ちんげんさいは、茨城県および静岡県の出荷量上位2県で、全国の出荷量のおよそ5割を占めている。このほかに、群馬県、愛知県、埼玉県などが主産地である。ちんげんさいは、生育適温が20度前後であるが、耐暑性が高く、ある程度の低温にも強く、露地では厳冬期を除いたほとんどの時期に栽培できる。厳冬期の保温対策として、施設栽培も行われており、病気にも強く、さまざまな土質で栽培が可能なことから、広く全国で生産されている。ちんげんさいは、日中国交正常化以降の1970年代に中国から導入された比較的新しい野菜であるが、は種後40~45日程度で収穫ができ、短期の換金作物として産地に普及するとともに、ビタミンやミネラルが豊富で、日本人の味覚に合う野菜として、消費者に受け入れられている。
ちんげんさいの作付面積は、2,400ヘクタール前後で推移しており、平成24年の作付面積は、2,450ヘクタール(前年比99.2%、20ヘクタール減)となっている。主産地の作付動向は、茨城県(同104.8%、25ヘクタール増)で作付面積が増加しており、静岡県(同98.5%、5ヘクタール減)などでは、作付面積は減少している。作付面積の増加は茨城県のみで、上記の主産県以外の産地でも、面積は微減となっている。
ちんげんさいの作付面積が変動する要因としては、ちんげんさいがアブラナ科野菜であることから、他の軟弱野菜と組み合わせた作付けにより、根こぶ病などの連作障害を回避しているためである。
出荷量は、4万2300トン(前年比100.2%、100トン増)となっている。主産地の茨城県(同106.4%、700トン増)、長野県(同101.5%、30トン増)、沖縄県(同107.9%、90トン増)で増加したが、他の産地では、出荷量は作付面積の減少に伴い微減となっている。
10アール当たり収量については、静岡県が2.42トンと最も高収量で、茨城県が2.31トンと続き、全国平均では1.98トンとなっている。
ちんげんさいは、アブラナ科野菜であることから、根こぶ病などの連作障害が起きやすいため、アブラナ科以外の軟弱野菜との輪作体系の確立や、堆肥等の粗大有機物による土作りといった連作障害予防策が収量確保のポイントとなっている。また、ちんげんさいは上述の通り、栽培期間の短い軟弱野菜との輪作体系で栽培されることから、作付の都度施肥が行われ、ほ場中の肥料分や塩基類が残存しやすく、作物中の硝酸含有量が増加する。そのため、産地では、施肥コストおよび作物中における硝酸含有量の低減を図るため、適正施肥を心がけている。全国第1位の茨城県の中で、特に栽培面積の多い行方市では、同市を管内とするJAなめがたちんげんさい部会連絡会主導で、土壌分析を年2~3回実施し、ほ場中の残存肥料分および塩基類を確認し、適正施肥を励行している。また、ハウスでは、防虫ネットの展張と害虫予察用の粘着トラップを設置することを義務付け、ペストコントロールを励行することにより、化学肥料および化学農薬の使用量を、慣行栽培の5割以上削減し、特別栽培農産物認証を受けて出荷している。
品種を大別すると、収穫期に合わせて、耐暑性のあるもの、耐寒性のあるものに分けられる。全国的に多い品種では、晩抽性で耐寒性があり、幅広い時期に作付ができる「ニイハオ114」、夏どり用で盛夏期に向いている「夏賞味」、晩抽性で耐寒性がある「冬賞味」などがある。
東京都中央卸売市場のちんげんさいの月別県別入荷実績(平成24年)を見ると、多くの産地が周年出荷をしており、茨城県産、静岡県産および群馬県産は、毎月入荷されている。千葉県産については、8、9月が端境期となるが、長野県産が千葉県産の端境期を埋める形で入荷される。
大阪中央卸売市場のちんげんさいの月別県別入荷実績(平成24年)を見ると、静岡県産が周年で入荷している。東京と比較すると、東京では夏場だけの入荷となっている長野県産が、5月から11月までの長期入荷となっている。また、東京では周年で大量入荷する茨城県産については、春先から初夏を中心とした入荷となっている。
東京都中央卸売市場における価格の推移
国内産の東京都中央卸売市場の価格(平成24年)は、キログラム当たり176~380円(年平均単価261円)の幅で推移している。
年別の価格の推移を見ると、年間を通して一定の需要があるものの、気温が上がり加熱料理の需要が減少する夏期は価格が下がるが、気温が低下し、鍋などの加熱料理需要が伸びる冬期は価格が上昇する。
なお、軟弱野菜であるため、生鮮野菜としての外国産ちんげんさいは輸入されていない。
消費の動向
ちんげんさいは、中華料理に代表される食材で、主に炒めもの、煮物や蒸し物などの加熱調理に使われている。特徴としては、アクが少なく、ビタミンCやカロテンが多く含まれており、中華料理以外でも、さまざまな料理に活用できることから、日本に定着した代表的な中国野菜である。生産面では大規模な産地が少なく、市場等で言われている、いわゆるマイナー野菜として扱われるちんげんさいであるが、値ごろ感があり使い切れる量の包装で、栄養価が高いことから、年間を通して店頭に並んでいる。
また、軟弱野菜であることから生鮮輸入がされていないため、消費者は、国産、輸入の別を気にせずに手に取る野菜のひとつである。最近では、中華料理以外の加熱調理が増えただけでなく、サラダとして生で食べたり、浅漬など手軽に利用できるレシピが提案されていることから、新しい食べ方が増えてきている。