作付面積・出荷量の推移
なすの生産は、出荷時期により主に、冬春なす(12~6月)と夏秋なす(7~11月)に区分されます。施設栽培の普及や栽培技術の向上により周年供給体制が構築されており、冬春なすは、高知県や熊本県などの温暖な地域で施設栽培により生産されています。一方、夏秋なすは、群馬県、茨城県や栃木県などの大都市近郊で主に露地栽培により生産されています。
生産者の高齢化や労働力不足による規模縮小などにより、作付面積、出荷量ともに減少傾向にあり、平成22年の作付面積は10,300ヘクタール(冬春なす1,210ヘクタール、夏秋なす9,050ヘクタール)、出荷量は247,200トン(冬春なす108,400トン、夏秋なす138,800トン)となっています(作付面積の全国計は、ラウンドの関係で冬春なす・夏秋なすの合計値と一致していない。)。
作付面積の推移
出荷量の推移
平成22年の東京都中央卸売市場におけるなすの月別県別入荷数量を見ると、5~10月に入荷が多く、冬春なすは高知県産、福岡県産、夏秋なすは栃木県産、茨城県産、群馬県産が主な産地となっています。
総入荷量約4万1千トンのうち、8割を長卵形なすが占めており(78.8%)、長なす(18.3%)、米なす(2.4%)、小なす(0.5%)がそれに続いています。
平成22年 なすの月別入荷実績
(東京都中央卸売市場計)
大阪府中央卸売市場におけるなすの月別県別入荷数量を見ると、5~9月の入荷が多く、徳島県産、大阪府産、高知県産、熊本県産、福岡県産、山梨県産などと全国各産地から入荷しています。
総入荷量約1万3千トンのうち、ほぼ全量(99.2%)を長卵形なすが占めています。
平成22年 なすの月別入荷実績
(大阪中央卸売市場計)
東京都中央卸売市場における価格の推移
東京都中央卸売市場における平成23年の価格の推移を見ると、長卵形なすはキログラム当たり275~498円(年平均単価356円)、長なすは210~417円(同334円)となっています。
平成15年と比較すると、いずれも入荷量の多い夏場に価格が安くなっていますが、周年供給体制の構築により、年間を通した価格の変動幅が小さくなっています。
資料:東京都「東京都中央卸売市場統計」
輸入量の推移
総輸入量の9割以上を塩蔵等なすと塩蔵等こなすが占めており、そのほか、主に業務用の漬物に使用される生鮮なすや、冷凍食品用の冷凍なすが輸入されています。
平成23年の輸入量を見ると、塩蔵等なすは3,461トン(前年比1.5%減)、塩蔵等こなすは1,767トン(同12.6%増)、生鮮なすは68トン(同12.4%減)、冷凍なすは29トン(同87.7%増)となっています。
平成23年の輸入先国を見ると、塩蔵等なすと塩蔵等こなすについては中国が9割以上を占め、残りがタイ、インドネシアからとなっています。生鮮なすについては全量韓国から輸入しています。冷凍なすの検査数量は、中国が9割以上を占め、タイ、ポルトガル、ベトナム、インドネシアがこれに続いています。
資料:農畜産業振興機構「べジ探」(原資料:財務省「貿易統計」)
購入量の推移
1人当たりのなすの年間購入量は、平成19年の1,660グラムをピークに減少し、平成22年以降は、1,500グラム程度となっています。
資料:農畜産業振興機構「べジ探」(原資料:総務省「家計調査年報」)
鮮やかな紫紺色が特徴の夏秋野菜“なす”
色鮮やかな「なす紺」がみやびやかな印象のなすは、私たち日本人にとって古くからなじみの深い野菜のひとつです。
なすの原産地はインドといわれており、わが国へは中国を経て渡来しました。いつ頃渡来したのか定かではありませんが、書物による最古の記録として『正倉院方書』(750年)になすを献上したという記述があったことから、奈良時代にはすでに栽培されていたようです。「一富士二鷹三なすび」や「秋なすは嫁に食わすな」など、なすに関することわざは多いですが、なすは古くから日本人の食生活に密接な関係を持ち、庶民の野菜として親しまれてきました。
なすの名の由来には、果実に若干の酸味があることから「中酸実(なすび)」と呼ばれたという説や、夏にとれる野菜をあらわす「夏実(なつみ)」が転訛したという説、よくなることから「為す」を意味するという説など、諸説あります。また、漢字の「茄」は植物を指し、「茄子」は果実を指すともいわれています。
なすは高温性の作物で、生育適温は22~30度です。古くから栽培されていたため、各地の天候適応性や嗜好性により品種が多様に分化し、水分が非常に多い大阪・泉州の水なすや、果実の大きさが15グラム程度と小型の山形の民田なすなど、風土色の強い品種が数多くみられます。果実の形や大きさにより、長卵形なす、長なす、大長なす、丸なす、小なすなどに分けられますが、関東以北では卵形の小~中型果、東海以西では卵~中長形の中~大型果、九州には長~極長の大型果の品種が多いようです。
なすの旬は7~9月で、主要産地は高知県や熊本県、群馬県などです。現在、市場流通の多い品種は長卵形の千両2号や式部で、長なすでは筑陽という品種が主流となっています。
なすは味にくせがないため、いろいろな料理に利用できます。漬物、焼き物、炒め物、揚げ物、煮物、汁物など、今が旬のなすは、食卓での出番が多くなりそうですね。
もっとおいしく!なすは体を冷やす野菜ですので、猛暑の続くこの時期に、ぜひとも食べていただきたい野菜です。
油との相性が良いので、油で揚げてカレーにトッピングしたり、味噌炒めにして食べるのがおすすめです。また、焼きなすを生姜醤油で食べれば、さっぱりと味わえます。
情報提供:東京青果株式会社
なすの栄養と機能性
なすは実の90%以上が水分で、ビタミン類やミネラル類の含有量は比較的少なく栄養価の低い淡色野菜ですが、カリウムや食物繊維を多く含んでいます。
カリウムは、体内の余分なナトリウムを排泄する働きにより血圧を下げ、高血圧の予防に有効とされています。また食物繊維は、腸内に発生した有害物質の排出を促す作用があり、便秘や大腸がんの予防が期待されています。
そのほか、血液を固める酵素の生成に不可欠で、けがや内出血を起こした時に止血をする働きがあるビタミンK、タンパク質や細胞新生に必要な核酸を合成するために重要な役割を担う葉酸などを含みます。
「日本食品標準成分表2010」なす(果実・生)より
30代女性1日当たりの栄養摂取基準量を100とした場合におけるなす(果実・生)100グラム中に含まれる主な栄養素の割合(ただし、葉酸およびマグネシウムは推奨量、食物繊維は目標量、そのほかは目安量の値を用いた)。
監修:実践女子大学教授
田島 眞
※クリックすると拡大します。
なすはアクが強く、切り口が空気にふれると変色しやすいので、切ったらすぐに水につけ、変色を防ぎましょう。
油との相性がよく、アクの渋みが油に溶け出て味がまろやかになります。また、紫色のもとであるナスニンは水に溶けるため、油に一度くぐらせてから調理すると、鮮やかな色が保てます。よく、漬物に釘やミョウバンを入れますが、これは、鉄やアルミニウムに反応するナスニンの性質を生かし、鮮やかな色を保つために行われています。
なす料理は、漬物、みそ炒め、焼きなす、みそ田楽などが一般的ですが、チーズ焼き、トマト煮込み、カレーなど、洋風の料理にもよく合います。
なすは水分が蒸発しやすく、特に、風に当たると早くしなびてしまいます。水分の蒸発を防ぐため、ラップに包んで冷暗所か冷蔵庫の野菜室で保存しましょう。低温に弱い野菜なので、冷やし過ぎには注意しましょう。
長く保存する場合は、煮物や炒め物など、調理をしてから密閉容器に入れ、冷凍保存します。ただし、生のまま焼いたものは冷凍保存には向きません。