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(野菜情報 2013年10月号)

北海道 JAおとふけのにんじん生産


~鮮度を保持するための「コールドチェーン」~



音更町農業協同組合 販売部青果課 山岸 晃雄



 

産地の概要

 音更おとふけ町は北海道の東部、十勝平野のほぼ中央にある農業を基幹産業とした人口4万5000人の町である。
 東部の南北に走る長流枝内おさるしない丘陵を除いては、おおむね平坦で、音更川を中央に士幌川、然別しかりべつ川と3本の河川が町域を縦断し、いずれも十勝川に合流する。町域は、東西に28キロメートル、南北に32キロメートルに広がり、総面積は、466平方キロメートルとなっている。
 音更町の耕作面積は約2万750ヘクタールである。音更町を管内とするJAは、JAおとふけとJA木野がある。そのうちJAおとふけの耕作面積は1万8400ヘクタール、生産者戸数588戸である。主要畑作物の小麦、てん菜、豆類およびばれいしょで1万4700ヘクタールと全体の80パーセントを占め、道内でも屈指の穀倉地帯である。特に、小麦は市町村別作付面積で全国第1位の面積を誇っている(平成24年度農林水産省統計)。

 にんじんについては、以前から北海道のクリーン農産物表示制度「Yes!Clean」(農薬および化学肥料の使用を低減することを目的に、北海道立農業試験場が開発した「クリーン農業技術」を導入して、慣行栽培と比較して、農薬および化学肥料の投入量を削減した農産物の表示制度)登録のにんじんを生産し、現在もにんじん作付面積の約4パーセントに当たる、約15ヘクタールで作付している。
 にんじんの面積が飛躍的に伸びたのは、平成18年からJAが取り組んでいる「作業受委託方式」によるもので、これにより、にんじんの総作付面積は、平成25年産で421ヘクタール、生産者数は、同年産で142戸となった(Yes!Cleanにんじんを含むJA取扱面積・戸数)。

作業受委託にんじんとは

 通常、作物の生産方法は、畑の耕起(整地作業)から播種、ほ場管理、収穫作業に至るまで、生産者自らが作業を行うのが基本である。にんじんの場合も同様で、Yes!Clean栽培をしているにんじんは、機械も各生産者で保有し、生産を行っている。
 しかし、作業受委託にんじんは、播種、被覆資材の掛け剥し、培土、収穫、収穫後の運搬といった作業を、JAが生産者から受託し、生産者の代わりに作業を行うというものである。JAが機械を保有し、作業を受託することにより、生産者は、労力の軽減だけでなく、機械導入および維持管理コストが掛らず、にんじんの播種や収穫等に費やす時間が、他作物の播種や定植、収穫作業に当てられるため、より一層、他作物の適期作業、適期収穫が出来るようになる。
 JAが所有している主な機械は、播種に使用する大型トラクターが5台で、トラクターのアタッチメントとして、播種機も5台保有。自走式カルチ(培土を行うもの)も5台保有。また、自走式収穫機は22台保有している(平成25年度現在)。

栽培の流れ

①播種前契約の締結

 作業受委託にんじんの準備は、前年の夏から開始される。生産者は、前年8月に作業受委託方式による、にんじんの作付申込みを行ない、作付予定ほ場から、施肥設計等のために土壌分析する土を採取して、JAへ提出する。
 JAは、翌年1月に土壌分析の診断結果を基に作付予定生産者と面談を行ない、施肥量、播種時期等の確認をし、JAと生産者の間で播種前契約を締結し、JAは播種計画を策定する。

②JAによる播種作業

 播種作業は、4月下旬から開始し、7月上旬で終了する。生産者が計画に基づいた時期に耕起、整地および施肥を行ない、準備ができればJAが所有する播種機で播種を行う。JAは、播種計画に基づき播種を行っていく。

③初期生育の管理作業

 播種作業と平行して、4月下旬から5月中旬に播種した畑には、地温上昇を促す被覆資材を掛ける。この資材は、生育を促すため、6月中旬頃まで掛けておく。
 葉が生い茂ってきたら、培土を行う。培土とはにんじんが生育しているところへ土を寄せることで、青首(にんじんの上部に直接日光が当り緑色に変色すること)を防止する。
 生産者は、生育中の防除および雑草管理・抽台ちゅうだい抜きを行う。この作業はにんじんの生育や収穫効率に大きく影響し、とても重要な作業となる。

④生育終盤の管理作業

 生育終盤になると、JAが生育調査および残留農薬検査を実施する。残留農薬検査は、最後の防除が終了した段階で、ほ場からにんじんをサンプル採取し、検査機関へ提出する。検査結果が安全であることを確認してから、収穫を行う。

⑤収穫作業

 収穫は7月下旬から開始され、11月上旬までの約100日間行う。JAが保有する、22台のクローラータイプの自走式収穫機が、日々4ヘクタール程度収穫していく。余程の悪条件でない限り、収穫作業は実施され、収穫されたにんじんは、速やかに(1時間以内)撰果場まで搬入される。

撰果の流れ

 撰果場へ搬入されるにんじんは、1日当り約200t。収穫したにんじんは、翌日へ持ち越さず、その日のうちに撰果される。撰果時間は、午前7時から午後10時までで、2交代制で実施している。
 撰果の手順は以下の通りである。

①荷受水槽

 持ち込まれた原料は、まず荷受水槽に投入する。水槽の利点はにんじんを冷やすことと、にんじん投下時の衝撃を和らげ、傷や折れの発生を防ぐことである。

②1次撰別

 荷受水槽で土砂を落とした後に、1次撰果を行う。1次撰果では商品にならない規格外品を取り除く。

③洗浄

 1次撰果後、にんじんを洗浄する。洗浄機の専用ブラシの中で、にんじん同士が擦りあい、表面についている甘皮を取り除き表面につやを出す。甘皮はにんじんが乾いた時、表面に白く残り外観評価に影響を与えるので、綺麗に取り除く。

④冷却水槽

 洗浄後、冷却水槽に入れにんじんを冷やす。製氷機で作った氷を利用して、水温は7度前後を保つようにしている。

⑤2次撰別

 冷却後、2次撰別を行う。ここでは、生食用として販売する「A品」、加工用として販売する「B品」および「加工品」に分ける作業を36名体制で行う。

⑥規格分け

 人間の手により撰別した後、赤外線センサーを使用して、2LからSの規格に分けられる。規格別に分けられたにんじんは、段ボールに箱詰めされる。

⑦真空予冷

 段ボールに入ったにんじんは、真空予冷機で芯温が3度になるまで冷やされる。
 真空予冷機は、水が蒸発する時に、周囲の熱を奪い温度を下げる理論(気化熱)を応用した予冷機で、機械の中を減圧し真空に近い環境を作ることにより、にんじんに付着している余分な水分を低温で蒸発させる。これにより、にんじんから熱を奪うので、芯まで効率良く冷やす事ができる。

⑧コールドチェーンの実施

 真空予冷後、3度で管理された低温庫で保管し、翌日には全国へ出荷される。輸送に使用するトラックも保冷車を使用し、荷室内は3度で温度管理されている。
 このように、JAおとふけ産のにんじんは、コールドチェーンを確立することで、にんじんの劣化を最小限に抑え、鮮度を保つことで、高い市場評価を得ている。

一言アピール
 
 にんじんは、カロテン(ビタミンA)、カリウム、鉄、リンを豊富に含み、ビタミンB1、B2、Cも少量含まれている。カロテンには、細菌に対しての免疫力を高める作用があり、風邪の予防効果があるといわれ、非常に体に良い野菜である。
 北海道の十勝地方で、にんじんを収穫できるのは1年間のうち、7月下旬から11月上旬の約100日間のみである。JAおとふけは、その限られた期間で、日々、高鮮度、高品質のにんじんを出荷することに努めている。JAおとふけ産のにんじんは、北は地元北海道から、南は九州と、日本全国へ出荷されている。スーパー等で、JAおとふけ産のにんじんを見かけた際は、お手にとって頂ければ幸いである。

問い合わせ先
 
音更町農業協同組合 販売部青果課
北海道河東郡音更町大通5丁目1番地
TEL 0155-42-3021
FAX 0155-42-3064
E-mail:teruo.yamagishi@otofuke.a-hokkaido.gr.jp

 
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