さといもは、宮崎県、千葉県、埼玉県、鹿児島県および栃木県の出荷量上位5県で、全国の出荷量のおよそ6割を占めている。このほかに、熊本県、静岡県、愛媛県などが主産地である。さといもは、生育適温が25~30度で日照が多く、高温多湿条件を好む野菜であることから、北海道を除く全国で生産されている。九州南部では、冬期でも温暖な気象条件を生かして、鹿児島県奄美地方の早掘りマルチ栽培ものが4月から、早熟トンネルものが6月からの出荷となる。本州などでは、早熟栽培ものが9月から、その後、普通栽培ものが10月から出荷され、12月まで出荷が続く。年明け以降は、普通栽培ものをほ場内で貯蔵し、5月まで貯蔵ものの出荷が行われるため、国産さといもは、年間を通して出荷が行われている。
さといもは、出荷時期により大きく、早掘り(4~10月)、普通(9~翌5月〈貯蔵含む〉)の作型に区分されている。
さといもの作付面積は、年々減少傾向にあり、平成24年の作付面積は、1万3400ヘクタール(前年比98.5%、200ヘクタール減)となっている。主産地の作付動向は、宮崎県(同102.4%、30ヘクタール増)で作付面積が増加しており、千葉県(同97.7%、40ヘクタール減)、鹿児島県(同97.7%、19ヘクタール減)などでは、作付面積は減少している。その他に、愛知県(同94.1%、24ヘクタール減)、静岡県(同94.5%、22ヘクタール減)などでも作付面積は減少している。
平成24年の出荷量は、10万9300トン(前年比102.1%、2,300トン増)となっている。主産地の宮崎県(同103.4%、700トン増)、鹿児島県(同104.9%、420トン増)、埼玉県(同100.9%、100トン増)などは増加しており、千葉県は、作付面積が減少したことから、600トン(同96.5%)と大きく減少した。
その他に、愛媛県(同120.8%、760トン増)、新潟県(同121.9%、660トン増)、神奈川県(同119.0%、660トン増)などは増加しており、熊本県(同95.6%、210トン減)などでは減少している。
平成22年は、2月の低温、多雨や夏場の高温の影響などから、出荷量は前年比で8,700トンの減少となった。平成23年は、夏場の高温や9月の台風の影響などがあったが、出荷量は前年比で3,300トンの増加となった。
平成24年は、出荷量は前年比で2,300トンの増加となった。これは、作付面積が減少している中、平成23年産の愛媛県産、宮崎県産などの貯蔵もののうち、年内出荷分が年明け以降にずれ込んだことなどによるものである。
平成24年の10アール当たり収量は、埼玉県が2.04トンと最も高収量で、宮崎県が2.01トンと続き、全国平均では1.29トンとなっている。
さといもは、多湿条件を好み、干ばつ条件下では立ち枯れ等により、収量が著しく減少することから、用水路や井戸等のかんがい設備が整備された水田で転作作物として作付けされている。主産地のうち、九州南部などの畑作地帯では、畑地かんがい設備を整備し、スプリンクラー等によるかん水を行っている。特に、早掘り作型で最も出荷の早い鹿児島県奄美地方では、かん水用の水を雨水に依存していることから、安定した水源確保のために、地下ダムの築造と畑地かんがい設備を整備し、さといもやさとうきび等のほ場で活用している。
宮崎県および鹿児島県では、県経済連等が冷凍加工工場等を運営していることから、他作物からの転作として、加工用さといもの作付けが伸びている。
品種は、九州南部をはじめとして、全国的に、粘質が強く、「きぬかつぎ」などに向いている早生種の「石川早生」が多く、関東地方などでは、煮崩れがしにくく、煮物等に向いている晩生種の「
鹿児島県では、主産地の奄美地方で水晶症(でん粉含量が低下するため、食味が低下する生理障害)の発生が多かったことと、調整労力の軽減を目的として、水晶症の発生が少なく、丸いもが多く、孫いもの発生が少ない早生種の「S05-19C」を育成し、作付けを行っている。調整労力の軽減を目的とした、丸いもの多い品種の育成では、千葉県が晩生種の「ちば丸」を育成し、普通作の後半で作付けが行われている。
東京都中央卸売市場のさといもの月別入荷実績(平成24年)を見ると、産地リレーにより周年で入荷しているが、主に埼玉県産、千葉県産、宮崎県産が多く入荷している。5月からは、鹿児島県奄美地方産の早熟ものが入荷されており、7月からは早生種の宮崎県産、千葉県産が、10月からは、晩生種の埼玉県産が入荷している。1月から5月は、埼玉県産および千葉県産の貯蔵ものが一定量で入荷している。
大阪中央卸売市場のさといもの月別入荷実績(平成24年)を見ると、東京都中央卸売市場と同様に周年で入荷している。東京と比較すると、入荷量に差があるものの、主に季節に応じて、宮崎県産、愛媛県産、鹿児島県産などが多く入荷しているなかで、1~2月は千葉県産、通年で中国産も入荷している。
東京都中央卸売市場における価格の推移
国内産の東京都中央卸売市場の価格(平成24年)は、キログラム当たり207~363円(年平均単価259円)の幅で推移している。
年別の価格の推移を見ると、天候等の影響を受けるものの、1月以降は、千葉県産および埼玉県産の貯蔵ものが一定量で入荷されるため、価格もほぼ一定となっている。貯蔵ものから、鹿児島県産の早掘りものに産地が切り替わる5~6月は、鹿児島県産の入荷量が少ないため、卸売価格は上昇基調となる。7月以降は、宮崎県産、千葉県産、埼玉県産が順次入荷され、入荷量も増加するため、卸売価格は、下落基調となる。
外国産の東京都中央卸売市場の価格(平成24年)は、キログラム当たり111~147円(年平均単価123円)の幅で推移している。
輸入のほぼ全量を中国産が占めており、卸売価格は、123円前後の安定した価格で推移している。外国産の卸売価格は、国内産の入荷量の影響を受けることから、国内産に連動した値動きとなっている。
輸入量の推移
生鮮さといもの輸入量は、平成16年には年間3万2667トンであったが、その後は減少傾向で推移し、平成21年には6,783トンとなった。平成23年には、輸入量は1万2079トンまでに増加したが、平成24年には、再び8,564トンまでに減少した。
冷凍さといもの輸入量は、平成16年には年間5万2051トンであったが、その後は減少傾向で推移し、平成22年には3万6297トンとなった。平成23年には、輸入量は増加に転じ、平成24年には3万9429トンとなっている。
生鮮さといもは、ポジティブリスト制度の導入などのほかに、国内におけるさといもの消費量が減少したことから、輸入量も減少した。平成22年以降に輸入量が増加した要因は、国内の天候不順等の影響や業務用への用途が増えたことによるものと見られる。冷凍さといもの輸入量は、安全安心の観点から一時減少したものの、業務用向けに増加傾向となっている。
平成24年の生鮮さといも輸入量を国別で見てみると、中国8,547トン(輸入量に占めるシェア99.8%)となっている。冷凍さといもは、中国3万9398トン(99.9%)となっている。
資料:農畜産業振興機構「ベジ探」(原資料:財務省「貿易統計」)
資料:農畜産業振興機構「ベジ探」(原資料:財務省「貿易統計」)
消費の動向
さといもは、パセリ、ほうれんそうに次いでカリウムが豊富に含まれており、またカロリーが低く、食物繊維も比較的多い食材である。煮物や汁物など和食の代表的な食材であることから、根強い需要はあるものの、一般家庭では、核家族化や個食化の進展、洗浄や皮むきなどの下処理や加熱など、調理にかかる手間や食の洋風化などにより、消費は減少傾向となった。皮むきされた調理済みのさといもが販売され、利用しやすくなった一面もあるが、1人当たり年間の購入量は、平成17年の944グラムから、平成23年では703グラムまで減少した。しかし、さといもを活用した和食以外でのメニューが増えたこともあって、平成24年は724グラムに回復している。冷凍品は、主に、外食および中食で利用されている。