作付面積・出荷量の推移
たまねぎの生産量は、北海道が全国の約6割を占めており、次いで佐賀、兵庫、愛知県となっています。平成21年の作付面積は2万4,000ヘクタール、出荷量は101万5,000トンでした。
平成14年と21年を比較すると、作付面積は2万5,400ヘクタールから2万4,000ヘクタールと減少し、出荷量も104万2,000トンから101万5,000トンと減少していますが、これは天候不順の影響によるもので、平成19年や平成20年は110万トンを超えています。
作付面積の推移
出荷量の推移
たまねぎの主要産地の出荷時期は、北海道産が8~4月、佐賀県産が4~8月、兵庫県産が5~8月を中心にほぼ周年となっています。
東京都中央卸売市場における平成21年のたまねぎの月別県別出荷数量を見ると、北海道産は8~9月に収穫され翌年4月までの間出荷が行われます。4月以降は、佐賀県産、兵庫県産などの府県産のたまねぎが中心に出荷が行われます。
平成21年 たまねぎの月別県別出荷実績(東京都中央卸売市場計)
東京都中央卸売市場における平成21年の価格は、キログラム当たり78~142円(年平均単価102円)となっています。
平成14年と平成21年の価格の推移を見ると、いずれも北海道産の出荷量が多くなる9月に価格が下がる傾向にあります。また、平成21年は天候不順の影響により全国的に出荷量は少なく、価格は高値で推移しています。
卸売価格の月別推移
平成14年の輸入先を見ると、生鮮たまねぎは、中国が46パーセント、米国が42パーセントを占めていましたが、平成21年では、中国が全体の84パーセントとシェアを伸ばしました。
冷凍たまねぎは、ダイスカット状のものなどが、加工用原料として輸入されており、平成21年の輸入先を見ると、中国が大半を占めています。
また、乾燥たまねぎは、粉末や乾燥きざみたまねぎの状態で、米国、中国、エジプトなどから輸入されています。
輸入量の推移
国別輸入量
H14 生鮮たまねぎ
H21 生鮮たまねぎ
H14 冷凍たまねぎ
H21 冷凍たまねぎ
H14 乾燥たまねぎ
H21 乾燥たまねぎ
資料:農畜産業振興機構「べジ探」」(原資料:財務省「貿易統計」)
消費量の推移
家庭におけるたまねぎの消費量は、煮物、炒め物、揚げ物など何にでも使える食材として安定して推移しており、戦後の食生活の洋風化に伴い大幅に拡大しました。
平成14年からの消費量の推移を見ると1人当たり年間の購入量は、4,600~5,300グラムとなっています。
1人当たり年間購入量の推移
辛み・甘み・旨みの三拍子そろった“たまねぎ”
目と鼻にツーンとくる刺激的な'辛み'、舌がとろけるような'甘み'、カレーや肉じゃがなどの名脇役としての'旨み'など、好みに応じて調理することのできる万能野菜が'たまねぎ'です。
原産地は中央アジアといわれ、5千年以上もの間栽培されてきました。古代エジプトでは、ピラミッド建築の労働者への報酬や、神への供え物として用いられるなど、重宝されました。日本では、明治時代に本格的に栽培されるようになり、食の洋風化や高い保存性から、家庭の常備野菜として不動の地位を誇っています。
'たまねぎ'はその見た目から、根であると思われがちですが、実は葉の一部です。食用とされるのは、葉の下の方の「葉鞘」と呼ばれるところで、厚みを増して丸みを帯び、重なって球形になります。ねぎとそっくりな濃い緑色の葉茎をつけたまま、表皮を乾燥させると、貯蔵性を持たせることができます。
'たまねぎ'の生産量は近年、産地の固定化や機械化の促進により、それほど減少していません。現在の生産動向を見ると、昨年春の長雨や夏場の猛暑といった天候不順によって、全国的に不作となり、価格は高めで推移しています。主産地の北海道では、昨年の少雨の影響で作柄は小玉傾向となっています。北海道以外では、佐賀県、兵庫県、愛知県の生産量が多く、このうち愛知県では極早生種の生産が近年増加しています。また、業務用を中心に輸入物の需要もあります。
'たまねぎ'は、'春まき'または'秋まき'で栽培される'黄たまねぎ'の品種群があり、貯蔵しやすい性質から、店頭には1年を通じて出回っています。一般的に'たまねぎ'といえば、この'黄たまねぎ'がイメージされます。
一方で、春に旬を迎える'白たまねぎ'の品種群を中心とする'新たまねぎ'は、生で食べるとみずみずしく、独特の甘みがあるので、春の訪れを感じさせる野菜の代表格となっています。このほか'赤たまねぎ'の品種群もあり、料理の彩りとしても利用されています。
メインディッシュの付け合わせや食材、スパイスとして加えるほか、サラダ、みそ汁、スープなどあらゆる料理の食材として活用できる'たまねぎ'を毎日の食事に積極的に取り入れましょう。
もっとおいしく! オススメの食べ方
1年中出回る'黄たまねぎ'は、肉料理を中心に、あらゆる料理に欠かせない野菜です。
また、春先に出回る'新たまねぎ'は、サラダなどの生食が一番おいしいといわれていますが、丸ごと1個をブイヨンで煮て、スープと一緒に食べるのもおすすめです。
表面がやわらかく、締りがないものは、中が傷み、味が落ちている可能性があります。根が伸びているものは味も香りもよくないことがありますので、なるべく避けましょう。
たまねぎの栄養と機能性
たまねぎの大部分は水分で、ビタミンやミネラルはそれほど多く含まれていません。しかし、ケルセチンというフラボノイド色素の一種が含まれており、抗酸化作用があるので、発がん性物質の抑制や動脈硬化を予防する効果があります。
また、たまねぎ特有の香りは、交感神経を刺激して体温を上昇させることから、風邪の予防や脂肪の燃焼に効果があります。常備野菜として日頃から多く利用されている野菜ですが、改めて健康効果に注目してみると、一層用途が広がります。
「五訂日本食品標準成分表」 たまねぎ(りん茎・生)より
30歳女性1日当たりの栄養摂取基準量を100とした場合における、たまねぎ(りん茎・生)100グラム中に含まれる主な栄養素の割合(ただし、ビタミンB6、ビタミンCおよび葉酸は推奨値を、そのほかは目安の値を用いた。)
また、たまねぎの独特の香りと辛みのもとである‘硫化アリル’は、血液がサラサラになる効果が期待できます。
監修:実践女子大学教授
田島 眞
たまねぎを切ると、涙が出ることがありますが、冷蔵庫でよく冷やし、よく切れる包丁を使うことで、扱いやすくなります。生で食べる場合は、スライスして水にさらすと、辛みが抜けて食べやすくなります。水分が多い'新たまねぎ'は、甘みがあるので水にさらす必要もなく、サラダなど生食に向いています。
加熱する場合は、あめ色になるまで、じっくり弱火で炒めると甘みが増します。短時間で調理したいときは、電子レンジを使用すると、水分が多いので手早く加熱することができます。
たまねぎは、低温乾燥状態で2~3カ月保存が効く野菜です。ただし、湿気に弱いので、ネットに入れて風通しの良いところで吊るすか、1個ずつ新聞紙で包みましょう。使いかけは、切った面にラップをして冷蔵庫で保存し、2~3日で使い切るとよいでしょう。'新たまねぎ'は首の部分が傷みやすいので、なるべく早く食べるようにしましょう。冷蔵庫で保存する場合は1週間が目安です。
たまねぎは、解凍したときにベタつくので、球のままでは冷凍には向きません。スライスしたものを冷凍し、凍った状態で炒めると、簡単にあめ色たまねぎが出来上がります。カレーライスやオニオンスープを短時間で仕上げる裏技として利用するとよいでしょう。