[本文へジャンプ]

文字サイズ
  • 標準
  • 大きく
お問い合わせ
今月の野菜

こまつなの需給動向

  

 こまつなは、埼玉県、東京都および神奈川県の出荷量上位3県、第5位の茨城県、第6位の群馬県および第7位の千葉県と、国内最大の消費地である関東地方に主産地が集中している。これら関東の主産地で、全国の出荷量のおよそ5割を占めている。このほかに、福岡県、大阪府、京都府および兵庫県が主産地であるが、各産地とも大消費地に隣接した産地である。こまつなは、江戸時代から江戸庶民に親しまれてきた野菜で、生育適温が10~25度と寒暖に強いため、古くから食卓に多く活用されてきた野菜である。特に、野菜が不足する冬場に活用されていたことから、雑煮などの伝統的な料理には欠かせない野菜である。江戸庶民に対する冬野菜の供給地として、東京近郊に産地が形成されたことから、上記の南関東を中心とした主産県が中心産地となっている。関東以外の主産県についても、大都市近郊を中心に産地形成がされている。

作付面積・出荷量・単収の推移

 こまつなの作付面積は徐々に増加しており、平成24年の作付面積は、6,390ヘクタール(前年比103.4%、210ヘクタール増)となっている。主産地の作付動向は、埼玉県(同100.4%、4ヘクタール増)、群馬県(同108.0%、33ヘクタール増)、茨城県(同122.0%、68ヘクタール増)で作付面積が増加しており、多くの産地が増加している中、東京都と神奈川県は平成17年と比較するとそれぞれ、43ヘクタール、27ヘクタール減少している。
 東京都などの都市部において、こまつなの作付面積が減少している要因は、都市化の進行が要因の1つとしてあげられる。また、こまつなは寒暖に強いことから、野菜生産出荷統計のデータがない県においても、自家消費用や直売所向けなどで栽培されている。

 出荷量は、8万6300トン(前年比98.4%、1,400トン減)となっている。主産地は、埼玉県(同93.5%、1,000トン減)、東京都(同86.1%、1,150トン減)と、上位2都県が大きく減少しており、神奈川県(91.5同%、610トン減)、千葉県(94.0同%、320トン)も減少となっている。福岡県、茨城県、群馬県では、作付面積の増加に伴い出荷量は増加している。

 10アール当たり収量については、福岡県が2.25トンと最も高収量で、千葉県が1.96トンと続き、全国平均では1.57トンとなっている。

 こまつなは、前述の通り寒暖に強いことはもちろん、生育期間も、春および夏まきは、は種後1カ月前後、秋まきでも同2カ月前後と生育期間も短く、生育が旺盛おうせいなことから、すぐに換金できる野菜として市場出荷はもちろん、直売所出荷などの市場流通や、家庭菜園などでも多く栽培されている。昔からこまつなは、品質劣化が早いことから、前述のように消費地に近い産地が形成されてきた。昔も今も主産地は変わらないが、品質劣化防止対策としては、近年、真空予冷などの品温保持による劣化防止や、鮮度保持資材などによる輸送中から量販等の店頭までの鮮度保持対策が行われるようになり、鮮度の高いこまつなが供給されるようになった。

作付されている主な品種

 こまつなの品種は、は種期と生育期間により、極早生種から晩生種まで使い分けられているが、特に、早生種と中晩生種が多く使用されている。主産地で多く使用されている品種は、早生種では「わかみ」、中晩生種では「いなむら」などがあげられる。こまつなは周年栽培が可能な野菜であるが、収穫作業が最も労力を要することから、生育期間の異なる品種を組み合わせたり、収穫期に幅を持たせるは種を行うなどの工夫を行っている。


東京都・大阪中央卸売市場における月別入荷実績

 東京都中央卸売市場のこまつなの月別入荷実績(平成24年)を見ると、関東近在産地から周年で入荷されている。群馬県産の入荷量が特に減少する3、4月は、埼玉県産の入荷が最盛期となる。

 大阪中央卸売市場のこまつなの月別入荷実績(平成24年)を見ると、福岡県産が周年で入荷されている。また、大阪府産などの関西近在産地からも周年で入荷されている。入荷量が減少する7~9月は、東京市場における主産地の群馬県産が入荷されている。特に、大阪市場を主体に出荷している産地からの入荷量が減少する7月は、群馬県産の入荷量が最も多くなる。

東京都中央卸売市場における価格の推移

 国内産の東京都中央卸売市場の価格(平成24年)は、キログラム当たり177~613円(年平均単価324円)の幅で推移している。
 年別の価格の推移を見ると、気温が上昇し、生育期間が短くなる夏場の価格は下がる傾向にあり、気温が低下し、夏場の2倍近くの生育期間を要する冬場の価格は、上がる傾向にある。
 平成22年産については、2~4月の低温および日照不足により生育が遅れ、4月の入荷量が減少したこと、また、夏場が高温で推移したことにより生育不良となったために入荷量が減少したことにより、卸売価格は上昇した。秋までの高値疲れから、12月の卸売価格は下落した。

輸入量の推移

 冷凍こまつなの輸入量は、ポジティブリスト制度が導入された平成18年には年間2,746トンであったが、平成19年以降、減少傾向で推移し、中国産冷凍ギョーザによる薬物中毒発生の翌年である平成21年には934トンとなった。平成22年には、輸入量は増加に転じ、1,225トンとなったが、平成23年以降は1,040トン台となっている。
 平成24年の冷凍こまつなは、全量中国産となっている。

消費の動向

 こまつなは、前述の通り江戸時代から食されている野菜で、家庭利用はもちろん、学校給食等、幅広い調理場面で活用されている。特徴としては、ほうれんそうのようにあくが少ないことから、下ゆでの必要がなく、少ない下処理で炒めもの等に活用できることと、緑黄色野菜の中でも、ビタミンKなどの栄養価が高いことがあげられる。
 こまつなの調理法等については、料理レシピサイトや調味料メーカーなどから、和食だけでなく、中華料理やパンケーキなど、さまざまな食べ方が提案されている。また、千葉県船橋市では、生産者組織の西船橋葉物共販組合(事務局:JAちば東葛)と地元飲食店等が連携して、「こまつなう」というこまつな料理食べ歩きイベントを開催するなど、人口の多い都市近郊地域ならではの、異業種連携による消費拡大イベントが行われている。



今月の野菜「こまつな」 

産地紹介
元のページへ戻る


このページのトップへ