セルリー(セロリ)(以下「セルリー」という)は、にんじんやみつばと同じセリ科の野菜で、紀元前からヨーロッパの山岳地帯の湿地に広く自生していた。古代ギリシャやローマでは薬や香料として利用されるなど、薬用植物としての歴史が長く、ヨーロッパ南部で食用としての栽培が始まったのは17世紀に入ってからである。日本への渡来は16世紀末で、豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に加藤清正が持ち帰ったといわれている。その後の江戸時代に西洋種が入ってきたが、一般的に普及したのは、それからずっと後の食生活が洋風化した昭和30年代のことである。
茎葉の色の違いによって、セルリーは黄色種、緑色種、中間種、赤色種、白色種に大別される。日本では、サラダ需要の増加に伴い、肉厚で繊維が少なく香りもほどよい中間種が好まれ、現在では流通の大半を占めている。セルリーを加熱して食べることの多い欧米では、肉厚で香りの強い緑色種が主流であるが、日本でも本来の香りがする緑色種の消費が増加傾向にある。
セルリーの生育適温は15~20度であり、涼しい気候を好み、乾燥を嫌う野菜であるが、産地移動やハウス・トンネル栽培により、1年を通して出回っている。
平成27年の作付面積は、589ヘクタール(前年比98.0%)と、前年よりわずかに減少している。
上位5県では、
●長野県253ヘクタール(同98.1%)
●静岡県105ヘクタール(同98.1%)
●福岡県50ヘクタール(同94.3%)
●愛知県42ヘクタール(同100.0%)
●香川県12ヘクタール(同100.0%)
となっている。
27年の出荷量は、3万600トン(前年比94.7%)と、前年よりやや減少した。
上位5県では、
●長野県1万3400トン(同95.7%)
●静岡県6170トン(同89.8%)
●福岡県3230トン(同94.7%)
●愛知県2650トン(同101.1%)
●香川県726トン(同96.2%)
となっている。
特に静岡県がかなり減少しているが、定植時の台風の影響や、生育時の日照不足によるものである。
出荷量上位5県について、10アール当たりの収量を見ると、福岡県の6.81トンが最も多く、次いで愛知県の6.60トン、香川県の6.48トンと続いている。全国平均は5.48トンとなっている。
多くの産地で作付けされているコーネル619は、米国のコーネル大学で育成された、大株のものが多い中間種の代表的な品種である。また、トップセラーは、密植で小型に栽培されることが多い緑色種の代表品種である。
セルリーは、播種から収穫まで6カ月以上もかかり、病虫害対策や水・肥料の管理などに高度な栽培技術が要求されることから、産地が限られている。
東京都中央卸売市場の月別入荷実績(平成27年)を見ると、年間を通して安定した入荷となっている。冬から春にかけては静岡産を中心に福岡産、愛知産、茨城産などの入荷が見られ、夏から秋にかけては長野産が入荷量の80~90%を占めている。
大阪中央卸売市場の月別入荷実績(平成27年)を見ると、東京都中央卸売市場と同様に、冬から春にかけては静岡産を中心に福岡産、熊本産などの入荷が見られ、夏から秋にかけては長野産が主体の入荷となっている。また、年間を通して米国からの輸入も見られる。
東京都中央卸売市場の価格(平成27年)は、1キログラム当たり186~406円(年平均294円)の幅で推移している。価格の変動は年間を通して比較的少ないが、4月から5月ごろに高値となり、10月から11月ごろに安値となる傾向が見られる。
セルリーの輸入は大半が生鮮であり、平成27年は生鮮が7817トン、冷凍が26トンであった。生鮮セルリーは主に業務用として使用されているが、国産の不足分としてスーパーなどでも扱っている。21年に輸入量が減少したのは、厚生労働省の残留農薬検査において、米国産から基準値を超えるボスカリド(殺菌剤)が検出されたことによる。
国別輸入量を見ると、生鮮は米国が大半を占め、冷凍は中国が70%以上を占めている。
セルリーの供給量(収穫量+輸入量)を見ると、比較的安定しており、平成24年以降は4万トンを超える水準で推移している。
栄養面から見ると、セルリーはカリウムやビタミンK・C・B6などをバランスよく含む野菜である。カリウムは、体内の余分な塩分の排せつを促して血圧を下げるため、高血圧などの生活習慣病の改善に効果がある。ビタミンKには、けがや内出血を起こした際に止血する働きがある。また、セルリーの香り成分であるアピインは、精神を安定させる作用があり、イライラや不安感、不眠症などの解消に効果があるといわれている。
セルリーは、サラダや酢漬けのほか、スープやカレーなどを煮込む際に加えたり、きんぴらや肉などと一緒に炒めたりと、さまざまな調理法で風味と食感を楽しむことができる健康野菜である。