さやいんげんは、いんげんまめが完熟する前の若さやを野菜として利用したものである。ポリポリとした食感と鮮やかな緑色が特徴で、いろいろな食材を引き立て、さまざまな料理に幅広く利用されている。
原産地は中南米メキシコ付近といわれ、コロンブスの新大陸発見によってヨーロッパに伝わった。日本には、江戸時代に隠元禅師によって中国からもたらされたといわれている。「いんげん」は、禅師の名前にちなんだもので、当時は、さやの中の豆だけを食べていた。現在のような若さやを食べるさやいんげんは、幕末に伝わった品種が分化したものである。
さやいんげんは北海道から沖縄まで、それぞれの時期に日本中で栽培されているため一年中手に入るが、春から夏にかけて出回り量が増える野菜である。
平成26年の作付面積は、5820ヘクタール(前年比97,2%)と、前年より微減傾向で推移している。
上位5道県では、
・福島県540ヘクタール(同97.3%)
・千葉県496ヘクタール(同97.6%)
・鹿児島県402ヘクタール(同97.6%)
・北海道353ヘクタール(同89.8%)
・長野県321ヘクタール(同99.7%)
となっている。
26年の出荷量は、2万6600トン(前年比98.5%)と、前年より微減した。
上位5道県では、
・千葉県3890トン(同97.0%)
・鹿児島県2920トン(同99.0%)
・北海道2870トン(同92.6%)
・福島県2700トン(同102.7%)
・沖縄県1950トン(同113.4%)
となっている。
10アール当たりの収量は、高知県の1.66トンが最も多く、次いで沖縄県の1.12トン、千葉県の1.09トンと続いている。全国平均(単純平均)は0.70トンとなっている。
さやいんげんは、つるがあるもの(つるあり、蔓性種)と、つるがないもの(つるなし、矮性種)に大きく分かれる。つるありは草丈が2~3メートル程度に伸長するため、収穫期間が長く、収穫量も多いタイプで、全国的に多く栽培されている。つるなしは草丈が50センチメートル程度にしかならないため、収穫期間が短いが、短期間にまとめて収穫することができる。また、つるなしは調理前に筋を取る必要がない。
比較的多く作付けされている品種のうち、「ステイヤー」「鴨川グリーン」はつるありで、「キセラ」「サーベル」はつるなしの品種である。
東京都中央卸売市場の月別入荷実績(平成26年)を見ると、12月から4月にかけては沖縄産が、5月から6月は千葉産や鹿児島産、茨城産が大きなウェイトを占めている。7月から10月は福島産が、11月は長崎産の入荷が多い。また、12月から3月は、オマーンからの輸入が多い。8月に入荷量が少ないのは、台風およびその後の天候不順などによるもの。
大阪中央卸売市場の月別入荷実績(平成26年)を見ると、4月から6月、10月から11月の春と秋は鹿児島産や熊本産が多く、7月から9月の夏から秋にかけては、福島産や北海道産が多い。また、12月から3月の冬の間は、オマーンからの輸入が30~40%を占めている。
東京都中央卸売市場の価格(平成27年)は、1キログラム当たりで631~1061円(年平均832円)の幅で推移している。出荷量の多い夏場は比較的安値となっているが、平成26、27年の8月は天候不順などで入荷量が少なかったために高値となった。
「ささげ・いんげん等(生鮮)」「いんげん豆等(冷凍)」「ささげ・いんげん等(その他調製野菜)」の輸入量を見ると、いんげん豆等(冷凍)が大半を占めている。平成27年のいんげん豆等(冷凍)の輸入先では、中国が60%以上、タイが30%以上を占めている。
ささげ・いんげん等(生鮮)の27年の輸入先は、オマーンが99.7%(1026トン)と、圧倒的なシェアを占めている。
ささげ・いんげん等(その他調製野菜)では、いんげん豆に砂糖を加えた和菓子用のあんなどが輸入されているが、27年を見ると、輸入先は90%以上が中国である。
「ささげ・いんげん等(その他調製野菜)」は、香港、台湾、米国、タイおよび中国などに輸出されている。直近3年間の総輸出量は300~350トン程度で推移している。
また、「いんげん豆等(冷凍)」は、近年では平成20~22、25、27年に、タイ、米国およびサウジアラビアなどに輸出された。年間総輸出量は、2~6トン程度である。
さやいんげんの近年の小売価格の動向を見ると、100グラム当たり200円前後で推移している。これを月別に見ると、春から夏になると価格が下落傾向となっている。
未熟な豆であるさやいんげんは、野菜と豆類の栄養成分を兼ね備えている。β-カロテンやビタミン類、アスパラギンなどを含む緑黄色野菜で、食物繊維に富んでいる。また、トリプシンインヒビター(注)という、たんぱく質の一種で糖尿病の予防に役立つ成分も含まれている。
くせのない風味で、さやと豆との2つの食感を楽しめるさやいんげんは、さまざまな料理に使うことができる。塩ゆでしてマヨネーズをつけるだけでも一品になるほか、肉じゃがに加えたり、ステーキの付けあわせ、バター炒め、中華風たまごスープなど、活用の範囲が広い。
注:トリプシンインヒビターは、50度以上で不活性化する。