ブロッコリーは、地中海沿岸原産の野生種ケールを起源とするアブラナ科の野菜で、つぼみの固まり(花蕾)と茎を食用とする。日本へは明治の初めに渡来したが普及せず、戦後の1970年代に、洋風化に伴って食卓に上るようになった。国民の栄養意識が高まった1980年代に入って、米国カリフォルニアからの輸入物などによって一年中出回るようになると、その栄養価が評価されて消費量が一気に伸びた。その後、国内産地も増え、予冷施設や冷蔵輸送が整うことで、国産ブロッコリーの周年供給体制が確立した。
ブロッコリーの生育温度は18~20度で、冷涼な気候を好む。そのため、6~8月に種子をまき、11月以降に収穫する夏まき秋冬どり栽培が主流だが、北海道、東北、長野などの高冷地では春まき夏どり栽培が、関東以南の暖地では夏まき冬春どり栽培が行われている。緑黄色野菜として需要は堅調であり、ブロッコリーの作付面積や出荷量は、増加傾向にある。
作付面積・出荷量・単収の推移
平成26年の作付面積は、1万4100ヘクタール(前年比102.9%)と、前年よりわずかに増加している。
上位5道県では、
●北海道2470ヘクタール(同102.5%)
●埼玉県1300ヘクタール(同102.4%)
●愛知県927ヘクタール(同100.4%)
●香川県902ヘクタール(同101.9%)
●長野県836ヘクタール(同101.3%)
となっている。
26年の出荷量は、13万400トン(前年比106.5%)と、前年よりかなりの程度増加した。
上位5道県では、
●北海道2万1700トン(同105.9%)
●埼玉県1万3800トン(同107.0%)
●愛知県1万3300トン(同98.5%)
●香川県8750トン(同107.6%)
●長野県7280トン(同99.6%)
となっている。
出荷量上位5道県について、10アール当たりの収量を見ると、愛知県の1.54トンが最も多く、次いで埼玉県の1.17トン、香川県の1.04トンと続いている。その他の府県で10アール当たりの収量が多いのは、大阪府(1.71トン)、静岡県(1.46トン)であり、全国平均(単純平均)は1.03トンとなっている。
作付けされている主な品種等
ブロッコリー産地は、早生種、中早生種、晩生種などの品種を使い分けたり、は種日をずらすことなどによって収穫期を分散させ、長期出荷を実現している。また各産地は、栽培環境などに合わせて秋冬どり栽培や夏どり栽培などの作型を選択している。こうした産地間のリレー出荷により、国産ブロッコリーの周年供給体制は確立した。
比較的多くの産地で作付けされているおはようやサマードームは中早生種、晩緑99Wは晩生種である。
東京都・大阪中央卸売市場における月別県別入荷実績
東京都中央卸売市場の月別入荷実績(平成27年)を見ると、11~12月に多いが、年間を通じて安定した入荷となっている。秋冬作と冬春作である11月から5月にかけては埼玉産、愛知産および香川産の入荷が多い。夏作の6月から10月にかけては、北海道産および長野産の入荷が多くなっている。また、米国産はカリフォルニアなどから年間を通じて入荷される。
大阪中央卸売市場の月別入荷実績(平成27年)を見ると、東京都中央卸売市場と同様に、11~12月を中心に通年で入荷している。東京と比較すると、鳥取産、徳島産および長崎産の入荷が目立つ。また、米国産は大阪でも年間を通じて入荷している。
東京都中央卸売市場における価格の推移
東京都中央卸売市場の価格(平成27年)は、1キログラム当たり206~525円(年平均394円)の幅で推移している。年ごとに天候などの影響を受けるものの、1月以降は冬春どり栽培の産地の入荷量が増え、価格はやや下げ基調となる。夏になると、夏どり産地は限定されるために入荷量が減少し、価格は上げ基調となる。10月以降は秋冬どり栽培の入荷により入荷量が増加し、価格が大きく下げ基調に転じる。
輸入量の推移
生鮮ブロッコリーの輸入量は、平成24年をピークに減少傾向にあり、冷凍ブロッコリーの輸入量は、年を追って増加傾向にある。
27年の輸入量を国別にみると、生鮮ブロッコリーでは米国(1万5422トン)が8割以上を占め、冷凍ブロッコリーでは中国(2万2056トン)とエクアドル(1万7634トン)とで9割以上を占めている。
消費の動向
ブロッコリーは、さまざまな料理の主材料としてだけでなく、サラダの彩りや肉料理の付け合わせなどにも使える人気の高い野菜である。栄養価に優れる緑黄色野菜としての評価も高く、安定した需要を持っている。1人当たり年間購入量を見ると、平成26~27年は1300グラムを上回る推移となっている。
ブロッコリーは、ビタミンやミネラル、食物繊維などの栄養素を豊富に含んでいる。中でも、疲労回復や美肌効果が期待できるビタミンCの含有量は、野菜でもトップクラスである。また、ブロッコリーに含まれるスルフォラファンは、ポリフェノールの一種であり、体内に入った発がん性物質を解毒する酵素を活性化させる働きを持つ。
栄養価が高く、子どもや若者にも人気のあるブロッコリーは、幅広い年代におすすめの野菜である。