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今月の野菜 アスパラガス



アスパラガスの需給動向   調査情報部

  

 アスパラガスは、南欧からロシア南部にかけての半砂漠的地帯が原産で、古代ギリシャやローマを中心に栽培され、その後欧州全域に広まった。アスパラガスは、次々と生えてくる若芽を収穫することから、「よく分かれる」「激しく裂ける」などを意味する「アスパラゴス」というギリシャ語が語源となっている。わが国へは、江戸時代に観賞用として輸入されたのが始まりで、その後、明治時代に北海道開拓使によって栽培されたことで、食用品種として広まった。

 アスパラガスは、は種および定植後1年目は株の育成を行い、2年目から収穫ができる。1つの株で10年以上収穫することも可能だが、長期間生育した株は、収量の低下や病害リスクが高まるため、10年程度で改植される。

 わが国のアスパラガスは、生食用の「グリーンアスパラガス」が多く流通しており、少量ではあるが、グリーンアスパラガスを土寄せして軟白栽培した「ホワイトアスパラガス」も流通している。

作付面積・出荷量・単収の推移

 作付面積は、25年は5770ヘクタール(前年比95.7%)と近年微減傾向で推移している。上位5道県では、

 ・北海道 1590ヘクタール (同 93.5%)
 ・長野県 1060ヘクタール (同 93.0%)
 ・福島県 428ヘクタール (同 96.8%)
 ・秋田県 421ヘクタール (同 96.8%)
 ・山形県 340ヘクタール (同100.0%)

となっている。

 出荷量は、25年は2万6100トン(前年比104.8%)と前年より増加している。上位5道県では、

 ・北海道 3890トン (同 86.3%)
 ・佐賀県 2860トン (同112.2%)
 ・長野県 2440トン (同108.9%)
 ・長崎県 2310トン (同110.5%)
 ・熊本県 2010トン (同117.5%)

となっている。

 10アール当たりの収量は、佐賀県の2.43トンが最も多く、次いで福岡県の2.28トン、熊本県の2.05トンと続いている。全国平均は、0.51トンとなっている。

作付けされている主な品種

 作付品種は、各産地とも生育ぞろいが良く、露地栽培、ハウス半促成栽培、トンネル栽培の全ての作型に汎用性がある極早生種の「ウェルカム」が多い。北海道では、低温萌芽性(注)に優れ、グリーンアスパラガスだけでなく、軟白栽培のホワイトアスパラガスにも利用できる「ガインリム」も栽培されている。

 アスパラガスの収益性を高めるには、長期どり栽培の確立が不可欠となっている。各産地とも春芽の収穫後、一定数の茎を育て、養分を蓄積して連続して萌芽させることで長期どりによる増収技術を確立しており、佐賀県は「半促成長期どり」、北海道では「立茎栽培」と呼ばれる技術が普及している。

注:低温時でも芽を出せること。


東京都・大阪中央卸売市場における月別入荷実績

 東京都中央卸売市場の月別入荷実績(平成25年)を見ると、1月から9月までは国内産が入荷している。産地ごとの入荷状況を見ると、九州の佐賀産は2月から9月まで、長崎産は3月から9月まで長期入荷となるのに対し、東北の秋田産は5月から8月と低温期を外した入荷となっている。輸入ものについては、9月から翌年4月までの入荷となっており、9月から12月までは豪州産、10月から翌年4月まではメキシコ産が入荷している。

 大阪中央卸売市場の月別入荷実績(平成25年)を見ると、佐賀産、長崎産、福岡産などの九州産の入荷が多くなっている。輸入ものについては、周年でタイ産が入荷しているが、東京都中央卸売市場で多く見られる豪州産の入荷は少ない。

東京都中央卸売市場における価格の推移

 国内産の東京都中央卸売市場の価格(平成26年)は、1キログラム当たり818~2150円(年平均単価1162円)の幅で推移している。月別の推移を見ると、国内産の入荷量が減少する9月以降は上昇基調となり、国内産の端境期である12月の価格が最も高くなる。露地ものが出回る5月以降は下降基調となり、国内産が多く出回る8月の価格が最も安くなる。

輸入量の推移

 輸入量の大部分を占める生鮮アスパラガスは、国内産の入荷量が減少する秋冬期に家庭用として量販店などの店頭に並ぶほか、外食産業などで使用されている。平成19年の1万2542トンから、20年は減少し、国内産の入荷量が減少した24年は1万5243トンとなった。その後は国内産の入荷量が回復したことにより、26年は1万1741トンに減少している。

 冷凍アスパラガスは、業務用のほか、家庭用として量販店などの店頭に周年で並んでいる。冷凍アスパラガスの輸入量は、以前は輸入業者などの在庫調整により変動したが、20年に主要輸入先国である中国の食品安全性が問題になったことで減少傾向となっており、26年は690トンとなっている。

 平成26年の輸入量を国別で見ると、生鮮アスパラガスは、メキシコ6610トン(輸入量に占めるシェア56.3%)、豪州2360トン(同20.1%)のほか、ペルーなどとなっている。冷凍アスパラガスは、中国356トン(同51.6%)のほか、ペルー、チリなどからも輸入されている。

消費の動向

 アスパラガスは、サラダ、焼きもの、煮ものなど、さまざまな料理に使用できる調理汎用性の高い品目である。

 主成分であるビタミンEは、抗酸化作用により、体内の脂質の酸化を抑制し、細胞の健康維持を助ける栄養素である。次に多く含まれる葉酸は、赤血球の形成を助けたり、胎児の正常な発育に寄与する栄養素である。また、穂先には老化防止に効くといわれるグルタチオンや疲労回復に効果があるアスパラギン酸などが多く含まれている。

 これからの季節は、全国の産地から国内産アスパラガスが多く出回る。新鮮で栄養価の高いアスパラガスを召し上がっていただきたい。




今月の野菜「アスパラガス」 

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