作付面積・出荷量の推移
にんじんは、全国で栽培されていますが、千葉県、北海道および徳島県が全国の生産量の約6割を占めています。平成20年の作付面積は1万9,300ヘクタール(春夏にんじん4,320、秋にんじん6,590、冬にんじん8,360)、出荷量は57万7,200トン(春夏にんじん14万2,700、秋にんじん19万6,800、冬にんじん23万7,700)となっています(作付面積の全国計は、ラウンドの関係で春夏・秋・冬にんじんの合計値と一致していない)。
平成14年と20年を比較すると、作付面積は2万500ヘクタールから1万9,300ヘクタールと減少しているものの、出荷量は56万1,700トンから57万7,100トンと増加しており、ここ数年は55万トン前後で安定して推移しています。
作付面積の推移
出荷量の推移
にんじんの主要産地の出荷時期は、千葉県産が11~3月および5~7月、北海道産が7~11月、徳島県産が3~5月となっています。
東京都中央卸売市場における平成20年のにんじんの月別県別出荷数量を見ると、主要産地による産地リレーが確立されており、1年を通して安定して供給されています。
平成20年にんじん類の月別県別出荷実績(東京都中央卸売市場計)
東京都中央卸売市場における平成21年の価格は、キログラム当たり80~159円(年平均単価124円)となっています。
平成14年と平成21年の推移を見ると、いずれも出荷量の少ない夏場に価格が高くなっており、季節によって価格が変動しています。
卸売価格の月別推移
生鮮にんじんおよび冷凍にんじんの平成14年以降の輸入状況を見ると、平成17~18年にかけて天候不順により国内産が不作であったことから、生鮮にんじんの輸入が増加しています。生鮮にんじんは、中国に次いで、ニュージーランドや台湾などからも輸入されています。また、冷凍にんじんの輸入先を見ると中国が大半を占めており、ジュース用に濃縮された冷凍にんじんなども輸入されています。
輸入量の推移
国別輸入量
H14 生鮮にんじん
H21 生鮮にんじん
H14 冷凍にんじん
H21 冷凍にんじん
資料:生鮮にんじんは農畜産業振興機構「べジ探」(原資料:財務省「貿易統計」)、
冷凍にんじんは農林水産省「植物防疫統計」
注:冷凍にんじんについては、検査数量の数値である。
消費量の推移
にんじんの消費量は、家庭においても和食、洋食、中華などなんにでも使える食材として安定して推移しています。また、緑黄色野菜の栄養が手軽に取れる野菜ジュースの原料として、欠かせない存在となっています。平成14年からのデータを見ると1人当たり年間購入量は、2,600~2,900グラムとなっています。
1人当たり年間購入量の推移
好きな野菜に進化を続ける“にんじん”
子どもの嫌いな野菜の代表格と思われてきた‘にんじん’に、近年変化の兆しが見られます。品種改良で、にんじん独特のにおいも少なくなり、甘さを追求したものが多く出回るようになりました。その鮮やかで暖かみのあるオレンジ色の印象も手伝って、好きな野菜の上位へと進化し続けています。
原産地はアフガニスタン周辺といわれています。私たちが普段口にする‘にんじん’はオレンジ色が主流ですが、原産地では、白色、黄色、紅紫色、黒紫色などもあり、その形も長いものや丸いものなど多種多様です。
日本の‘にんじん’は、‘東洋系にんじん’と‘西洋系にんじん’に大別されます。最初に、‘東洋系にんじん’が16世紀頃に中国から伝わりました。以前から薬用として使われていたウコギ科の‘朝鮮にんじん’に形が似ていたことから、セリ科の野菜であっても‘にんじん’と呼ばれてきました。
明治時代に、オランダやフランスで品種改良が行われた‘西洋系にんじん’が日本に伝わり、栽培期間が短く、収穫作業のしやすい短根であることから、現在は‘西洋系にんじん’が主流となっています。
現在の生産動向を見ると、昨年春の多雨や夏場の猛暑の影響で不作となり、供給量は一年を通して少なめで、価格は高めに推移しています。主産地は、夏は北海道および東北地方、秋冬や春は千葉県や徳島県を中心とした関東以西です。
‘にんじん’の本来の旬は、9月から12月頃です。‘春夏にんじん’‘秋にんじん’‘冬にんじん’などに区分され、一年を通して栽培されています。また、冬場に土の中に埋めて保存できる特徴もあり、貯蔵性が高い野菜です。
‘にんじん’は、その甘みが和食・洋食だけでなく、お菓子やジュースの食材としても適しています。オレンジ色が食卓を華やかに彩り、‘カロテン’をたっぷり含んでいるため、生食でも加熱料理でも、毎日積極的に食べたい野菜です。
もっとおいしく! オススメの食べ方
‘にんじん’は、彩りも鮮やかで用途も多様なので、多くの料理に欠かせない野菜です。ポテトサラダやきんぴらだけでなく、てんぷらにして食べても、甘味を味わうことができます。
また、‘にんじん’の葉はおいしい上、栄養が豊富ですので、健康食として使ってみると一味違った料理が楽しめます。
生育期間中の凍傷や日焼けによって表面が黒ずむ場合があるので、茎のつけ根まで色がしっかりついているものを選びましょう。茎のつけ根は根の芯につながっているので、つけ根が細いものは甘い証拠です。
にんじんの栄養と機能性
にんじんは、緑黄色野菜の中でもカロテンが豊富に含まれています。にんじんのオレンジ色は、このカロテンによるものです。カロテンは、体内で健康な生活に欠かせないビタミンAに変化するので、にんじんを約50グラム食べると、1日に必要な量のビタミンAを取ることができます。
そのほか、カリウムや食物繊維も含まれています。カリウムには、体内の塩分を排出し、高血圧を予防する効果があります。食物繊維は便秘や痔の解消に効果がある上、血糖値の上昇をゆるやかにする作用があります。身近な健康野菜として、一年を通じてにんじんをたくさん食べると良いでしょう。
「五訂日本食品標準成分表」 にんじん(根・生)より
30歳女性1日当たりの栄養摂取基準量を100とした場合における、にんじん(根・生)100グラム中に含まれる主な栄養素の割合(ただし、カリウム、葉酸および食物繊維は、目安量の値を、そのほかは推奨量の値を用いた。)
監修:実践女子大学教授
田島 眞
【調理のヒント】
にんじんに含まれているカロテンは、油に溶けやすい物質です。カロテンは皮の部分に多く含まれているので、皮を薄めにむいて、油と一緒に調理すると体内への吸収が促進されます。バターを使った煮込み料理として有名な「グラッセ」は、理にかなったものといえます。「きんぴら」などの炒め物もよいでしょう。
茎のつけ根の部分は苦いので、取り除くのがよいでしょう。葉つきの場合は、葉にはカロテンのほか、カリウムなどのミネラルを多く含んでいるので、葉も積極的に利用するとよいでしょう。この場合は、葉の部分を十分に水洗いしてから使ってください。
【保存方法】
にんじんは、冷蔵庫で1~3週間もつので、非常に保存に適した野菜です。冷やすと甘みも増すので、ラップに包むか、ポリ袋に保存して、冷蔵庫に入れておくとよいでしょう。また、水気があると腐敗しやすくなるので、にんじんを入れたポリ袋内に水蒸気がたまっていたら、水気を拭いて、出来るだけ早めに使い切りましょう。