作付面積・出荷量の推移
だいこんは、全国で栽培されていますが、主に冬季は関東地方、夏季は北海道および東北地方において生産が行われています。平成20年の作付面積は3万6,600ヘクタール(春だいこん5,010、夏だいこん7,150、秋冬だいこん2万4,500)、出荷量は125万トン(春だいこん22万2,100、夏だいこん23万、秋冬だいこん79万7,700)となっています(作付面積・収穫量の全国計は、ラウンドの関係で春・夏・秋冬だいこんの合計値と一致していない)。
作付面積は減少傾向にあり、平成14年の4万2,500ヘクタールから平成20年には3万6,600ヘクタールへと減少しています。出荷量も136万トンから減少していますが、近年は125万トン前後で推移しています。
作付面積の推移
出荷量の推移
だいこんの主要産地の出荷期間は、千葉県産が10~5月、神奈川県産が12~3月、北海道産が7~10月、青森県産が6~10月となっています。
平成20年の東京都中央卸売市場におけるだいこんの月別県別出荷数量を見ると、夏季には北海道、青森県などから、冬季には神奈川県、千葉県などからの入荷が行われています。
平成20年だいこんの月別県別出荷実績(東京都中央卸売市場計)
東京都中央卸売市場における平成21年の価格は、キログラム当たり52~112円(年平均単価76円)で推移しています。
平成14年と平成21年の推移を見ると、季節による価格差が少なく、一年を通して安定的に出荷されていることがわかります。
卸売価格の月別推移
平成14年の輸入は、生鮮だいこん、冷凍だいこんのほとんどを中国産が占めています。平成16年には、日本国内の秋の天候不順の影響で、生産量が減少したため、輸入量が大幅に増加しました。しかし、平成18年以降、消費者が安全性を重視し、国産志向となったことから、輸入量は急激に減少しています。
平成21年の輸入先国を見ると、生鮮だいこんは中国が90%を占め、オランダが9%、韓国が1%となっています。また、冷凍だいこんは、中国が98%、インドネシアが2%を占めています。
輸入量の推移
資料:農林水産省「植物防疫統計」
国別輸入量
H14 生鮮だいこん
H21 生鮮だいこん
H14 だいこん(凍結)
H21 だいこん(凍結)
資料:農林水産省「植物防疫統計」
注:凍結(冷凍)だいこんについては、検査数量の数値である。
消費量の推移
家庭でたくあんなどの漬物にする習慣が少なくなったため、一般家庭での消費は減少しています。平成14年からのデータを見ると1人当たり年間購入量は4,500~5,400グラムで推移しています。
夏季に出荷されただいこんは辛味が強く、だいこん下ろしなどの生食用に向いており、冬季に出荷されただいこんは、煮物やおでんなどに使用されています。
また、近年は核家族化の影響により、店頭では1本売りのほか2分の1や3分の1にカットしたものが販売されています。
1人当たり年間購入量の推移
食材の三冠王“だいこん”
シャキシャキしただいこんサラダ、コリコリしたたくあん漬け、ホクホクした煮物やおでんの具に使われる‘だいこん’は、多彩な食感と見た目の美しい白さで、日々の食生活を豊かにしてくれる野菜です。
原産地は地中海沿岸から中央アジアと言われており、インドを経由して中国に伝わったと考えられています。
日本へは中国から伝わったといわれ、日本最古の書物である「古事記」にも記されています。日本各地の風土に適した地方品種が多く生まれ、日本の‘だいこん’の品種の数は世界で最も多くなっています。江戸時代の後半には、現在の品種の基礎になる品種が出揃いました。春の七草のひとつとして‘すずしろ’とも呼ばれ親しまれてきた‘だいこん’は、凶作時にも漬物や切り干しなどの保存食として加工され重宝されてきました。近年‘だいこん’の生産量は減少傾向ですが、中心的な野菜として消費されています。
現在、‘だいこん’は、根の上部の色の違いによって、‘白首だいこん’と‘青首だいこん’の2つの品種群が中心となっています。流通の主流は、上部が青い‘青首だいこん’で、辛みが弱く甘みが強いことが好まれています。根の全面が白い‘白首だいこん’は、漬物や刺身のツマなどで多く利用されています。
今年の生産動向を見ると、夏場の猛暑による高温や干ばつなどの影響により生育が遅れたため、供給量は不足気味となりました。10月に入ってからは気温が高めであったことから、生育は回復してきましたが、関東地方の産地に生育の遅れが見られ、価格はやや高値で推移しています。
出荷される季節によって、春だいこん、夏だいこん、秋冬だいこんに区分されますが、春から夏にかけて出回るだいこんは、辛みが強くだいこん下ろしなど生食用に向いており、秋冬だいこんは甘みが増しているので煮物やおでんなどに向いています。‘だいこん’は、1年を通して出荷されていますが、旬はみずみずしく甘みが強くなる12~2月です。
‘だいこん’は、煮てよし、漬けてよし、生でよしと、料理の食材として欠かせない存在で、まさに‘太くて長い’野菜です。
‘だいこん’は下ろして、そばや焼き魚などの薬味として食べることが昔から知られていますが、吸い物などに入れても美味しい上に、消化を助けてくれます。
最近は、だいこんサラダも人気がありますが、寒い冬には、温かいおでんの食材として、‘だいこん’で体の中を芯から温めましょう。
葉つきのものは日持ちも風味も良いですが、養分を葉にとられてしまうので、早めに葉を切り落としましょう。もちろん葉も食べられます。使いやすいように、根を2分の1や4分の1の大きさにカットしたものは、断面がみずみずしいものが新鮮です。
だいこんの栄養と機能性
大部分が水分のだいこんは、栄養のバランスに優れた野菜です。特に抗酸化作用を持つビタミンCは、加熱すると失われてしまいますが、だいこんには多く含まれているので、正常な細胞を保護する効果があります。ビタミンCを多くとりたい時は、サラダなど生食の食材として利用しましょう。
そのほか、カルシウムや食物繊維もバランスよく含まれています。秋から冬にかけて煮物やおでんなど汁ごと食べる機会が多いので、食物繊維を多くとるための野菜として最適です。食物繊維は便秘の解消に効果があり、生活習慣病の予防にもなります。また、だいこんの葉は、栄養豊富なので健康な食生活のため、積極的に利用すると良いでしょう。
「五訂日本食品標準成分表」だいこん(葉および根・生)より
30歳女性1日当たりの栄養摂取基準量を100とした場合における、だいこん(葉および根・生)100グラム中に含まれる主な栄養素の割合(ただし、カリウムおよび食物繊維は、目安量の値を、そのほかは推奨量の値を用いた。)
監修:実践女子大学教授
田島 眞
【調理のヒント】
だいこんを調理する際は、季節や根の部分で使い分けると良いでしょう。
白首だいこんは、根の上の方に甘みがあるので、サラダや下ろしなどの生食用として最適です。青首だいこんは白首だいこんと逆で、根の下の方が生食に向きます。春から夏のだいこんは辛みが強く、冬のだいこんは甘みが増すという特徴もあります。
また、下ろすと、時間が経つにつれビタミンCが失われますが、下ろした直後に少し酢を加えると、ビタミンCが壊れにくくなります。消化酵素も含まれているので、だいこん下ろしを料理に加えると、消化も良い上に、一味違ったものになります。
【保存方法】
だいこんは、大部分が水分ですので、乾燥を防ぐようにして保存しましょう。寒い季節には、新聞紙に包んで風が直接当たらないところに置けば、1週間は保存できます。冷蔵庫に保存する場合は、ラップに包み、野菜室で切り口を上にして保存しましょう。葉つきの場合は、保存の前に葉を切り落としましょう。葉は固ゆですれば、冷凍保存も可能です。