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今月の野菜

ほうれんそうの需給動向

  

 ほうれんそうは、千葉県、埼玉県および群馬県の出荷量上位3県と第5位の茨城県、第8位の神奈川県など、国内最大の消費地である関東地方に主産地が集中している。これら関東の主産地5県で、全国の出荷量のおよそ4割を占めている。このほかに、宮崎県、岐阜県、福岡県、および北海道が主産地である。ほうれんそうは、西アジア原産の野菜であるが、日本には、江戸時代初期に中国から「東洋種」が、江戸時代末期にフランスから「西洋種」が伝わった。その後、大正時代末期から東洋種と西洋種の交雑種が育成され、全国各地に普及した。
 ほうれんそうは、人間と同じように雄雌がある(雌雄異株植物)。雌株は、雄株より生育がおう盛で抽台ちゅうだい(花を咲かせる茎が伸びること)が少ないため、全雌株系統の品種改良が進められている。
 ほうれんそうは、発芽および生育適温が15~20度で、冷涼な気候を好む。生育限界温度は、最低気温で零下15度、最高気温で25度程度と、低温条件下での生育は影響が少ないものの、高温条件下では、生育が抑制される。このため、夏季のほうれんそうは、高冷地等の冷涼な地域の作付が中心となり、温暖な関東以南の地域では、高温期を避けた秋~春の作付が多い。

作付面積・出荷量・単収の推移

 ほうれんそうの作付面積は微減で推移しており、平成24年の作付面積は、2万1700ヘクタール(前年比99.5%、100ヘクタール減)となっている。主産地の作付動向は、千葉県(同97.0%、70ヘクタール減)、埼玉県(同98.7%、30ヘクタール減)と、上位2県を中心に作付面積が減少している中、宮崎県(同116.0%、145ヘクタール増)などでは、加工・業務用野菜向けを中心に作付面積が増加している。
 千葉県や埼玉県などにおいて、ほうれんそうの作付面積が減少している要因は、都市化の進行が要因の1つとしてあげられる。

 出荷量は、21万7800トン(前年比100.2%、500トン増)となっている。主産地は、千葉県(同92.9%、2,500トン減)、埼玉県(同94.6%、1,400トン減)と、上位2都県が大きく減少している。群馬県、宮崎県、茨城県などでは、作付面積の増加に伴い出荷量は増加している。

 10アール当たり収量については、宮崎県が1.77トンと最も高収量で、千葉県が1.59トンと続き、全国平均では1.21トンとなっている。宮崎県は、加工・業務用向けのほうれんそう生産が多く行われており、加工・業務向けの規格(草丈)は、市場出荷用より15センチメートルほど大きい40センチメートルと大型に生育させて収穫することと、在ほ性の高い品種を中心とした栽培と機械収穫技術の普及により、他県よりも収量が高い。

作付されている主な品種

 ほうれんそうの主な品種は、厳冬期における耐寒性と低温伸長性がある「クロノス」や「アグレッシブ」、高温期に比較的耐暑性がある「ミラージュ」、収穫前後の生育がゆっくりで在ほ性が高い「トリトン」などが多く作付されている。ほうれんそうは、は種から収穫までの期間が短く、地域、作付時期などにより、これらの品種を組み合わせ、は種期をずらすことによって、長期間収穫を行っている。なお、露地栽培が多いほうれんそうは、多湿条件や肥料切れの時期に「べと病」にり病しやすく、り病株は商品価値が著しく落ちることから、べと病抵抗性を持った品種がほとんどである。


東京都・大阪中央卸売市場における月別入荷実績

 東京都中央卸売市場のほうれんそうの月別入荷実績(平成24年)を見ると、関東近在産地から周年で入荷されている。夏場は、関東の中でも、栃木県産の高冷地もの(指定産地:日塩)などが多く入荷される。関東高冷地が中心となる時期は、関東産の入荷量が減少することから、東北の高冷地ものである岩手県産が入荷される。

 大阪中央卸売市場のほうれんそうの月別入荷実績(平成24年)を見ると、冬春は、徳島県産および福岡県産が中心に入荷される。気温の高い夏秋は、岐阜県産の高冷地もの(指定産地:飛騨)が中心に入荷される。

東京都中央卸売市場における価格の推移

 国内産の東京都中央卸売市場の価格(平成24年)は、キログラム当たり390~724円(年平均単価524円)の幅で推移している。
 年別の価格の推移を見ると、ほうれんそうは、高温に弱く低温に強い野菜であることから、気温が上昇し、平坦地での栽培が困難になる夏場の価格は上がる傾向にあり、気温が低下し、平坦地で安定した栽培ができる秋~春は、価格が下がる傾向にある。
 平成22年産については、夏場が高温で推移したことにより、高冷地における生育不良により入荷量が減少したため、8~9月は、キログラム当たり800円を超えた。

輸入量の推移

 冷凍ほうれんそうの輸入量は、ポジティブリスト制度の施行や、中国産冷凍ほうれんそうの残留農薬問題等により、平成19年と比較して、平成21年は2,128トン減の2万2084トンとなったが、その後は、国産の生鮮ほうれんそうの生産量が減少傾向となったことにより、輸入量が増加し、平成24年は3万2423トンとなっている。
 平成24年の冷凍ほうれんそう輸入量を国別で見てみると、中国2万8862トン(輸入量に占めるシェア89.0%)、台湾1,733トン(5.3%)となっており、中国産が大きく輸入量を増やしている。

消費の動向

 ほうれんそうは、和食であるおひたしから、洋食であるシチューまで、さまざまな料理に使用される食材であり、1人当たりの年間購入量は、1,200グラム前後で推移している。ほうれんそうの特徴は、緑黄色野菜の中でも高い栄養価があり、特に、ビタミンK、葉酸、鉄分が豊富に含まれている。
 ほうれんそうは、購入後の品質劣化が早いこと、えぐみを除去するためにボイルすることが必要となるが、近年は、ボイルの必要がない「サラダほうれんそう」向けの品種も栽培され、店頭で見られるようになった。また、加工食品としては、長期間保存のきく冷凍ほうれんそうが店頭に並んでいる。冷凍ほうれんそうは、商品製造時にボイル処理してあることから、解凍するだけでおひたしとして使用できるなど、利便性が高い。
 厳冬期に店頭に並ぶ「寒じめちぢみほうれんそう」は、ほうれんそうが寒さに耐えようと、葉に糖分を蓄えることを利用したものであり、種苗会社と卸が連携して普及させており、甘くておいしいほうれんそうとして人気がある(ちぢみほうれんそうについては、産地紹介を参照のこと)。




今月の野菜「ほうれんそう」 

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