作付面積・出荷量の推移
かんしょは、鹿児島県、茨城県、千葉県で全国の生産量の約6割を占めており、宮崎県、熊本県、徳島県、静岡県などでも生産されています。平成21年の作付面積は4万500ヘクタール、収穫量は102万6,000トンとなっています。
平成14年と21年を比較すると、作付面積はともに4万500ヘクタール、収穫量も103万トン程度と安定しています。
作付面積の推移
出荷量の推移
かんしょは、青果物として市場へ出荷されるほかでん粉原料や焼酎原料などの加工用に使用されているものも多いです。
東京都中央卸売市場における平成21年のかんしょの月別県別入荷数量を見ると、千葉県産、茨城県産が主体となっておりほぼ周年入荷しています。また、同年、大阪府中央卸売市場の月別県別入荷数量では、徳島県産、茨城県産、宮崎県産などが周年出回っていますが、入荷量の少ない6月は宮崎県産が中心となって入荷しています。
平成21年かんしょの月別入荷実績(東京都中央卸売市場計)
平成21年かんしょの月別入荷実績(大阪府中央卸売市場計)
東京都中央卸売市場におけるかんしょの平成21年の価格は、キログラム当たり140~226円(年平均単価178円)で推移しています。
平成14年と平成21年の価格の推移を見ると、出荷量の少ない夏場に比較的高値となっており、季節によって変動しています。
卸売価格の月別推移
総輸入量の大半をかんしょ(生鮮・乾燥)が占めており、そのほかにかんしょ(冷凍)が輸入されています。
平成21年の輸入量を見ると、かんしょ(生鮮・乾燥)が14,912トンとなっており、かんしょ(冷凍)が2,780トンとなっています。
平成21年の輸入先国を見ると、かんしょ(生鮮・乾燥)は中国からの輸入が99パーセントと大半を占めており、そのほかインドネシア、ベトナムなどから輸入されています。かんしょ(冷凍)は、ベトナムが95パーセントを占め、残りが中国からの輸入となっています。
輸入量の推移
輸出量の推移
かんしょ(生鮮・乾燥)の平成14年の輸出先は、シンガポール向けが全体の約7割を占めており、次いで中国、香港向けが多くなっています。平成15年以降、シンガポール向けは減少し、平成21年は、香港向けや台湾向けが増加しています。
消費量の推移
かんしょの消費量は、食味の良い品種が開発されたことで安定して推移しており、平成14年からのデータを見ると1人当たり年間購入量は、900~1,200グラムとなっています。
ダイエット中のおやつにもオススメ、甘い野菜 “かんしょ”
おやつとしてもおなじみの'かんしょ'は、子どもから大人まで広い世代に人気の野菜です。
原産地は中央アメリカで、15世紀にコロンブスがアメリカ大陸へ到達した際、ヨーロッパへ持ち帰られたことから、世界に広まっていきました。日本へは17世紀初めに中国から沖縄へ伝来し、その後は薩摩藩を中心とした南九州地方で広まりました。
'かんしょ(甘藷)'は、「甘みのある芋」を意味します。また、薩摩藩で栽培が盛んだったことから'さつまいも'とも呼ばれていますが、伝来当初の江戸時代には'蕃薯(ばんしょ)'と呼ばれていました。「蕃茄(ばんか)」はトマト、「蕃瓜樹(ばんかじゅ)」はパパイヤなど、「蕃」は南方系や夏に旬を迎える野菜によく付けられています。
'かんしょ'は高温・乾燥に強く、低温・多湿条件では生育しづらいため、関東以西が主産地となっています。一般的な旬は、新物が9~11月、貯蔵物は1~3月といわれており、貯蔵されてある程度水分が蒸発したものは甘みが濃くなります。11月に収穫された'かんしょ'は、ほぼ貯蔵物として出荷されますが、貯蔵技術が発達しているため9カ月位は貯蔵可能です。
関東での市場流通はホクホクとした'ベニアズマ'が主流ですが、関西では甘みの強い'高系14号'系統のもの(鳴門金時、坂出金時、五郎島金時など)が主流となっています。品質は年々向上しており、'べにはるか'や'べにまさり'といったしっとり感のあるものや、'安納芋'といった地物も脚光を浴びています。'かんしょ'は食用としてだけではなく、でん粉(異性化糖や春雨など)やアルコールの原料用としても栽培されており、国内生産量のうち、食用とする青果用に約5割、でんぷん粉用やアルコール用に約4割、飼料用その他に約1割消費されています。
煮物やコロッケなどの総菜から、いもご飯、汁物の具、スイートポテトなどのお菓子まで、色々な楽しみ方のある'かんしょ'は、美容と健康のうえでも優れた食材です。これから出回る'かんしょ'で、食卓からいち早く秋を感じましょう。
もっとおいしく! オススメの食べ方 定番の焼き芋やふかし芋もおいしいですが、1センチくらいにスライスしてオーブントースターで7~8分焼くと、カリッとした焼き目がついておやつに最適です。ホクホク系のものやしっとり系のもの、また最近では、‘べにはるか’などの水分含量が多く、電子レンジでもおいしく調理出来るものもありますので、それぞれの持ち味を生かしてお召し上がりください。
かんしょの栄養と機能性
かんしょの主な成分はエネルギー供給源となるでん粉ですが、ビタミンやミネラル、食物繊維も多く含まれています。
しみやそばかすを抑制するビタミンCは、りんごの約6倍も含まれています。熱に弱い性質を持つビタミンCですが、かんしょの場合は加熱によってでん粉が「糊化」し、膜となってビタミンCの消失を防いでくれます。また、強い抗酸化機能を発揮して老化を防止するビタミンEや、余分なナトリウムの排せつを促し、むくみの解消や高血圧予防に有効とされるカリウムも多く含みます。そのほか、切り口から出る白い液体成分“ヤラピン”は、食物繊維とともに便秘解消の効果があります。
「五訂日本食品標準成分表」 さつまいも(塊根・生)より
30歳女性1日当たりの栄養摂取基準量を100とした場合におけるさつまいも(塊根・生)100グラム中に含まれる主な栄養素の割合。(ただし、ビタミンC、ビタミンB6および葉酸は推奨量の値を、そのほかは目安量の値を用いた。)
監修:実践女子大学教授
田島 眞
かんしょは皮のすぐ下にあくが多く含まれていて、空気に触れると黒く変色するため、色よく仕上げるには切った後すぐに水にさらし、あく抜きをします。あく抜きの目安時間は、スイートポテトやきんとんなど色味を重視する料理の際には、10分程度さらすときれいに仕上がりますし、2~3分と短時間にすることにより、ビタミンCの流出を防ぐ効果があります。
かんしょは、ゆっくり加熱すると酵素がでん粉をブドウ糖に変え、甘みが増すので、じっくりと時間をかけて加熱調理し、素材本来の甘みを味わってみてください。
かんしょは寒さと乾燥に弱いため、冷蔵庫には入れず、新聞紙などで包み冷暗所で保存しましょう。使いかけのものはラップで包み冷蔵庫の野菜室に入れ、早めに使い切ります。
加熱すると冷凍保存も可能です。輪切りや角切りにしたものは、煮物や汁物に凍ったまま利用しましょう。つぶして冷凍する際は、平らにしてジッパー付きのポリ袋に入れ、箸などで溝を作っておくと、使う分だけ折って取り出せるので便利です。