、宮坂理事長によるテープカットが行われた(写真2)。
今回は、111の事業者・団体(生産者団体5、生産者44、流通業者22、加工業者11、種苗会社16、植物工場7、その他6)が出展し、北海道から鹿児島まで全国から多彩な参加者が顔をそろえた。多数の来場者(1204名)を迎える中で、各ブースや商談スペースでは、商談が盛んに行われた(写真3)。
以下、いくつかの出展者の概要を紹介する。
専業的に農業経営を行う農業法人などにより組織された事業協同組合で、平成15年から活動している。現在、北海道から九州までの24者の組合員で構成されており、北海道、群馬県および山梨県にある3カ所の集出荷貯蔵施設などを活用して、農産物の産地リレーによる共同販売を行っている。出展ブースでは、同組合の取り組みが紹介されるとともに、同組合員が高知県で生産した野菜(写真左の長なす、しょうが、パプリカなど)や、山梨県北杜市で生産した野菜(写真右のにんじん、トマト、だいこん、やまといも、菊いも、干しいもなど)が展示された(写真4)。
「じゃがいもの女王・メークイン」の発祥の地として有名な道南の厚沢部町において、まいたけ、生きくらげなどを栽培している。環境への配慮から、栽培に欠かせない温度・湿度の管理に使う大型ボイラーの燃料として、栽培で使用した菌床や、地元厚沢部町で作られている間伐材の残材を原料にした燃料ペレットを有効利用している。また、新設した江差工場では、天然温泉の温泉熱を利用した温度管理により、ボイラーの稼働率を下げ、二酸化炭素の排出量を大幅に抑えている。出展ブースでは、同工場で栽培したえぞまいたけや生きくらげ、まいたけの加工品などが展示された(写真5)。
県北部にある舟形町に61の栽培舎を持ち、年間1450トン以上のマッシュルームを栽培している。馬厩肥(麦わら)を主原料とする植物性培地を100%使用して生産しており、JGAP認証、JAS認証の取得により、トレースが可能となっている。温度・湿度などを徹底管理し、年間を通して安定供給できる体制を実現している。また、ファーム内に完備されたマッシュルーム加工商品の製造工場は、山形県のHACCP導入型基準実施事業所に認証されている。展示ブースに展示されたスーパージャンボマッシュルームは、通常の約10倍で直径13~15センチと大きいが、味は小さいサイズのものと同じだという(写真6)。
志布志市にある農業生産法人で、展示ブースに展示されたキャベツ、ピーマンなどのほか、ケール、ばれいしょなども生産しており、その全量が契約栽培である。また、牧草飼料としてデントコーンを栽培し、サイレージにして畜産農家に供給している。これら主力分野の他に、農業経営IT化のために農業工程管理システムを開発し、土育てから収穫まで全工程をマニュアル化するとともに、作業の進行状況をデジタルカメラで撮影、保管して情報を一元管理し、組織内で情報共有することで、栽培の効率化や作物の安定供給に役立てている(写真7)。
北海道から沖縄まで全国各地の生産者と連携して有機野菜・機能性野菜の販売を行っている。ばれいしょ(北海道産)、大葉(茨城産)、ミニトマト(三重産)、ピーマン(沖縄産)など、取り扱っている品目が多数展示された。同社は、栽培が難しい非農薬および有機栽培に積極的に取り組む生産者をサポートするとともに、安心・安全な野菜の重要性を訴求することで、「安全野菜」の流通促進に努めている。生産者が、安定した複数の販売先を確保するために奔走することなく野菜生産に専念できること(生産基盤の確立)と、食の安全という本来あるべき姿を消費の現場(店頭)で実現すること(流通基盤の確立)を、有機的に結びつけ具現化することが使命だと考えている(写真8)。
野菜などを微生物で発酵して、機能性を高めた野菜発酵エキスの開発、販売をしている。この野菜発酵エキスを原料として加えることにより、新たな機能性を有する食品や飲料の開発ができる。商品開発の際に付加価値化や他商品との差別化を図ることができるため、6次産業化や農商工連携を検討している企業などから同社へ開発依頼が多くある。出展ブースでは、同社が開発した発酵エキスや乳酸菌、食物繊維が含まれた粉末が配布され、多くの来場者が手に取っていた(写真9)。
トマト、かぼちゃ、スイートコーン、メロン、すいかなどを中心に品種改良を行う種苗メーカーである。展示ブースでは、裂果が少なく食味がよい大玉トマト(ひなた)、甘味が強くて貯蔵性が高いかぼちゃ(くりゆたか7)、高収量で黒葉枯病に強いにんじん(クリスティーヌ)、耐寒性が強くて厳冬期でも葉の黄化や枯れが極めて少ないねぎ(冬の宝山)などのほか、ビーツ、スイスチャード、ロメインレタス、紫キャベツなど彩り鮮やかな野菜が工夫を凝らして立体的に並べられ、多くの来場者が足を止めていた(写真10)。
農林水産省の次世代施設園芸導入加速化支援事業の愛知県拠点として豊橋市に整備された植物工場で栽培したミニトマトが展示された。この植物工場では、浄化センターから出る放流水の熱エネルギーを温室暖房に活用し、化石燃料使用量の3割以上の削減に取り組んでいる。また、高度な環境制御技術により、高品質な競争力のある農産物を周年で計画的・安定的に販売を行うため、3.6ヘクタールの工場を3区画に分けて栽培している。鮮やかな赤色のミニトマトはリコピン、オレンジ色のミニトマトはカロテンといった機能性成分を豊富に含んでいる(写真11)。
セミナー会場において、機構担当者から、野菜の契約取引における生産者リスクを軽減するために実施している契約指定野菜安定供給事業および契約野菜収入確保モデル事業の説明を行った。続いて、農林水産省担当者からは、野菜のリレー出荷に取り組み6次産業化法の認定を受けた生産者が、契約指定野菜安定供給事業(数量確保タイプ)へ参加できるなどの特例措置について説明を行った(写真12、13)
また、同会場では、野菜流通カット協議会主催の「野菜産地と実需者によるセミナー」が開催され、約120名の参加があった。はじめにテーマⅠ:「加工・業務用野菜/キャベツ・白ねぎなどの機械化一貫体系について」と題してヤンマー株式会社 アグリ事業本部 顧問 宮永 豊司 氏からの話題提供の後、テーマⅡ:「加工・業務用野菜/にんじん・たまねぎなどの機械化一貫体系について」と題して井関農機株式会社 アグリインプル事業部 課長 福村 善宏 氏から、テーマⅢ:「野菜収穫機 開発の経緯~乗用型ほうれんそう自動収穫機を中心に~」と題して松元機工株式会社 設計開発部 取締役部長 西牟田 昭人 氏から、テーマⅣ:「加工・業務用野菜/白ねぎの調製機などについて」と題して株式会社マツモト 代表取締役社長 松本 穣 氏から、それぞれ青果物の機械化一貫体系や収穫機、調製機について話題提供があった。
その後、既存の刈り取り機のアタッチメントを代えることによる大豆苗の摘芯作業への応用の可否、ねぎの皮むき機から発生する音による人体(聴力)への影響、青ねぎや葉物類の収穫機に結束や梱包機能を付加することの可否などについて活発な質疑応答がなされ、参加者は熱心に耳を傾けていた(写真14、15)。
加工・業務用野菜に対する産地側、実需側双方のニーズの高まりを受けて、平成18年度から開催しているマッチング・フェアは毎回好評を得ている。第28回目となる今回は、過去3番目に多い1204名の方にご来場いただき、大変盛況であった。来場者へのアンケートでは、役に立ったとの回答が85%を占めるなど高い評価をいただいており、今後も引き続き、産地と実需者とのマッチングの場を提供していくこととしている。
最後に、本マッチング・フェアを開催するに当たり、出展者や来場者の募集、周知などに多大なご協力を頂いた関係者の皆様方に、この場を借りて厚く御礼を申し上げたい。
日本ブランド農業事業協同組合、愛知県経済農業協同組合連合会、東近江市フードシステム協議会、高知県園芸農業協同組合連合会、鹿児島県経済農業協同組合連合会
有限会社渋田産業、株式会社北海道サラダパプリカ、ファームちば家、株式会社小坂農園、有限会社氏家農場、さわのはな倶楽部、合同会社大蔵わさび、株式会社最上まいたけ、有限会社舟形マッシュルーム、株式会社ハラキン、株式会社Tedy、株式会社いばらき農流研、有限会社アクト農場、株式会社野菜くらぶ/グリンリーフ株式会社、川越いも農場 島田屋総本家、株式会社旦千花、三菱化学株式会社、株式会社スギヨファーム、有限会社グランジャ、株式会社ミスズライフ、有限会社トップリバー、有限会社橋場農園、有限会社佐野ファーム、静岡農業技術支援協同組合、株式会社鈴生、Always株式会社、こと京都株式会社、アイ・エス・フーズ株式会社、株式会社山本きのこ園、有限会社エーアンドエス/JA倉敷かさや笠岡営農センター、株式会社尾野農園、百姓百品株式会社、朝倉物産株式会社、薬院バジルファクトリー、農事組合法人ドリームマッシュ、株式会社弥冨農園、株式会社春口農園、農事組合法人サンエスファーム、坂上農園、農業生産法人 株式会社吉次園、有限会社コウヤマ 芋屋長兵衛、農業生産法人 有限会社新福青果、農業生産法人 株式会社さかうえ、Nファーム、株式会社オキス
有限会社丸富青果、株式会社北彩青果、有限会社自然館、有機ライフ土と食の会、有限会社サンワアグリビジネス、株式会社あらき、株式会社オーガニック・ヘルス・コミュニケーションズ、ナラサキ産業株式会社、株式会社創風土、株式会社オリザ、地養菜協会、リッチフィールド株式会社、野菜株式会社、飯山中央市場株式会社、株式会社トレード 京野菜ブランド 洛市、株式会社グリーン・ウィル、ハートファーム株式会社、株式会社ブレスト、クラカグループ 倉敷青果荷受組合、愛媛うまいもの販売株式会社、株式会社クロスエイジ、MASTER-FOOD (有限会社マスターフード)、株式会社ニチレイアグリ
明陽食品工業有限会社、株式会社せき、株式会社健食、有限会社インターナショナル プロダクト、ジャパン・イマジネーション・フーズ株式会社、富士食品工業株式会社、サンポー食品株式会社、株式会社LIKE TO DO JAPAN製薬、株式会社mamato、株式会社浜松ベジタブル、遠赤青汁株式会社
株式会社渡辺採種場、株式会社トーホク、カネコ種苗株式会社、トキタ種苗株式会社、みかど協和株式会社、住化農業資材株式会社、パイオニアエコサイエンス株式会社、株式会社武蔵野種苗園、横浜植木株式会社、株式会社サカタのタネ、株式会社増田採種場、タキイ種苗株式会社、丸種株式会社、ナント種苗株式会社、株式会社大和農園、株式会社久留米原種育成会
株式会社誠和(トマトパーク事業部)、有限会社アーバンファーム、日本リノ・アグリ株式会社、JFEライフ株式会社、小林クリエイト株式会社、東海運株式会社 AZUMA FARM 三重、オリックス株式会社
株式会社つくば分析センター、愛知豊橋次世代施設園芸推進コンソーシアム 愛知県拠点、南国興産株式会社、野菜流通カット協議会、独立行政法人農畜産業振興機構
※出展者の詳細情報については、機構HP上の「交流会コーナー/野菜契約取引マッチング・ゲート」をご参照ください。
URL:http://www.alic.go.jp alic交流会 で検索