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(野菜情報 2014年10月号)

今月の野菜

産地紹介:宮崎県 JA串間市大束くしましおおつか
~おいしく、美しい
 「やまだいかんしょ」~

串間市大束農業協同組合
営農課指導係 森 一真

産地の概要

 JA串間市大束(以下、「JA」という。)は、宮崎県の最南端に位置(図1)する串間市の北部、旧大束村を管内としており、年間を通して温暖な気候に恵まれた地域である。北は都城市、北東は日南市、南郷町、東は日向灘、西側は鹿児島県と県境をなす山や丘陵地帯が広がっており、管内は、福島川と大平川にはさまれた大束原台地を有し、台地は火山土壌で形成され、県内最大のかんしょの生産地となっている。

 また、串間市は自然との共存を大切にし、天然記念物である野生のニホンザルや日本在来馬の一種である御崎馬みさきうまを育んでいる地域でもあり、かんしょのほかに金柑、マンゴー、きゅうり、ピーマンなどの栽培が盛んな地域でもある。

 管内で栽培されるかんしょは、「やまだいかんしょ」と呼ばれ、全国でも有数な産地となっている。現在は、生産者の高齢化が進んでいるが、平成24年に稼動したJA串間市大束支援センター(以下、「支援センター」という。)も活用し、安定した栽培・出荷体制をめざし、支援センターからの月100トンを含む、月1200トンをJAの目標として出荷している。

 かんしょについては、生育期間が約4カ月ながらも、貯蔵ができることから年間を通して出荷でき、また将来的にも期待できる品目であることから、活発に栽培されている。

やまだいかんしょとは ~同じいもなら大束のかんしょ~

 JAでやまだいかんしょの栽培が、本格的に始まったのは昭和41年。農家の所得向上を目指し、2ヘクタールの試作からスタートした。それまでは、でん粉原料用かんしょと小麦の生産が主だったが、35年の輸入自由化により大打撃を受けたことから、県の方針として、青果用かんしょの生産が推奨された。管内の清水集落のリーダーである内田邦雄氏をはじめとした生産者たちにより、40年に栽培を始め、出荷時期や販売方法などの模索を経て、翌41年から本格的に栽培を開始した。生産者、JAおよびJA宮崎経済連との連携体制を整え、それにより生産者も増加した。当時、かんしょの売り上げが良かったことから、かんしょはこの地域では、赤ダイヤと呼ばれ、今日までその名で呼ばれている。

 やまだいかんしょのブランドロゴ(図2)は、前述の生産者の内田邦雄氏が考えたもので、大束地区の「大」に、周囲の山々が配されている。

 山に囲まれた大束地区は、温暖多雨な気候に恵まれ、良質なかんしょができることから、やまだいかんしょの名前は各方面に浸透し、現在、品質、量、価格などから見ても、ブランド品と呼ばれるようになった。安定した良品の供給は、「土づくり」「苗づくり」「芋づくり」のほか、「適期収穫」「規格を厳守した選別」「栽培記録」などを行うなど、これまで生産者たちが情熱を注いで徹底してきた栽培と環境基盤との連携体制のたまものである(写真1、2)。

やまだいかんしょが市場に届くまで

 苗の定植は、JAの育苗センターでのウィルスフリーの苗を利用して、南国の温暖な気候の下、1月から6月に行う。収穫は、5月ごろの超早掘りから始まり、11月いっぱいまで続く。低温貯蔵することで周年出荷され、関西を中心に、名古屋、九州などに仕向けられ、平成25年の販売量は、1万4000トン、販売額は21億円となり、JAは、宮崎県のかんしょ販売の、約8割を占める。

 品種は、宮崎紅、高系14号で、鮮やかな紅色と、ほくほく感が特徴である。JAの園芸部会は、かんしょの生産者だけで構成されており、現在会員数197人で、栽培面積は600ヘクタール、1人当たり平均栽培面積3ヘクタールとなっている。

支援センターの取り組み

 繁忙期の人手不足、周年出荷体制を補完する目的で立ち上げられた支援センターでは、かんしょの規格の選別や箱詰めなどが行われ、1月当たり50~90トンの出荷を行っている。支援センターでは、下記の②~⑤までの作業を生産者から請け負っている。支援センターとしては、地域雇用の創出という点でも、串間市や宮崎県からも支援を受けつつ、今後も栽培面積を維持し、安定供給の体制を確立していくこととしている(写真3、4、5)。

生産者の思い
~かんしょづくりの歴史と知恵をつなぐ~

 JAでの生産が本格的に始動してから、より良い品質のかんしょ作りはもちろん、そのための環境づくりなどさまざまな取り組みを経て、現在のやまだいかんしょのブランドが成り立っている。

 そうした産地の誇りや財産を守り、これからも生産を継続していくためには、生産農家を増やすことも大きなテーマである。大束地区でも、後継者問題は懸念材料のひとつではあるが、一方で、元気な若手世代が育ってきているのも事実である。

 青年部や女性部では、地域の方や小学生を対象に芋堀り大会や、世代を超えた意見交換会を不定期ながら行っている。こうした活動を通じて、今以上に品質の高い、より一層の評価を受けるやまだいかんしょのブランド作りへとまい進している。

海外への取り組み
~小さいからおやつに最適。しかも安心~

 串間市大束で生まれ育ち、九州管内ではブランドを確立しているやまだいかんしょだが、全国的に見ると関東や関西にまで広く出荷され、流通量も多くなったことで、各地で台頭するブランド産地との価格競争に徐々に苦しむこととなった。

 しかし、串間市の一地域だけで600ヘクタールという他産地に比べ広大な栽培面積を持つ中にあって、安定した生産量を守っていくためには、次の手立てを打たなければ生き残れない。そこで新たな販路拡大のきっかけになったのが、「中華圏では、日常的に小さな芋をおやつとして食べる」という取引先の一言であった。

 JAでは、平成15年に国内では需要の低い、小さいサイズのものを香港に輸出することとした。香港では、炊飯器の蒸しケースにそのまま入れ、ふかして食べるのが主流だったため、需要が拡大し、台湾、シンガポールへの輸出を含め、今では年間約380トンもの量を輸出するようになった。

 今後ともJAでは、高品質なやまだいかんしょを国内外に向けて出荷していきたい。

一言アピール

 JA串間市大束は、宮崎県のかんしょづくりの中心地として、長年技術を積み上げてきた産地である。今後も高品質生産を行い、歴史ある「やまだいかんしょ」を、国内外の多くの消費者に届けるべく、周年出荷を行っているところである。
鮮やかな紅色と、ほくほく感が特徴で、甘味があり、栄養たっぷりのかんしょをぜひご賞味いただきたい。

お問い合わせ先

串間市大束農業協同組合
住所:〒889-3531 宮崎県串間市大字奈留5237-1
TEL:0987-74-1101 FAX:0987-74-1072
http://yamadai.ja-miyazaki.jp/

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