シャリッとした食感がおいしい‘すいか’は、暑い夏の喉の渇きをさわやかに潤す果実的野菜です。
原産地は、アフリカ中部の砂漠地帯や南部のカラハリ砂漠と考えられています。栽培の歴史は古く、約4000年前に‘すいか’の栽培が行われていたと推定される壁画がエジプトに残されています。その後、インドからシルクロードを経て、中国へと広がった‘すいか’には、「西域から伝わった瓜」という意味から「西瓜」という字が当てられました。日本へは17世紀に中国から渡来したと言われますが、現在、日本で栽培されているものは、明治初期に米国から導入された品種の純化系や在来種との雑種系の流れをくむものです。
‘すいか’は、形や大きさで大玉、小玉、正円形、楕円形に分けられ、果皮の色には、緑に黒縞、縞が無く全面黒、全面黄色の品種があります。果肉の色も赤、黄、オレンジとバリエーションが豊富です。
ハウス栽培により冬でも出回りますが、旬は露地物の最盛期となる7~8月です。
今年の生産動向を見ると、4月の低温の影響を受けて全国的に出荷の遅れや小玉傾向といった生育不良がありましたが、その後の天候の回復により品質や収量も例年並みに戻りつつあります。
‘すいか’は、夏を代表する果実的野菜ですが、果物消費の多様化により消費は減少傾向にあります。また、長雨や冷夏が続くと消費が伸び悩むと言われています。近年、1玉単位での販売以外に、カットされた状態で販売されることが多く、昔に比べ消費者も求めやすくなっています。夏の限定商品として、すいか飲料やすいかのゼリーなどの商品も提案されており、すいかの新しい楽しみ方が増えています。
すいかのうまみは、冷たいシャリ感とさわやかでジューシーな甘みにあります。適度に冷やしたすいかを大きめにカットして食べるのがおいしい食べ方です。残ったすいかは、果肉の部分をミキサーにかけてゼリーやシャーベットにして食べるのもおすすめです。
すいかの栄養と機能性
‘ウォーターメロン’とも呼ばれるすいかの約9割が水分であることから、体を冷やす作用があり、夏場の熱中症予防や解熱などに効果があります。
すいかの果肉は、カリウムやアミノ酸の一種であるシトルリンを豊富に含み、むくみの解消や利尿作用があります。すいかの絞り汁を煮詰めて作るすいか糖は、昔から民間療法の一つとして利用されており、むくみ防止や風邪など喉の痛みの緩和や痰がからむ時に飲むと効果的です。また、赤肉すいかにはリコピンが含まれており、がんや老化を予防する効果が期待できます。
「五訂日本食品標準成分表」 すいか(生)より
30歳の女性1日当たりの食事摂取基準を100とした場合におけるすいか(生)100グラム中に含まれる主な栄養素の割合(ただし、ビタミンA・C・B6・マグネシウムは推奨量の値を、そのほかは目安量の値を用いた)。
監修:実践女子大学教授
田島 眞
【調理のヒント】
すいかの一番甘いところは中心部なので、大勢で食べる時は真ん中の部分が全員に行き渡るように切って食べましょう。食べ頃の温度は15度前後なので、冷やしすぎには注意しましょう。甘みを強くしたい場合は、塩を振ると一層甘みを感じることができます。
また、すいかの種は縞模様に沿って分布しているので、縞と縞の間を切ると切断面にあまり種が出ないように切ることができます。用途に応じて切り方の工夫をしましょう。
【保存方法】
すいかは完熟した状態で収穫されるので、冷やしてすぐ食べれば、本来の甘みやシャリ感が楽しめます。すぐに食べない場合は、丸のまま冷暗所で保存しましょう。カットしたものは、すぐにおいしさが失われてしまうので、ラップで包んで冷蔵庫の野菜室で保存し、なるべく早く使い切りましょう。また、すいかの保存に適した温度は8~10度で、これ以上の低温で保存したり冷凍すると味が落ちるので注意しましょう。
作付面積・収穫量の推移
すいかの生産は、熊本県、千葉県、山形県の3県で全国の約4割を占め、このほかにも北海道、鳥取県、新潟県、長野県などで生産されています。
すいかは、生産者の高齢化や労働力不足による規模縮小などにより、作付面積、収穫量ともに減少傾向にあり、平成12年と20年では、作付面積が16,900ヘクタールから12,300ヘクタール、収穫量も580,600トンから402,000トンと減少しています。
すいかの出回り時期は、4~6月の熊本産に始まり5~7月の千葉産、6~7月の鳥取産、6~8月の長野産、7~8月の山形、秋田などの東北産と北海道産がリレー出荷されます。熊本県など一部の産地では、施設栽培の普及や栽培技術の向上により周年供給体制が構築されていますが、最盛期は6~8月となっています。小玉すいかは、群馬、茨城産が主力で、4~7月に出回ります。
作付面積の推移
収穫量の推移
平成20年の東京都中央卸売市場におけるすいかの月別県別出荷数量を見ると、6~8月が最も多く、冬季になると少なくなる夏型野菜といえます。
総入荷量約68,803トンのうち、すいか(83.8%)、小玉すいか(16.2%)となっています。
平成20年すいか類の月別県別出荷数量
東京都中央卸売市場における平成21年の価格の推移を見ると、すいかはキログラム当たり117~314円(年平均単価197円)、小玉すいかは167~568円(同294円)となっています。
平成12年と比べると、いずれも出荷量の多い夏場に価格が安くなっていますが、すいかに比べ小玉すいかは、冬季の価格の上昇幅が大きい傾向にあります。
卸売価格の月別推移
総輸入量のほとんどを生鮮すいかが占めており、そのほかに、加工用のカットされた冷凍すいかが輸入されています。
平成21年の輸入量を見ると、生鮮すいかが287トン(前年比約3倍)となっていますが、平成14年に急激に減少した輸入量は低迷を続けています。
平成21年の輸入先国を見ると、生鮮すいかは韓国が57%を占め、残りが米国となっています。冷凍すいかの検査数量は、ベトナムが77%を占め、残りがタイとなっており東南アジア地域からの輸入となっています。
輸入量の推移
国別輸入量
14年生鮮すいか
21年生鮮すいか
14年冷凍すいか
21年冷凍すいか
輸出量の推移
生産量が減少している中で、少量ですがクウェート、台湾、カナダ、アラブ首長国連邦、ロシア、香港などに輸出されています。平成18年から福井県が台湾向けに輸出を開始し、平成21年には、鳥取県がロシアのウラジオストック向けに生鮮すいかを輸出しました。
輸出量の推移(生鮮すいか)