作付面積・出荷量の推移
トマトは、全国で生産されていますが、熊本県、北海道、茨城県、愛知県、千葉県で生産量の約4割を占めます。平成21年の作付面積は1万2,400ヘクタール、出荷量は63万4,600トンとなっています。
平成14年と21年を比較すると、作付面積は1万3,300ヘクタールから1万2,400ヘクタールと減少し、出荷量も68万8,600トンから63万4,600トンとやや減少しています。
作付面積の推移
出荷量の推移
トマトの主要産地の出荷時期は、熊本県産が11~6月、栃木県産が2~7月、千葉県産が5~12月、愛知県産が12~6月となっています。
東京都中央卸売市場における平成21年のトマトの月別県別出荷数量を見ると、出荷量の少ない冬場にかけて、熊本県産の施設栽培による出荷が多く、5~11月にかけては多くの産地から出荷されています。
平成21年トマトの月別県別出荷実績(東京都中央卸売市場計)
東京都中央卸売市場における平成21年の価格は、トマトがキログラム当たり478~232円(年平均単価335円)、ミニトマトは、キログラム当たり786~408円(年平均単価565円)で推移しています。
卸売価格の月別推移
生鮮トマト、トマト加工品の輸入量は、トマト加工品が大半を占めています。トマト加工品の平成21年の主な輸入先は、トマトピューレ等は、中国が67パーセント、米国が30パーセント、ポルトガルが22パーセントとなっています。トマトケチャップは、米国が61パーセント、オランダが28パーセントを占め、トマトジュースはスペインが55パーセント、イスラエルが27パーセントとなっています。その他のトマト加工品はイタリアが84パーセントと大半を占めています。
また、平成14年の生鮮トマトの主な輸入先は、韓国のミニトマトが77パーセントと大半を占めていましたが、平成21年には韓国が38パーセント、米国が34パーセント、カナダが18パーセントとなっています。なお、平成18年にメキシコからの輸入が解禁となっており、平成21年には2パーセントを占めています。
輸入量の推移
国別輸入量
14年 生鮮トマト
21年 生鮮トマト
14年 トマト加工品合計
21年 トマト加工品合計
資料:農畜産業振興機構「べジ探」」(原資料:財務省「貿易統計」)
輸出量の推移
生鮮トマトは、平成18年まで輸出はされていませんでしたが、平成19年以降には、香港やマレーシアなどへ輸出されています。トマト加工品の平成21年の輸出先は、混合野菜ジュースは米国向けが最も多く、トマトケチャップは香港や中国向けが中心となっています。
輸出量の推移(生鮮トマト)
栄養満点で頼れる野菜“トマト”
フランスでは‘愛のリンゴ’、ドイツでは‘天国のリンゴ’と呼ばれている‘トマト’は、日本で最も愛されている野菜のひとつです。原産地は、ペルー、エクアドル、ボリビアにまたがるアンデス山地で、古くからインディオが食用にしていました。コロンブスの新大陸発見によりヨーロッパ各地へ伝わりましたが、当初はもっぱら観賞植物として栽培されていました。食用とされるようになったのは19世紀になってからで、イタリア・ギリシャを中心として、さまざまなトマト料理や調味料的加工品が作られるようになり、世界で最もポピュラーな野菜となりました。日本へは江戸時代初期に観賞用としてもたらされ、野菜として普及し始めたのは昭和に入ってからで、日本のトマト定着のきっかけを作ったのは‘ポンデローサ’という酸味の少ない桃色系の品種でした。
トマトの品種は果皮の色によって、赤色系、桃色系、黄色系に分けられます。世界的にみると、トマトの消費の多くは加熱調理に利用されるため、酸味と甘みの強い赤色系のトマトが主流ですが、日本では生食が中心のため、酸味やトマト臭が少ない桃色系のトマトが主流になっています。
現在は桃太郎シリーズが市場流通の約半数を占めていますが、‘麗容’や‘麗夏’なども増加傾向にあります。7月は出荷産地が南から北へシフトする時期ですが、震災の影響がある東北では、生活優先の状況で出荷スタートが遅めであるため、7月いっぱいは品薄が見込まれます。市場価格は平年よりもやや高めで推移しており、全体的に小ぶりなものが多く出荷されています。
トマトの栽培面積は減少傾向にあります。これは、トマトは他の野菜に比べて温度や水の管理など、栽培が難しく手間がかかることに加え、生産者の老齢化が進んでいるためです。ここ数年天候の変動が大きいこともありますが、いかにして「しっかりとした良い苗」を作っていくかが課題となるのではないでしょうか。
生で食べるなら、8~9月の青森県などの東北産や北海道産、2~3月の九州産のトマトが甘く、おすすめです。また、お盆前後は一時的に値が下がりお買い得になる時期があるので、ぜひその機会にまとめて購入し、トマトをたくさん食べてください。
もっとおいしく! オススメの食べ方
この夏は、ゴーヤチャンプルーのゴーヤをトマトに代えたトマトチャンプルーなどはいかがでしょうか。また、定番ではありますがトマトソースのパスタもおすすめです。加熱調理することで甘みが増しますし、そのまま食べるよりもたくさん摂取できますから、煮炊きしてトマトをたっぷりとご堪能ください。
おいしい“トマト”を選ぼう!
トマトの栄養と機能性
トマトはほかの野菜に比べて一度にたくさん食べられるため、栄養を摂取しやすいことが特徴です。
鮮やかなトマトの赤色はパッと目を引きますが、この赤色の成分は“リコペン”で、有害な活性酸素を除去する抗酸化物質が含まれており、老化の進行を抑制するほか、がんや動脈硬化を予防する働きがあります。さらに“リコペン”は熱に強く、煮たり焼いたりしても抗酸化力が低下しにくいという長所もあります。また、コラーゲンの生成を促すビタミンCも豊富なため、美肌効果が期待できます。そのほか、体内のナトリウムの排出を促すカリウム、毛細血管を強化して高血圧を予防する作用があるルチンなども含まれています。トマトの酸味の主な成分であるクエン酸は食欲を増進させる働きがあるため、食欲が低下しがちな暑い時期の食卓に積極的に取り入れると効果的です。
「五訂日本食品標準成分表」 トマト(果実・生)より
30歳女性1日当たりの栄養摂取基準量を100とした場合におけるトマト(果実・生)100グラム中に含まれる主な栄養素の割合(ただし、カリウムおよびビタミンB6は目安量の値を、そのほかは推奨量の値を用いた。)
監修:実践女子大学教授
田島 眞
そのまま冷やして食べてもおいしいですが、肉や魚の臭みを消すので、鰯などの青魚やラム肉などの味が濃い食材とも相性が良く、美味しい料理が出来上がります。また、加熱したトマトとオリーブオイルを同時に摂ると、生食の場合と比べてリコペンの摂取率が約4倍になります。トマトソースにする際は、トマトを丸ごとミキサーにかけてこし、弱火で20分ほど加熱します。そのままパスタソースにできるほか、カレーやシチューの隠し味にも使える「万能ソース」になります。
ミニトマトは横半分に切り、110℃に温めたオーブンで2時間じっくりと乾燥させると、甘みがぎゅっと凝縮されたドライトマトになります。
トマトは高温に強く低温に弱いため、冷やしすぎないようにします。完熟したトマトはヘタを下にしてビニール袋へ入れ、冷蔵庫の野菜室で保存し、青さの残っているトマトは常温で保存すると追熟します。また、完熟したトマトは丸ごと冷凍すると、水で洗うだけで皮が簡単にむけ、口当たりがよくなります。ピーマンやパプリカを加えてフードプロセッサーにかけ、塩やオリーブオイルで味を整えると、簡単に冷製ガスパチョのスープができあがります。