やまのいもは、ヤマノイモ科ヤマノイモ属のうち日本で食用として栽培されているものの総称であり、中国原産の山芋、日本原産の自然薯、東南アジア原産の大薯に分けられる。さらに、山芋はその形状により、円筒形のながいも、扁平形のいちょういも、球形のやまといもの3種類に大別される。
ながいもは、日本で最も多く栽培されており、酢の物や山かけなどに利用される。いちょういもは、関東ではやまといもとも呼ばれ、ながいもより粘り気が強く、とろろなどに利用される。やまといもは、つくねいもとも呼ばれ、やまのいもの中では最も粘り気が強く肉質も良いことから、高級食材として和菓子の原料や練り物のつなぎなどにも使われている。
やまのいもは主に11月から12月にかけて収穫するが、貯蔵性が高いため土の中で越冬させ、翌年の春に収穫する春掘りと併用することで、年間を通して出回っている。近年は、台湾や米国といった海外でながいもの需要が高まっており、輸出量も増加傾向にある。
平成27年の作付面積は、7270ヘクタール(前年比100.1%)と、ほぼ前年並みとなっている。
上位5道県では、
●青森県2280ヘクタール(同101.3%)
●北海道1890ヘクタール(同101.1%)
●群馬県538ヘクタール(同 96.4%)
●千葉県524ヘクタール(同 98.9%)
●長野県310ヘクタール(同 98.1%)
となっている。青森県、北海道および長野県は主にながいもが、群馬県および千葉県は主にいちょういもが作付けされている。
27年の出荷量は、13万4300トン(前年比99.9%)と、ほぼ前年並みであった。
上位5道県では、
●北海道5万2700トン(同101.9%)
●青森県5万700トン(同97.9%)
●長野県5540トン(同90.5%)
●千葉県4880トン(同96.6%)
●群馬県4840トン(同103.6%)
となっている。
出荷量上位5道県について、10アール当たりの収量を見ると、北海道の3.34トンが最も多く、次いで青森県の2.50トン、長野県の2.43トンと続いている。その他の県で多いのは、茨城県(2.35トン)、鳥取県(2.21トン)であり、全国平均は2.24トンとなっている。
ながいもは、やまのいもの代表的な品種であり、青森県や北海道などに大産地がある。いちょういもは、千葉県や群馬県、埼玉県など、主に関東周辺で栽培されている。また、やまといもには、三重県や奈良県の伊勢いも、兵庫県の丹波いもなどの特産品がある。
日本に古くから自生している自然薯は、食用だけでなく薬用としても珍重されてきた。天然ものは収穫するのが難しく数量が限られることから、市場に出回っているのはほとんどが栽培ものである。
東京都中央卸売市場の月別入荷実績(平成27年)を見ると、年間を通して安定した入荷となっている。大部分は関東以北の産地からの入荷であり、すべての月で入荷量の1位は青森産、2位は北海道産である。青森産は、月別入荷量全体の約60~70%を占めている。
大阪中央卸売市場の月別入荷実績(平成27年)を見ると、すべての月で入荷量の1位は北海道産、2位は青森産である。11月を除き、両道県で全体の90%以上を占めている。11月は秋田産の入荷が目立つ。
東京都中央卸売市場の価格(平成27年)を代表的な品種であるながいもで見ると、1キログラム当たり309~391円(年平均355円)の幅で推移している。月による変動が少なく、価格は安定している。
輸入量全体(ながいも等(生鮮)とながいも(冷凍))を見ると、平成24年以降は減少傾向にあり、27年の合計は1612トンとなっている。
国別輸入量を見ると、中国の割合が多く、27年のながいも等(生鮮)では全体の78.0%、ながいも(冷凍)では93.8%を占めている。
平成27年のながいも(生鮮)の輸出量を見ると、合計7114トンであり、前年比123%と大幅に増加している。国別に見ると、台湾への輸出が3419トンであり、米国が3150トンと、両国で全体の約90%を占めている。
すり下ろしてお好み焼きに混ぜたり、そばのつなぎや和菓子に利用したりと、用途が広いやまのいもは、健康食志向の影響もあり、需要は堅調に推移している。
中国では山薬と呼ばれ、滋養強壮の漢方薬として利用されており、高血圧の予防に効果のあるカリウム、マグネシウムなどのミネラルや、ビタミンB群、Cなどをバランス良く含んでいる。
風味豊かで栄養価に優れるやまのいもは、生で食べたり酢の物や揚げ物にするなど、幅広く使いたい健康野菜である。