作付面積・出荷量の推移
いちごは、関東、東海、九州地方を中心に栽培されていますが、栃木県(とちおとめ)、福岡県(あまおう)が全国の約3割を生産し、これに次いで熊本、静岡、長崎県の生産量が多くなっています。平成21年の作付面積は6,341ヘクタール、出荷量は16万8,100トンとなっています。
平成14年と21年を比較すると、作付面積は7,360ヘクタールから6,341ヘクタールと減少し、出荷量も19万1,200トンから16万8,100トンと減少傾向にあります。
作付面積の推移
出荷量の推移
いちごの主要産地の出荷時期は、栃木県産が11~5月、福岡県産が12~5月、熊本県産が12~4月、静岡県産が12~5月となっています。
東京都中央卸売市場における平成21年のいちごの月別県別出荷数量を見ると、3~4月を最盛期として、11~5月の間が主な出荷期間ですが、端境期となる夏場には、北海道や東北地方、高冷地の一部産地において、生産可能な品種を開発し出荷の試みが行われています。
平成21年いちご類の月別県別出荷実績(東京都中央卸売市場計)
東京都中央卸売市場における平成21年の価格は、キログラム当たり674~1,877円(年平均単価1,281円)となっています。
平成14年と平成21年の価格の推移を見ると、いずれも出荷量の少ない夏場に高くなっており、季節によって変動しています。
卸売価格の月別推移
平成14年以降の輸入状況を見ると、生鮮いちごは、主にケーキなどの材料として使用されており、平成21年の輸入先は、米国が全体の92パーセントを占めています。このほか韓国からも輸入されています。
また、冷凍いちごは、いちごジュースやいちごジャムなどの材料として使用され、平成21年の輸入先を見ると中国が大半を占めており、次いで米国、チリ、エジプトなどとなっています。なお、調製いちごは、かき氷のシロップやキャンディーなどに使用されており、米国、韓国、フランスなどから輸入されています。
輸入量の推移
国別輸入量
H14 生鮮いちご
H21 生鮮いちご
H14 冷凍いちご
H21 冷凍いちご
H14 調製いちご
H21 調製いちご
資料:農畜産業振興機構「べジ探」」(原資料:財務省「貿易統計」)
輸出量の推移
生鮮いちごの平成14年以降の輸出量を見ると、香港、台湾を中心に増加傾向にあり、近年は、シンガポールやタイにも輸出されています。
輸出量の推移(生鮮いちご)
宝石のように心躍る美しさ“いちご”
美しい赤色とほのかな香り、さらに口いっぱいに広がる甘さを楽しめることから、大人から子どもまで幅広い世代に人気を得ているのが、果実的野菜の‘いちご’です。
‘いちご’は、石器時代から食べられ、野生種がヨーロッパやアジアの広い地域で食用とされていました。栽培された‘いちご’のルーツは、18世紀のオランダといわれ、品種改良によって、現在のような大きく肉厚な品種ができあがりました。
日本での栽培は、明治時代からです。明治32年(1899年)に福羽逸人博士がフランスの品種を改良し、これを‘福羽(ふくば)’と命名しました。戦後の高度成長に伴って、ハウス栽培が普及し、‘福羽’から多くの新品種が生まれると、生産量が飛躍的に増え、身近な野菜となりました。
‘いちご’の丸く赤い実は、本来は果実ではなく‘花托(かたく)’と呼ばれる部分です。表面の種のような‘つぶつぶ’が本当の果実で、中に種が含まれています。‘花托’は果実を守る役割をしています。各地で品種改良が大変盛んに行われ、既存品種の交配などによって、より大きくて甘い品種が作り出されるなど、消費者の趣向に合わせ次々と主力商品が変化してきました。
‘いちご’は、栽培に手間がかかるため、近年、生産者の高齢化などによって生産量は減少傾向です。現在の生産動向を見ると、昨年夏の猛暑の影響で出荷が遅れ、供給量は少なめとなり、価格は高めで推移しています。主産地は、栃木県や太平洋沿岸の東海地方、福岡県を中心とした九州地方です。
‘いちご’の旬は12月~3月頃です。かつては4~5月頃の春先でしたが、ハウス栽培の普及や品種改良により変化し、クリスマス需要にも合わせています。出荷量が極端に少ない夏場には、業務用として‘米国産いちご’などが輸入されています。また、ロールケーキなど“スイーツ”の高級志向の高まりから、‘国産いちご’の業務需要も増しています。真っ赤な宝石のように美しい‘いちご’を楽しんで下さい。
もっとおいしく! オススメの食べ方
‘いちご’は、生が一番おいしく食べられます。鮮度が命の野菜であることから、新鮮なうちにサッと水洗いして食べましょう。
また、ロールケーキやサンドイッチの食材としても人気があります。真っ白な生クリームに包まれた‘いちご’を食べて、その甘酸っぱさを楽しむのもよいでしょう。
収穫後に追熟しないため、それ以上赤くなることも甘くなることもありません。一般的には、ヘタに近い部分まで濃い赤色を帯びているものが甘さの目安です。パックの底を見て、傷みがあるものや果汁がしみ出ているものは、古くなっているので避けましょう。
いちごの栄養と機能性
いちごは、野菜・果物の中でも、ビタミンCが豊富に含まれています。5~6個食べるだけで、1日に必要なビタミンCの量を取ることができます。ビタミンCには、抗酸化作用があることから、動脈硬化や脳卒中を予防する働きがあります。ストレスや喫煙により失われたビタミンCの補給に最適です。
そのほか、葉酸やカリウムも含まれています。葉酸は、ビタミンB群の一種で、赤血球を造成するために必要な物質です。カリウムは、余分な塩分を体外に排出する効果があります。スイーツの食材として食味を楽しむだけではなく、健康維持のためにも重要な働きをする野菜です。
「五訂日本食品標準成分表」 いちご(果実・生)より
30歳女性1日当たりの栄養摂取基準量を100とした場合における、いちご(果実・生)100グラム中に含まれる主な栄養素の割合(ただし、ビタミンCおよび葉酸は推奨値を、そのほかは目安の値を用いた。)
監修:実践女子大学教授
田島 眞
【調理のヒント】
いちごには、ビタミンCが豊富に含まれているので、生のままで食べるのが一番適しています。水洗いする前にヘタを取ると、ビタミンCが流れ出す上、味も水っぽくなってしまうので、ヘタを付けたまま洗いましょう。
また、ジャムにすると「つぶつぶ」が残り、いちごの食感を楽しむことができます。ジャムは、砂糖を多めに加えると長持ちします。鮮やかな色を保つために、レモン汁を加えると良いでしょう。
【保存方法】
いちごを新鮮で美味しく食べられるのは、2~3日です。水分がつくと傷みやすくなるため、洗わずラップに包むか、冷蔵庫で保存します。食べる直前に洗いましょう。
また、長く保存したいときは、冷凍します。冷凍する際は、バットで一つずつ凍らすのがポイントです。完全に凍ったらポリ袋に入れ保存すると、甘酸っぱくみずみずしい風味を長時間楽しめます。冷凍いちごは、牛乳・砂糖を加えてミキサーにかけると、「いちごスムージー」に早変わりします。