口に運ぶと、パリッとした食感とさわやかな香りがいっぱいに広がるレタスは、フレッシュサラダに欠かせない野菜です。
栽培の起源は、約2500年前の古代エジプトといわれており、地中海沿岸から西アジアにかけて広く分布する野生種をもとに地中海地域で品種改良が重ねられ、結球レタス、結球しないリーフレタス(葉レタス)、半結球のロメインレタス(立ちレタス)、茎と茎から生える葉を掻き取って食べるステムレタス(茎レタス・掻きちしゃ)など、各種レタスに分化しました。
日本には、奈良時代に中国を経由して「掻きちしゃ」が伝わり、ポピュラーな野菜としてなますや煮物などにして食されていました。
現在流通の大半を占める「結球レタス」が導入されたのは、江戸時代末期になってからで、戦後、進駐米軍の特需野菜として栽培が始まり、高度経済成長とともに食生活の洋風化が進むと、産地でも鮮度劣化の早いレタスを全国出荷できるよう真空予冷技術・保冷車が導入され、生産量が一気に増加しました。
比較的冷涼な気候を好み、冬季は西南暖地、春と秋は平野部、盛夏期は標高1400メートル位の高原や北海道と季節によって産地を変えて周年出荷されていますが、おいしい時期は4~9月といわれています。
年間を通して消費は堅調で、カット産業や外食産業など過半を占める加工・業務用需要の増加により、彩り鮮やかで歩留まりの良いリーフレタスの新品種も次々と出回っています。
最近の価格動向を見ると、日照不足と低温による霜害により入荷量が減少し、平年を大きく上回る価格で推移していましたが、天候の回復により出荷が本格化し、平年並みの価格での推移が予測されます。
もっとおいしく! オススメの食べ方
リーフレタスやサラダ菜は、生でサラダにしたり、サンドイッチに挟んだり、焼き肉を包んだりして食べるのが主流ですが、結球レタスはそのほかに、サッと炒めたり、スープにしても色鮮やかで歯触りの良いアクセントになり、おいしく食べられます。
おいしい“レタス”を選ぼう!一方、リーフレタスは、緑色が鮮やかで葉先までハリがあるものを選びましょう。葉先がしおれたり、切り口が褐変したものは、鮮度が落ちているので、避けましょう。
水分が多く、低カロリーのレタスは、カロリー過多になりやすい現在の食生活に魅力的な野菜です。
結球レタスとリーフレタスでは栄養価が異なり、結球レタスは、カロテン、ビタミンB1、C、カリウム、食物繊維などを少量ずつ含みます。一方、緑黄色野菜であるリーフレタスは、カロテンやビタミンC、E、Kなどのビタミン類を豊富に含みます。緑の濃い葉に豊富に含まれるビタミンEは、「若返りのビタミン」とも呼ばれ、強い抗酸化作用があるため、老化を遅らせたり、動脈硬化を予防する効果が期待できます。
双方に豊富に含まれるビタミンKは、「止血ビタミン」とも呼ばれ、けがをしたときの血液の凝固や丈夫な骨づくりにも関与しています。
「五訂日本食品標準成分表」 レタス(結球葉・生)・リーフレタス(葉・生)より
30歳の女性1日当たりの食事摂取基準を100とした場合におけるレタス(結球葉・生)・リーフレタス(葉・生)100グラム中に含まれる主な栄養素の割合(ただし、葉酸・ビタミンA・C・B1は推奨量の値を、そのほかは目安量の値を用いた)。
「レタスを食べると眠くなる」といわれますが、‘ラクチュコピコリン’には、自律神経のバランスを整え、鎮静・催眠促進作用があるため、リラックス効果が期待できます。また、食欲を増進し、肝臓や腎臓の機能を高める効果も期待できます。
監修:実践女子大学教授
田島 眞
金気を嫌い、包丁を使うと茶色く変色するので、調理の際は手でちぎって使いましょう。包丁で切るよりも断面が粗くなるため、ドレッシングも絡みやすくなります。また、ちぎったレタスは冷水にサッと浸し、食べる直前まで冷蔵庫で冷やすとパリッと歯触りが良くなります。浸し過ぎは、ビタミンCの減少につながるので注意しましょう。また、加熱する際は、歯触りを損なわないよう、強火で手早く炒めましょう。
【保存方法】
日持ちが悪く、鮮度が落ちると苦みが強くなるので、なるべく早めに使い切りましょう。
余分な水分があると傷みやすいので、保存する場合は、水気をよく切り、ポリ袋に入れるかラップに包んで冷蔵庫の野菜室へ。芯に水を含ませたキッチンペーパーを当てておくと、長持ちします。
作付面積・収穫量の推移
レタス類の生産は、出荷時期により春レタス(4 ~ 5月)、夏秋レタス(6 ~ 10月)および冬レタス(11 ~ 3月)に区分されます。産地リレーや施設栽培の普及によって周年供給体制が構築されており、春レタスは茨城県や兵庫県などの大都市近郊の農業地帯で、冬レタスは比較的温暖な茨城県や静岡県、香川県などでトンネル栽培されています。一方、夏秋レタスは長野県や群馬県などの高冷地や北海道などで冷涼な気候を生かして露地栽培により大規模に生産されています。
作付面積を見ると、平成12年の21,710ヘクタール(春レタス4,470、夏秋レタス8,770、冬レタス8,470)から平成21年の20,800ヘクタール(春レタス4,320、夏秋レタス8,620、冬レタス7,880)と漸減傾向で推移しています。一方、収穫量は50 ~ 56万トンの間で増減を繰り返しており、平成21年は548,000トン(春レタス121,800、夏秋レタス239,100、冬レタス187,100)となっています。
レタス類の作付面積の推移
レタス類の収穫量の推移
平成20年の東京都中央卸売市場におけるレタス類の月別県別出荷数量を見ると、総入荷量約9万6千トンのうち、8割以上を結球レタスが占めており、サニーレタス、グリーンリーフレタスなどの非結球レタスがそれに続きます。
主な産地の主要入荷時期は、長野県産が5~10月、茨城県産が3 ~ 5月・10 ~ 12月、静岡県産が12 ~ 3月、香川県産が12 ~ 4月、群馬県産が5 ~ 9月となっています。
平成20年レタス類の月別県別出荷数量
夏秋の露地栽培が中心のレタス類は、天候に左右されやすく、また、過半を占める加工・業務用の需要に敏感に反応することもあり、価格変動が激しい野菜の一つです。
東京都中央卸売市場における平成21年の価格の推移を見ると、結球レタス計はキログラム当たり66~253円(年平均単価145円)、非結球レタスであるサニーレタス計は154~383円(同252円)となっており、いずれも平成12年と比較するとキログラム当たり30~40円程度安値で推移しています。
月別卸売価格の推移
輸入量の推移を見ると、冬季を主体としたファストフード向けなど加工・業務用に一定量の輸入があり、結球レタスとその他のレタス(非結球レタス)の構成割合は、それぞれの国内産の作柄によりその影響を受けます。
平成21年の輸入量を見ると、結球レタスは国内産の品薄から輸入が増加し、前年比166.3%の3,034トンとなっています。一方、その他レタスは国内産の増加に伴い、近年減少傾向で推移しており、平成21年は前年比25.7%減の185トンとなっています。
平成21年の結球レタスの輸入先国は、台湾が7割近くを占め、残りが米国となっています。一方、その他レタスは全量米国から輸入されています。
輸入量の推移
国別生鮮輸入量
12年結球レタス
21年結球レタス
12年その他レタス
21年その他レタス
輸出量の推移
気温が高く台風が多い夏季に輸入が多い台湾向けを中心に、近年輸出量は増加傾向で推移していましたが、平成20年は多雨による影響で品質が安定しなかったことから、21トンと大幅に減少しました。平成21年は天候不順の影響があったものの、92トンと再び増加に転じています。米国産と比較して柔らかく甘みの強い日本産のレタスは、現地でも高い評価を受けています。
輸出量の推移
消費量の推移
1人当たりのレタスの年間購入量は、平成16年以降、増加傾向で推移し、平成21年は1,923グラム(前年比5%増)となっています。
1人当たり年間購入量の推移