ピーマンは、ししとうがらしなどと同様に、とうがらしの一種である。とうがらしの原産地は中南米で、15世紀にコロンブスがスペインに持ち帰り、その後、香辛料として世界中に広まったとされている。現在食べられているようなピーマンは、明治時代の初めに、品種改良されたものが米国から伝わった。戦後の食生活の欧米化に伴い、親しまれるようになった野菜である。
現在、主流となっているのは、中型の薄肉で香りが少ないタイプ(薄肉中型種)であり、緑色の未熟果とともに、赤色に熟した赤ピーマンも注目されている。ほかにも、パプリカなどの厚肉大型種がある。
ピーマンの生育適温は22~30度で、高温を好む。そのため、かつては夏から秋を中心に出荷される野菜であったが、現在では施設栽培により周年供給されている。
平成27年の作付面積は、3270ヘクタール(前年比98.5%)と、前年よりわずかに減少している。
上位5県では、
●茨城県535ヘクタール(同99.3%)
●宮崎県305ヘクタール(同96.2%)
●岩手県176ヘクタール(同97.8%)
●鹿児島県149ヘクタール(同100.0%)
●高知県132ヘクタール(同94.3%)
となっている。
27年の出荷量は、12万2800トン(前年比96.5%)と、前年よりやや減少した。
上位5県では、
●茨城県3万700トン(同95.9%)
●宮崎県2万5400トン(同96.9%)
●高知県1万2100トン(同92.4%)
●鹿児島県1万800トン(同97.3%)
●岩手県6170トン(同97.6%)
となっている。
出荷量上位5県について、10アール当たりの収量を見ると、高知県の9.55トンが最も多く、次いで宮崎県の8.79トン、鹿児島県の7.99トンと続いている。その他の道県で多いのは、沖縄県(6.60トン)、北海道(6.08トン)であり、全国平均は4.29トンとなっている。
ピーマンは、大きさや形、色などのほかに、栽培特性や耐病性などの違いによって多くの品種が存在する。各産地では、それぞれの栽培条件に適した品種を選定し、その特性を生かせるように日常の管理を行っている。比較的多くの産地で栽培されている京鈴、みおぎ、京ゆたかは、薄肉中型種である。
最近では、赤や黄色などのカラーピーマンのほかにも、特有の青臭い香りを抑え、甘味を追求したピーマンなども注目されている。
東京都中央卸売市場の月別入荷実績(平成27年)を見ると、施設栽培技術の普及によって通年の栽培が可能となり、茨城産は年間を通じて入荷している。3月から7月、9月から11月までの入荷は茨城産が中心となっているが、7月から10月にかけては岩手産、福島産、青森産などの東北産も目立つ。また、11月から翌5月にかけては、 宮崎産、高知産、鹿児島産などの西南暖地産が入荷している。
大阪中央卸売市場の月別入荷実績(平成27年)を見ると、11月から翌6月にかけての入荷は、宮崎産、鹿児島産、高知産などの西南暖地産が中心となっている。7月から10月までは、大分産、青森産などの入荷が多い。また、東京都中央卸売市場と比べ、兵庫産(7~9月)、北海道産(8~9月)の入荷が目立つ。
東京都中央卸売市場の価格(平成27年)は、1キログラム当たり262~730円(年平均464円)の幅で推移している。総入荷量が増える3月から6月にかけては、価格は下げ基調で推移する。入荷量が安定している7月から11月は価格も安定して推移し、総入荷量が減少する12月から2月の価格は上げ基調に転じる。
ピーマンの輸入の大部分は、厚肉大型種である生鮮ジャンボピーマン(パプリカ)が占めている。冷凍ピーマンは、ピザなどの冷凍食品向けに輸入されている。平成20年に2万2424トンであった生鮮ジャンボピーマンの輸入量は、その後、増加傾向で推移し、27年には約1.8倍の3万9679トンとなった。
27年の国別輸入量を見ると、生鮮ジャンボピーマンでは韓国が7割以上を占め、オランダ、ニュージーランドと続いている。冷凍ピーマンは、9割以上を中国が占めている。
ピーマンは栄養豊富な野菜であり、手軽に調理できることやサラダにも適しているため、食卓に並ぶことが多い。1人当たり年間購入量を見ると、平成23年以降は増加傾向にあり、27年は900グラムを超えている。
ピーマンは、レモンの2倍、トマトの5倍のビタミンCを含み、中くらいの大きさのもの4個で1日の摂取量をとることができる。そのほか、ビタミンAなどのビタミン類や食物繊維を豊富に含んでおり、加熱調理しても栄養価が損なわれることが少ない。また、熟した赤ピーマンの方が、緑色のピーマンより栄養に富んでいる。
栄養豊富で彩り豊かなピーマンを、いろいろな料理で楽しみたいものである。