たまねぎは、北海道、佐賀県および兵庫県の出荷量上位3県で、全国の出荷量のおよそ8割を占めている。このほかに、愛知県、長崎県、静岡県、および香川県が主産地である。たまねぎは、中央アジアから地中海沿岸の野菜であるが、日本には、江戸時代にオランダ人が長崎に持ち込んだのが始まりである。実際に栽培が定着したのは、明治時代の北海道で、米国から導入された品種の栽培が成功してからである。
たまねぎの生育適温15~20度で、冷涼な気候を好む。低温には強いが、最高気温で25度程度と、高温条件下では、生育が抑制される。このため、たまねぎは、北海道以南では春から初夏前に収穫される作型が中心となり、盛夏期のたまねぎは、北海道産が中心となる。
たまねぎの作付面積は微増で推移しており、平成24年の作付面積は、2万4900ヘクタール(前年比101.2%、300ヘクタール増)となっている。主産地の作付動向は、北海道(同103.1%、400ヘクタール増)、兵庫県(同102.4%、40ヘクタール増)と、作付面積が増加した道県があるものの、他の主産県等では、作付面積が減少している。北海道および兵庫県の作付面積の増加分が、他県の減少分を大きく上回ったことから、全体の作付面積が微増となったものである。
北海道では、加工・業務用たまねぎの安定供給体制について、高まる需要に対応できるよう、収量の安定化だけでなく、直播栽培や通い容器流通など、加工・業務向けに低コストで対応できる供給体制の構築を目指し、各種技術等の研究および普及が行われている。
出荷量は、96万8700トン(前年比102.8%、2万6600トン増)となっている。主産地は、北海道(同115.5%、8万2600トン増)、と増加しているが、佐賀県、兵庫県等では、生育時の降雨、日照不足等から小玉傾向となり、出荷量が減少した。
10アール当たり収量については、兵庫県が5.06トンと最も高収量で、北海道が5.00トンと続き、全国平均では4.41トンとなっている。上述の北海道だけでなく、兵庫県についても低コスト化および省力化技術の研究および普及が進められており、他県よりも収量が高い。佐賀県の単収が他の主産地より低いのは、天候要因による小玉傾向等によるものである。
たまねぎの主な品種は、北海道以外では、極早生種は貴錦など、早生種は七宝早生などで、水分があり柔らかい品種が多い。中生種はターザン、中晩生種はもみじ3号など、中生種より生育速度の遅い品種は、貯蔵性の高い品種が多い。生産の太宗を占める北海道では、極早生種は北はやて2号、早生種はオホーツク222、中生種は北もみじ2000、晩生種はスーパー北もみじなど、北海道独自品種となっている。なお、北海道では、晩生種の作付が減少傾向にあり、中生種および中晩生種が増加傾向にある。
兵庫県では、収穫期の降雨を避け、田植え作業との競合を回避するため、中晩生種のもみじ3号から、中生種のターザンより3~4日熟期が遅い、中晩生種のもみじの輝に作付移行が進んでいる。
主産地以外の動向では、宮崎県のJA延岡が、平成10年から超早出し作型として極早生種のトップゴールドを作付し、葉付き収穫したものを「空飛ぶ玉ネギ」として1~3月に収穫および出荷を行っている。
東京都中央卸売市場のたまねぎの月別入荷実績(平成24年)を見ると、新たまねぎは、2月の静岡県産から始まり、たまねぎは、4月からは佐賀県産、兵庫県産が入荷されるが、5~7月は、千葉県産や群馬県産の関東近在産地も入荷される。8月からは北海道産の入荷が始まり、10月以降は、北海道産の貯蔵ものに切り替わり、翌年の4月頃まで続く。
大阪中央卸売市場のたまねぎの月別入荷実績(平成24年)を見ると、新たまねぎは、2月の静岡県産から始まり、長崎県産、佐賀県産、兵庫県産とリレー入荷される。8月からは北海道産が入荷となり、10月以降は、北海道産および兵庫県産の貯蔵ものの入荷となる。
東京都中央卸売市場における価格の推移
国内産の東京都中央卸売市場の価格(平成24年)は、キログラム当たり70~150円(年平均単価105円)の幅で推移している。年別の価格の推移を見ると、新たまねぎの入荷量が増加する4月以降に下がり始め、府県産と北海道産の端境期となる7~8月に上昇する。その後、北海道産が貯蔵ものの入荷にシフトする10月以降は、大きな変動もなく安定して推移する。
なお、平成22年の10月以降の高値については、北海道が生育期の高温多雨の影響から不作傾向となったことにより、北海道産の貯蔵ものが少なかったことによるものである。
輸入量の推移
外国産の東京都中央卸売市場の価格(平成24年)は、キログラム当たり61~92円(年平均単価77円)の幅で推移している。輸入の8割を中国産が占めており、卸売価格は、77円前後の安定した価格で推移している。外国産の卸売価格は、国内産の入荷量の影響を受けることから、国内産に連動した値動きとなっている。
生鮮たまねぎの輸入量は、平成18年のポジティブリスト制度の施行により、平成20年は19年と比較して、4万3994トン減の18万4179トンとなったが、その後は、国産たまねぎの不作傾向により、輸入量が増加し、23年は37万3123トンに増加した。平成24年は、国産たまねぎの供給量が回復したことにより輸入量が減少し、34万2293トンとなっている。
冷凍たまねぎは、平成24年には9,375トン輸入されており、23年と比較して1,145トンの増となった。20年、21年の輸入量は、中国における食の安全・安心の問題から減少したものの、22年以降は、増加傾向にある。冷凍たまねぎは、ダイスカット(みじん切り)などにされたものが、加工・原料用として輸入されている。
乾燥たまねぎは、平成24年には5,894トン輸入されており、23年と比較して146トンの減となったが、17年以降の輸入量は、6,000トン前後で推移している。乾燥たまねぎは、粉末やスライスなどの状態で、冷凍たまねぎ同様に、加工・原料用として輸入されている。
平成24年の生鮮たまねぎ輸入量を国別で見てみると、中国26万9347トン(輸入量に占めるシェア78.7%)、米国3万4907トン(同10.2%)、ニュージーランド2万4708トン(同7.2%)となっており、米国産およびニュージーランド産の輸入量が減少する中、中国産が輸入量を増やしている。冷凍たまねぎは、中国からの輸入が大半を占めており、乾燥たまねぎは、米国3524トン(輸入量に占めるシェア59.8%)、中国1481トン(同25.1%)、エジプト629トン(同10.7%)などから輸入されている。
消費の動向
たまねぎは、炒めもの、カレー、揚げ物、サラダなど、さまざまな料理に幅広く使用される、日本人の好きな定番食材である。1人当たりの年間購入量は、5,000グラム前後で推移している。たまねぎの特徴は、ビタミンB6が多く含まれるとともに、硫化アリルが含まれることがあげられる。硫化アリルは、風邪予防や脂肪燃焼、殺菌作用だけでなく、血栓予防にも効果がある。