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今月の野菜 野菜情報 2025年3月号

ほうれんそうの需給動向

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調査情報部

主要産地

タイトル: p029


 緑黄色野菜の王様と言われる「ほうれんそう」の原産地は西アジアで、波稜(ほうれん)とはペルシャを意味し、ペルシャで栽培が始まりその後東西に伝播(でんぱ)した。ヨーロッパへ伝播しオランダで品種改良が進み丸葉となった「西洋種」と、東方の中国に伝播し、葉に切れ込みのある剣葉の「東洋種」の2種に大きく分類される。日本には東洋種が渡来し、元禄(げんろく)時代の井原(いはら)西鶴(さいかく)の「浮世(うきよ)草子(ぞうし)」に「ほうれんそうのおひたし」として登場している。西洋種は幕末から明治時代にかけ伝来し、現在は両者の交配種であるF1品種(一代雑種)が主流となっている。また、生食用に品種改良されたあくの少ないサラダほうれんそうなども流通している。

作付面積・出荷量・単収の推移

 令和5年の作付面積は、1万8700ヘクタール(前年比98.9%)と、前年に比べてわずかに減少した。
 上位5県では、
●群馬県  2000ヘクタール(同 100.5%)
●埼玉県  1680ヘクタール(同 95.5%)
●千葉県  1620ヘクタール(同 95.3%)
●茨城県  1340ヘクタール(同 100.8%)
●岐阜県  1190ヘクタール(同 103.5%)
 となっている。

タイトル: p030a
 
 令和5年の出荷量は、17万7100トン(前年比98.9%)と、前年に比べてわずかに減少した。
 上位5県では、
●群馬県  2万  300トン(同 100.5%)
●千葉県  1万8400トン(同 96.8%)
●茨城県  1万7000トン(同 104.3%)
●埼玉県  1万7000トン(同 93.9%)
●宮崎県  1万3000トン(同 118.2%)
 となっている。

タイトル: p030b
 
 出荷量上位5県について、10アール当たりの収量を見ると、宮崎県の1.48トンが最も多く、次いで茨城県の1.41トン、千葉県の1.24トンと続いている。その他で多いのは、京都府の1.49トンであり、全国平均は1.11トンとなっている。
 
タイトル: p030c

作付けされている主な品種等

 先に日本に入ってきた東洋種は、春から夏に(ちゅう)(だい)(とう立ち)しやすいため秋まきしかできず、江戸時代までは旬である冬にしか出回らなかった。明治時代以降、抽苔しにくい西洋種が導入され、現在広く出回っているのは、東洋種と西洋種の一代雑種品種(F1交雑種)であり、播種(はしゅ)時期や産地をずらし、周年で出回るよう栽培されている。基本的には寒さに強い冬野菜で、寒さに当たると糖度が増すためハウスの側窓を開放し、あえて冷気に当てる「寒締め」により甘みをのせる栽培方法もある。

タイトル: p031a

東京都・大阪中央卸売市場における月別県別入荷実績

 東京都中央卸売市場の月別入荷実績(令和5年)を見ると、群馬産、茨城産、栃木産が通年にわたり見られ、11月~翌5月は埼玉産、千葉産など近郊産地からも入荷し、11月がピークとなっている。5~10月にかけては岩手産や岐阜産などの冷涼な産地からの入荷が見られる。気温が高くなる6月から入荷は徐々に減少し、8月に最も入荷数量が減少する。

タイトル: p031b
 
 大阪中央卸売市場の月別入荷実績(令和5年)を見ると、12月~翌3月にかけて福岡産、徳島産が大部分を占め、茨城産、群馬産、和歌山産、兵庫産なども入荷する。4月頃に産地が切り替わり、5~11月は岐阜産が多く入荷する。その他、茨城産、北海道産や、近隣産地から和歌山産の入荷もみられる。

タイトル: p032a

東京都中央卸売市場における価格の推移

 東京都中央卸売市場における生鮮ほうれんそう(国内産)の年間の価格推移を見ると、おおむね1キログラム当たり400円から800円の間で推移し、気温が上昇して入荷量が減少する7~9月にかけて高くなる傾向がある。例年は8月をピークとし減少傾向で推移する傾向がみられるが、令和5年は9月が最も高くなった。これは、高温・干ばつの影響により入荷量が減少し、絶対量の不足から価格が下がらず、平年を3割近く上回ったためである。

タイトル: p032b

輸入量の動向

 冷凍ほうれんそうの輸入数量は、平成28年の4万2500トンから、令和5年は5万1600トンと増加傾向にある。そのほとんどが中国産でありおおむね95%を占める。その他の輸入先では、イタリアが令和元年をピークに減少した一方、平成28年にはほとんど輸入のなかったミャンマーが年々増加しており、令和5年は台湾を抜いて中国に次ぐ2位となっている。

タイトル: p033a

ほうれんそうの消費動向

 ほうれんそうの1キログラム当たりの小売価格(東京都区部)の動向を見ると、令和3年に856円と最も低下し、その後、4年は939円、5年は1020円と上昇した。
 1人当たりの年間購入量は1000グラム前後で推移しており、令和3年の1030グラムが最も多かったが、4年および5年は減少している。
 ほうれんそうは、高い栄養素を含み、ビタミンK、葉酸、鉄が豊富に含まれるが、あく(灰汁)の素となるシュウ酸を多く含むため、ゆでこぼしなどであく抜きする必要がある。現在では、低シュウ酸の品種が育成されている。また、ほうれんそうは冷凍野菜のなかでも人気が高く、カットや下ゆですることなく調理できることから、野菜消費量アップのため、幅広く食生活に取り入れてほしい。なお、以下の記事において、冷凍しても栄養価の損失が少ないことを紹介しているので、ご参照いただきたい(https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/wadai/2408_wadai2.html)。