さわやかな甘みと食感が楽しい緑鮮やかなグリーンアスパラガス、独特の風味とほろ苦さを持つ真っ白なホワイトアスパラガス、栽培方法は異なりますが、同じ品種のアスパラガスから栽培されます。
原産地は、南ヨーロッパからロシア南部にかけての半砂漠的草原地帯です。古代ギリシャやローマを中心に栽培され、その後ヨーロッパ全域に拡大しました。
日本へは、江戸時代に鑑賞用として輸入され、食用として広く栽培されるようになったのは1871年に北海道開拓使によって導入されたのが始まりといわれています。
第二次世界大戦以前は、アスパラガスといえば、缶詰加工用に軟白栽培するホワイトアスパラガスでしたが、食生活の洋風化、健康志向の高まりとともに、地上に伸びた緑の若茎を収穫するグリーンアスパラガスが主体となって消費されるようにになり、現在、流通量の9割以上を占めています。最近は、これ以外にも、紫アスパラガスやミニアスパラガスなど、色や大きさのバリエーションも増えています。
ハウス栽培の普及や海外からの輸入により、1年を通して流通していますが、露地栽培の春芽取りが多く出回る5 ~6月にかけて出荷のピークを迎えます。この時期のアスパラガスは香りと味が濃く栄養価も高まります。
最近の国内の生産動向を見ると、お彼岸明けの寒気の影響により、一部の産地で生育遅れが生じていますが、総体的には、おおむね生育は順調です。出荷量の増加により、やや安値での推移が予想されます。
もっとおいしく! オススメの食べ方
新鮮なものはあまり手をかけず、ゆでてマヨネーズをかけてサラダにしたり、グリルで焼いて塩、しょうゆで味わうシンプルな料理で持ち味を楽しめます。また、天ぷらやソテーにする場合は、ゆでずに生のアスパラガスを使うと、風味が生きておいしいです。
おいしい“アスパラガス”を選ぼう!
緑色が鮮やかで、穂先が締まっているものを選びましょう。また、茎が真っすぐに伸び、全体に張りがあるものが新鮮です。
切り口が乾燥したり変色しているものや、茎が曲がったものは、鮮度が落ちているので、避けましょう。
アスパラガスの中でも栄養価の高い品種は、太陽を浴びて育ったグリーンアスパラガスで、ビタミン類を豊富に含みます。特に葉酸を多量に含むので、貧血気味の人にはおすすめです。
穂先の部分には、ルチンやグルタチオン、アスパラギン酸といったアミノ酸の一種を含み、茎の基部には、サポニンの主要成分であるプロトディオシンを含みます。
中でも、豊富に含まれるアスパラギン酸には体内でエネルギー代謝を活発にし、疲労回復を早める効果があります。また、アンモニアを尿として排せつする作用があり、イライラや不眠症を防ぐ効果も期待できます。同時に末梢血管を拡張して、血圧を下げるので、高血圧を改善し、動脈硬化の予防に効果を発揮します。
「五訂日本食品標準成分表」 アスパラガス(若茎・生)より
30歳の女性1日当たりの食事摂取基準を100とした場合におけるアスパラガス(若茎・生)100グラム中に含まれる主な栄養素の割合(ただし、葉酸・ビタミンC・B1は推奨量の値を、そのほかは目安量の値を用いた)
アミノ酸の一つであるグルタチオンは、加齢とともに肝臓で合成されにくくなるため、老化の進行に大きく関わっています。近年、グルタチオンは、アスパラガスの穂先に多く含まれることが発見されました。
グルタチオンは、強い抗酸化力を持ち、活性酸素の働きを抑えて、シワ・たるみなどといった老化を防止するほか、がんの予防効果などが期待できます。
監修:実践女子大学教授
田島 眞
根元の硬い部分だけを切り落とします。また、根元の皮が硬い場合は、皮むき機か包丁で削り取ってから調理しましょう。アスパラガスは先端にいくほど軟らかいので、ゆでる際は、塩をひとつまみ加えたたっぷりの湯に、根元からゆっくり入れると、全体が均一にゆで上がります。ホワイトアスパラガスは、ゆで湯にレモン汁を加えると、きれいな色に仕上がります。ゆでたアスパラガスは、水にさらさず、ざるに広げて冷ますと、水っぽくならず風味良く仕上がります。
【保存方法】新鮮であればあるほど軟らかく、おいしく食べられるので、なるべく買ったその日のうちに使い切りましょう。ラップで包むかポリ袋などに入れて冷蔵庫の野菜室に入れれば1 ~ 2 日保存が可能です。横向きに置くと穂先が上向きに起きようとする性質があり、その際使われるエネルギーで栄養素が失われて鮮度が早く落ちてしまうので、穂先を上にして立てて保存しましょう。長期保存するときには、色が変わる程度にサッとゆで、粗熱を取ってから冷凍しましょう。
作付面積・収穫量の推移
アスパラガスの主産地は、北海道や長野県、秋田県などの寒冷地と、佐賀県、長崎県、香川県などの西南暖地に分布しています。
作付面積の推移を見ると、2000年の5,759ヘクタールから2008年の6,540ヘクタール(113.6%)とかなり大きく増加しています。収穫量も、2000年の21,708トンから2008年の26,600トン(122.5%)と増加傾向で推移しています。
作付面積の増加率に対し収穫量の増加率が大きいのは、施設栽培や長崎県、佐賀県などにおける立茎栽培(春収穫した後に3~5本の茎を親株として残して育て、養分を根に残しながら長く収穫を続ける栽培方法)の普及により、10アール当たりの収量が2000年の0.377トンから2008年の0.407トン(8.0%増)とかなりの程度増加したことによるものです。
作付面積の推移収穫量の推移
2008年月別県別出荷実績
東京都中央卸売市場における2009年の価格の推移を見ると、国内産計はキログラム当たり690~1,920円(年平均965円)、外国産計は520~900円(年平均655円)と、総じて国内産価格が外国産を上回っており、特に国内の生産量が減少する11月から4月にかけてその差が大きくなっています。
卸売価格の月別推移
2009年の輸入数量を見ると、生鮮アスパラガスが10,780トン、ホワイトアスパラガスの缶詰加工品を中心とするその他調製アスパラガスが1,193トンとなっています。また、冷凍アスパラガスの検査数量は、1,399トンとなっています。
2009年の輸入先国は、生鮮については、メキシコ、豪州が5割以上を占め、タイ、ペルー、米国がこれに続いています。また、その他調製は、中国が9割以上を占め、ペルー、スペインがこれに続いています。冷凍については、中国、チリが全体の9割を占めています。
輸入数量の推移を見ると、生鮮、その他調製については、国内産の増加に伴い、2000年以降、減少傾向で推移しています。冷凍については、2002年以降、在庫調整などにより増減を繰り返していましたが、2008年に主要輸入先国である中国の食品安全性が問題になったことから、2002年と比較してマイナス69.4%と大幅に減少しています。
輸入数量の推移
2002年国別生鮮輸入数量
2009年国別生鮮輸入数量
2002年国別その他調整輸入数量
2009年国別その他調整輸入数量
2002年国別冷凍検査数量
2009年国別冷凍検査数量