作付面積・出荷量の推移
ほうれんそうは、千葉県、埼玉県、群馬県、茨城県、宮崎県、岐阜県で全国の出荷量の約5割を占めていますが、全国で生産されている作物です。平成21年の作付面積は22,400ヘクタール、出荷量は23万4,200トンとなっています。
平成14年と21年を比較すると、作付面積は24,400ヘクタールから22,400ヘクタールへと減少し、出荷量は24万9,600トンから23万4,200トンへと減少していますが、近年の出荷量は24万トン前後で安定して推移しています。
作付面積の推移
出荷量の推移
東京都中央卸売市場における平成21年のほうれんそうの月別県別入荷数量を見ると、入荷量の多い10月~3月にかけて群馬県産、千葉県産、埼玉県産が主体となって入荷しており、そのほかにも茨城県産などが入荷しています。夏季の6月~7月は、岩手県産や宮城県産といった東北地方にも産地が広がります。
平成21年 ほうれんそうの月別入荷実績
(東京都中央卸売市場計)
東京都中央卸売市場における価格の推移
東京都中央卸売市場におけるほうれんそうの平成21年の価格は、キログラム当たり289~632円(年平均単価496円)で推移しています。
ほうれんそうの平成14年と平成21年の価格の推移を見ると、いずれも出荷量が比較的少ない夏場が高値となっています。
輸入量の推移
平成21年の輸入量を見ると、冷凍ほうれんそうが22,084トンとなっています。過去には、生鮮ほうれんそうも輸入されていましたが、現在は、輸入量すべてが冷凍ほうれんそうとなっています。
平成21年の輸入先国を見ると、中国からの輸入は、冷凍ほうれんそう全体の83.1パーセントを占めており、次いでベトナムが7.2パーセント、台湾が6.9パーセント、タイが1.1パーセントとなっています。平成14年の輸入先国を見ると中国が大半を占めており、輸入先国の多角化が図られてきていると考えられます。
資料:農畜産業振興機構「べジ探」(原資料:財務省「貿易統計」)
消費量の推移
ほうれんそうの消費量は、ビタミンCや鉄分を豊富に含んだ栄養価の高い緑黄色野菜として人気があるため、安定して推移しています。平成14年からのデータを見ると、1人当たり年間購入量は、1,100~1,500グラムとなっており、近年は1,300グラム前後で推移しています。
一人当たり年間購入量の推移
資料:農畜産業振興機構「ベジ探」(原資料:総務省「家計調査年報」)
栄養豊富な緑黄色野菜の王様“ほうれんそう””
野菜を象徴する色といえば緑色ですが、緑色の野菜の代表格であるほうれんそうは栄養価が高く、「緑黄色野菜の王様」と呼ばれています。
ほうれんそうの原産地は西アジアで、ペルシャ(現在のイラン)地方では古くから栽培されていました。回教徒の聖地巡礼によって東西へ広まったといわれ、東洋へはシルクロードを経て7世紀頃中国に伝播し、華北へと伝わるうちに東洋種が生まれました。一方、ヨーロッパへは11世紀頃に北アフリカを経由して伝わり、西洋種が生まれました。日本へ最初に伝わったのは東洋種で、江戸時代に中国から渡来しましたが、幕末にはフランスから西洋種が伝わりました。その後、大正末期から昭和初期にかけて、東洋種と西洋種の交雑種が育成され、各地に普及していきました。アメリカの漫画映画の主人公「ポパイ」は、ピンチに陥ると缶詰入りのほうれんそうを食べて怪力を発揮しましたが、これによりほうれんそうは栄養価の高い野菜であることが広く知れ渡りました。昭和40年代の健康食ブームに乗っていっきに生産量が急増し、すっかりおなじみの野菜となっています。
ほうれんそう(菠薐草)の語源は、中国での呼称によります。ペルシャを意味する「菠薐」の発音‘ポーレン’を日本では‘ほうれん’と理解し、これに「草」をつけてほうれんそうの名が定着したようです。
ほうれんそうは周年生産されていますが、低温性作物で暑さに弱いため、夏場は高冷地での栽培やハウスを利用した栽培が行われています。また、現在流通している品種は、一代雑種(F1)が主流となっています。市場入荷量の多い産地は埼玉県の所沢や川越、群馬県の前橋周辺、茨城県の行方、栃木県の小山などで、夏場は岩手県や岐阜県の飛騨高山からの入荷が多くなります。近年、地球温暖化の影響により関東以西での栽培が難しくなり、夏場の生産量は減少傾向にあります。
ほうれんそうの旬は冬から春先にかけての11~3月で、この時期のほうれんそうは夏場のものと比べて栄養価が倍以上となり、また、収穫直前に霜に当たったものは繊維がやわらかくなって甘みが増します。
今が旬のほうれんそう。和風・洋風・中華風とさまざまな料理に用い、おいしく味わいましょう。もしかしたら、「ポパイ」のように思わぬ力が発揮できるかも知れませんね。
これからおいしさの増すほうれんそう。何といってもおすすめの食べ方は、ごまやピーナツ、シーチキンなどを加えたあえ物です。定番のおひたしにする際は、ポン酢やだし醤油などあっさりめの味付けにしましょう。ゆでてカサを減らし、また、うすめの味付けにすることで、副菜ながらもたくさん食べていただきたいです。
情報提供:東京青果株式会社ほうれんそうの栄養と機能性
ほうれんそうは、緑黄色野菜の中でも高い栄養価を誇る野菜です。特にカロテンやビタミンC、鉄分が豊富に含まれています。
カロテンは体内でビタミンAとして働き、皮膚や粘膜を正常に保ち免疫力を高めます。また、ビタミンCはコラーゲンの合成に必要なビタミンで、皮膚や骨の健康を維持します。カロテン、ビタミンCともに強い抗酸化力があり、老化やがんを抑制します。
そのほか、細胞の正常な働きをサポートし高血圧を予防するカリウムや、丈夫な骨や歯をつくり神経機能を調節するカルシウムなど、ミネラル類も豊富に含んでいます。
「五訂日本食品標準成分表」 ほうれんそう(葉・生)より
30歳女性1日当たりの栄養摂取基準量を100とした場合におけるほうれんそう(葉・生)100グラム中に含まれる主な栄養素の割合(ただし、ビタミンK、カリウムおよびビタミンEは目安量の値を、そのほかは推奨量の値を用いた)。
監修:実践女子大学教授
田島 眞
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ほうれんそうはアクが強いので、下ゆでしてから調理しましょう。このアクはシュウ酸によるもので、大量に摂取すると結石の原因になると言われていますが、シュウ酸は水溶性の成分なので、ゆでてアク抜きすれば問題ありません。
ゆでる際はたっぷりの熱湯に少量の塩を加え、茎の部分から先に入れると全体が均等にゆであがります。ゆですぎると栄養素が流失してしまうので、短時間で一気にゆであげましょう。ゆでた後はさっと冷水にさらし、水気をしっかり絞ります。
ほうれんそうの定番料理といえば、おひたしやあえ物、バターソテーですが、寒い季節にはクリーム煮やグラタンも人気メニューです。また、ピューレにしてパスタやパンに練り込むと、彩りもきれいです。
ほうれんそうの根元の赤い部分には、骨を形成するマンガンが多く含まれています。また、独特な甘みもあるので、捨てずによく洗って利用しましょう。
葉の表面から水分が蒸発するので、乾燥は禁物です。ぬらした新聞紙に包んでポリ袋に入れ、冷蔵庫の野菜室で根を下にして立てて保存すると、比較的長持ちします。
冷凍保存する際は固めにゆでて水けをよく切り、1回分ずつラップに包んで冷凍用保存袋などに入れ、しっかり空気を抜いて保存します。あらかじめ適当な長さに切り分けてから保存しておくと、お味噌汁などにそのまま使えて便利です。また、棒状にラップで包んで冷凍し、おろし金で凍ったまますりおろせば、簡単に裏ごしもできます。