さといもの原産地はインド東部からインドシナ半島にかけての熱帯地方であり、生育適温は25~30度と、多日照で高温多湿が生育条件となっている。日本へは中国を経て縄文時代に伝わったといわれており、米よりも古い主食であったとも考えられている。
いもは茎が肥大したものであり、株の中心に親いもがあり、そこから子いもが分球して増える。子いもからは、さらに孫いもが分球して増えていく。そうしたことから、子孫繁栄の縁起物として、正月などのおめでたい日に食べられるハレの野菜としても知られている。
さといもは、子いも・孫いもを食べる子いも用品種、親いもと子いもを食べる親・子いも兼用品種、親いもを食べる親いも用品種に分類される。子いも用品種には土垂や石川早生、蓮葉芋、親・子いも兼用品種には八つ頭やセレベス、親いも用品種にはたけのこいもなどがある。このほかに、ズイキと呼ばれる葉柄を食べる葉柄専用品種もある。
また、新潟の五泉いもや福井の大野のさといも、静岡のえびいもなど、各地に形や食感が異なる多くの品種があり、伝統料理や郷土料理に欠かせない奥の深い野菜である。
平成27年の作付面積は、1万2500ヘクタール(前年比96.9%)と、前年よりやや減少している。
上位5県では、
●千葉県1490ヘクタール(同96.8%)
●宮崎県1230ヘクタール(同95.3%)
●埼玉県803ヘクタール(同100.2%)
●新潟県641ヘクタール(同98.5%)
●鹿児島県640ヘクタール(同89.4%)
となっている。
27年の出荷量は、9万7800トン(前年比92.0%)と、前年よりかなりの程度減少した。
上位5県では、
●千葉県1万5300トン(同100.0%)
●埼玉県1万2300トン(同101.7%)
●宮崎県1万800トン(同61.0%)
●鹿児島県6490トン(同88.8%)
●愛媛県5900トン(同92.8%)
となっており、宮崎県が天候不順などの影響で大幅に減少している。
出荷量上位5県について、10アール当たりの収量を見ると、愛媛県の2.18トンが最も多く、次いで埼玉県の2.16トン、千葉県の1.35トンと続いている。その他の府県で多いのは、大阪府(1.83トン)、栃木県(1.58トン)、奈良県(1.58トン)であり、全国平均は1.23トンとなっている。
品種としては、九州南部をはじめ全国的に作付けされている早生種の石川早生や、関東地方などに多い晩生種の土垂などがある。石川早生は粘質が強く、皮ごとゆでて食べる「きぬかつぎ」などに向いている。土垂は煮崩れしにくく、ホクホクした食感が好まれている。
愛媛農試V2号(伊予美人)は、蓮葉芋の一種である女早生の後継として開発された、肉質が滑らかで粘質が強い新品種である。
東京都中央卸売市場の月別入荷実績(平成27年)を見ると、8~9月は千葉産、10~12月は埼玉産、1~5月は千葉産および埼玉産の貯蔵ものの入荷が多い。6~8月は、鹿児島産および宮崎産の入荷が目立つ。秋から冬にかけて入荷量が増える傾向にあり、12月にピークを迎える。
大阪中央卸売市場の月別入荷実績(平成27年)を見ると、東京都中央卸売市場と同様に、入荷量は秋から冬にかけて増加する傾向にあり、12月にピークを迎える。年間を通してみると愛媛産および宮崎産が入荷の中心となっており、6~7月には鹿児島産、11~12月には福井産の入荷が目立つ。
東京都中央卸売市場の価格(平成27年)は、1キログラム当たり295~857円(年平均326円)の幅で推移している。1月から6月にかけては一定量の貯蔵ものが入荷するため、価格は比較的安定している。その後は上げ基調で推移し、再び入荷量が増える10月から12月にかけては、安定した価格を取り戻す傾向にある。
さといもの輸入量全体(生鮮と冷凍)を見ると、平成24年以降は減少傾向にあり、27年は前年比92.9%の3万5278トンとなっている。生鮮さといもは22年、23年と輸入量が増加したが、その要因として、国内の天候不順などの影響や業務用の用途の増加が考えられる。冷凍さといもの輸入量は、業務用向けとして増加傾向にあったが、24年をピークに25年以降は減少傾向となっている。
国別輸入量を見ると、ほぼ中国からであり、27年の生鮮では全体の99.5%、冷凍では99.9%を占めている。
さといもの1人当たり年間購入量は、調理に手間がかかることや食の洋風化などによってやや減少傾向にあり、平成25年以降は600グラム台で推移している。しかし、皮むきされたものが販売されて利用しやすくなったことや煮物料理などの食材として根強い人気があることから、近年の消費量は安定しているとも言える。
さといもは、ほうれんそうなどとともにカリウムが豊富な野菜であり、いも類の中ではカロリーが低く、食物繊維も比較的多い健康的な食材である。特徴のひとつである「ぬめり」は、たんぱく質と多糖類のガラクタンからできている成分で、胃の粘膜や腸の働きを活発にし、血糖値の上昇や血中のコレステロールを抑える効果があるといわれている。