作付面積・出荷量の推移
だいこんは、全国で栽培されており、出荷時期により春だいこん(4~6月)、夏だいこん(7~9月)および秋冬だいこん(10~3月)に区分されています。春だいこんや秋冬だいこんは、千葉県や神奈川県、鹿児島県などを中心に、夏だいこんは冷涼な気候の北海道や青森県などを中心に栽培されています。
平成23年の作付面積は3万4900ヘクタール(春だいこん4,890ヘクタール、夏だいこん6,840ヘクタール、秋冬だいこん2万3200ヘクタール)、出荷量は118万トン(春だいこん20万9900トン、夏だいこん22万4600トン、秋冬だいこん74万5800トン)となっています(作付面積、収穫量の全国計は、ラウンドの関係で春、夏、秋冬だいこんの合計値と一致していない)。
作付面積は減少傾向にあり、平成16年の4万ヘクタールから23年には3万4900ヘクタールと減少しています。出荷量も近年は125万トン前後で安定して推移していましたが、22年からは118万トンに減少しています。
作付面積の推移
出荷量の推移
平成23年の東京都中央卸売市場におけるだいこんの月別県別入荷数量を見ると、冷涼な気候を好むため、秋からの入荷が多くなりますが、年間を通して安定した入荷となっています。春は千葉県産、夏は冷涼な気候の北海道産と青森県産、秋から冬にかけては比較的温暖な千葉県産と神奈川県産の入荷が多くなっています。
平成23年 だいこんの月別県別入荷実績
(東京都中央卸売市場)
東京都中央卸売市場における価格の推移
東京都中央卸売市場における平成23年の価格の推移を見ると、キログラム当たり58~114円(年平均単価78円)となっています。
平成16年と比較すると、天候により卸売価格に変動はありますが、いずれも周年供給体制の確立により、価格の変動幅は年間を通して小さくなっています。
資料:東京都「東京都中央卸売市場統計」
輸入量の推移
平成23年の輸入量を見ると、生鮮だいこんは1,086トン(前年比11.8%減)、冷凍だいこんは251トン(同32.0%減)、乾燥だいこんは3,718トン(同19.9%増)となっています。23年の輸入先国を見ると、生鮮だいこんは、ほぼ中国からの輸入ですが、一部韓国からも輸入しています。冷凍だいこんと乾燥だいこんは、ほぼ全量を中国から輸入しています。16年は、日本国内の秋の天候不順の影響で、輸入量が大幅に増加しましたが、19年以降、消費者が安全性を重視したことから、輸入量は減少しています。冷凍だいこんは、おでんや煮物などに使用し、乾燥だいこんは、主に切干しになったものです。
資料:乾燥だいこんは農畜産業振興機構「ベジ探」(原資料:財務省「貿易統計」)、
生鮮だいこんと冷凍だいこんは農林水産省「植物防疫統計」
注:生鮮だいこんと冷凍だいこんについては、検査数量の数値である。
資料:乾燥だいこんは農畜産業振興機構「ベジ探」(原資料:財務省「貿易統計」)、
生鮮だいこんは農林水産省「植物防疫統計」
注:生鮮だいこんについては、検査数量の数値である。
購入量の推移
だいこんの1人当たり年間購入量は、サラダ、だいこんおろし、漬物、煮物やおでんなどと幅広く具材として使えるため、安定して推移しています。平成15年からのデータを見ると、近年は4,900グラム前後で推移しています。
資料:農畜産業振興機構「べジ探」(原資料:総務省「家計調査年報」)
胃もたれを予防してくれる“だいこん”
サラダや煮物、漬物など、さまざまな料理に用いられるだいこんは、春の七草のひとつ「すずしろ」にも数えられ、古くから親しまれてきた野菜です。
世界各地に野生種がみられるため、原産地については諸説あり明らかではありませんが、地中海沿岸地帯および中央アジアといわれています。栽培の歴史は野菜の中でも最も古いものの一つで、古代エジプトではピラミッド建設に際し、たまねぎやにんにくとともに二十日だいこんが支給されており、紀元前2000年には既に栽培されていたようです。日本へは、奈良時代より以前に中国から伝播したといわれており、『日本書紀』(720年)にも登場しています。だいこんは、生育期間が短く、比較的栽培しやすい野菜です。各地の風土に適応した地方品種が多く、江戸時代初期にはすでに周年栽培が成り立っていたといわれています。凶作時や冬場の保存食としても重宝され、漬物や切り干しなど、加工法の工夫が成されていきました。
だいこんの古名は大きな根を意味する「おおね」で、後に「大根」の字があてられるようになりました。これを音読みして「だいこん」と呼ぶようになったのは、室町時代以降といわれています。
だいこんは周年流通していますが、旬は12~2月です。主な産地は千葉県や北海道、青森県などで、根の上部が緑色の「青首だいこん」が市場流通の9割以上を占めています。
だいこんには、でん粉を分解する酵素が含まれているため、ご飯やパン、いも類などのでん粉食品の消化を助け、食べ過ぎによる胃もたれを予防してくれます。もちをだいこんおろしに絡めて食べたり、雑煮にだいこんを加えて食べる習慣は、理にかなった食べ方といえます。過食になりがちなこの季節、だいこんが救世主となってくれそうですね。
冬に出回るだいこんは、甘みが増してよりおいしく感じられます。
おすすめは、だいこんおろしときのこのお味噌汁です。おろし金ですりおろす手間はかかりますが、やさしい味わいが楽しめます。
おでんや鍋料理など、だいこんの登場回数が増える冬の食卓で、是非、その甘みを堪能してください。
情報提供:東京青果株式会社
加藤 宏一
おいしいだいこんを選ぶには
回転しながら生長するだいこんは、生長の跡ともいえる毛穴(側根)が斜めになっているものほど、細胞分裂が活発で辛み成分が多く含まれています。辛いものが好みの方は、毛穴が斜めになっているものを、苦手な方は、毛穴がまっすぐに並んだものを選びましょう。
だいこんの栄養と機能性
だいこんは、根の部分と葉の部分で含まれている成分が異なります。だいこんの根には、でん粉を分解して胃腸の働きを助けるアミラーゼや発がん物質を分解してがん予防の効果が期待できるオキシダーゼなどの酵素類が、葉には、粘膜を正常に保ち感染症を予防するカロテン、じょうぶな骨を形成するカルシウム、鉄欠乏性貧血を予防する鉄などのビタミンやミネラルが、豊富に含まれています。
また、共通して含まれる栄養成分として、細胞の新生や赤血球の生成に不可欠な葉酸、強い抗酸化作用によって有害な活性酸素から細胞を守るビタミンC、ナトリウムの排泄を促して高血圧予防が期待できるカリウム、腸内環境を改善する食物繊維などがあげられます。
「日本食品標準成分表2010」だいこん(葉および根・皮つき、生)より
30代女性1日当たりの栄養摂取基準量を100とした場合におけるだいこん(葉および根・皮つき、生)100グラム中に含まれる主な栄養素の割合(ただし、カリウムは目安量、食物繊維は目標量、そのほかは推奨量の値を用いた。)
監修:実践女子大学教授
田島 眞
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だいこんは、葉に近い上部ほど辛みが弱く、下部へいくほど辛みが増します。甘くてかたい上部はシャキシャキ感を楽しむサラダに、甘みがあってやわらかい中央部分は煮物やおでんに、辛みが強く、魚の焦げなどの発がん物質の分解を促進する酵素がたっぷり含まれている下部はおろしや漬物に用いると、よりおいしく食べられます。だいこんおろしにする際は、時間の経過とともにビタミンCの効力が低下してしまうので、できるだけ食べる直前におろしましょう。煮物の際は、下ゆですると苦味がとれ、米を加えた熱湯や米のとぎ汁でゆでると、白く仕上がります。
だいこんの葉は、ビタミンやミネラルがたっぷり含まれています。葉付きのだいこんを購入したら、是非利用しましょう。油を使った調理によりこれらの吸収率を高めることができるので、炒め物がおすすめです。
だいこんは、約95パーセントが水分なので、乾燥させないように気を付けましょう。葉に水分をとられるので、購入したらすぐに葉を根元から切り落とし、根と葉を別々に保存します。
根は、ラップで包むか野菜専用の保存袋に入れて、冷蔵庫の野菜室に立てて保存しまししょう。葉は、固ゆでして冷蔵するか、冷凍して保存しましょう。