栄養豊富なこまつなは、ほうれんそうと並んで、人気のある緑黄色野菜です。原産地は日本ですが、中国から渡来してきたかぶが祖先といわれています。
江戸時代初期、現在の東京都江戸川区の葛西付近に葛西菜という葉菜があり、味の良い
こまつなの茎の左右に葉が添っている部分は「はかま」と呼ばれ、葉型により
栽培期間が短く、いろいろな環境に適応できるため、露地栽培とハウス栽培を組み合わせることにより、年間4~8回作付けされ、一年を通して出回ります。昭和30年頃までは、秋冬期のみ栽培され、年末年始には「冬菜」、「春のウグイス菜」などの名称で流通していたとおり、冬が旬の野菜で、おいしい時期は12~2月にかけてです。12月に入り、霜に当たると葉肉が厚く柔らかくなり、あくが抜けて甘みが増します。
最近の価格動向を見ると、暖冬のために生育は順調で、平年に比べ7~8割の価格で推移しています。正月には、東京風の雑煮に欠かせない野菜として引き合いが強くなるため、若干高値での推移が予想されます。
もっとおいしく! オススメの食べ方
葉の緑色が鮮やかでみずみずしいものが新鮮です。また、茎は太くハリがあるもの、株張りが大きめのもので30センチほどまで生育したものがおいしいです。
葉が黄化し、しおれが進行しているものは、鮮度が低下しているため、避けましょう。
緑黄色野菜の中でも栄養価の高いこまつなは、動物性食品に含まれるもの以外のすべてのビタミン、ミネラルを豊富に含みます。
こまつな100グラムで1日の目安量の3倍を摂取できるビタミンKは、止血作用があるほか、カルシウムが骨に沈着するときに必要なたんぱく質を活性化させる働きがあるので、骨の形成に役立ちます。
また、体内でビタミンAに変わるカロテンやビタミンCも豊富に含んでおり、ともに強い抗酸化作用があるため、動脈硬化を抑制したり、がんを予防したりする効果が期待できます。貧血の予防になる鉄分も多く含むため、貧血になりやすい若い女性にたくさん食べてもらいたい食材です。
そのほか、胎児の正常な発育に不可欠なビタミンである葉酸も豊富に含んでおり、妊婦の方にもおすすめの食材です。
「五訂日本食品標準成分表」 こまつな(葉、生)より
30歳の女性1日当たりの食事摂取基準を100とした場合におけるこまつな(葉、生)100グラム中に含まれる主な栄養素の割合(ただし、ビタミンK・カリウムは目安量の値を、そのほかは推奨量の値を用いた)。
こまつなは、ほうれんそうの3倍以上のカルシウムを含みます。カルシウムは、骨や歯を丈夫にするだけでなく、心臓の筋肉を正常に働かせるなどの重要な役割を持ちます。
また、カルシウムが不足するとイライラするといった状態になることがありますが、十分に摂取することで、ストレスを和らげる効果が期待できます。カルシウムの吸収率を高めるには、ビタミンDを豊富に含む魚介類と一緒に食べると、一層効果的です。
カルシウムが不足しがちな成長期の子どもに積極的に食べて欲しい野菜です。
ほうれんそうと違って、あくが少ないので、下ゆでする必要がありません。強火で手早く炒めあげると、ビタミンCの損失も少なく、シャキッとした歯触りで鮮やかな緑色になります。おひたし、和え物などにする場合は、たっぷりの塩湯に根元から入れます。歯ごたえが残る程度にサッとゆでたら、冷水に取って冷まし、ざるで水気を切ってから使います。
油やたんぱく質と一緒に食べるとカルシウムの吸収率が高まるので、鍋物や炒め物などにすると栄養効果満点です。
【保存方法】作付面積は、2004年の5,510ヘクタールから2008年の5,840ヘクタールへと漸増傾向にあり、出荷数量も、2004年の71,200トンから2008年の79,600トンへと漸増傾向となっています。主産県は、関東地区では、埼玉県、東京都、神奈川県、千葉県、関西地区では、大阪府、京都府、兵庫県であり、都市近郊産地が主要供給産地となっています。2008年で見ると、埼玉県、東京都、神奈川県、千葉県の4都県で作付面積の36.7%、出荷量の43.5%を占めています。
東京都中央卸売市場の月別・県別入荷量を見ると、埼玉県、東京都、茨城県などから年間を通じて入荷があります。
東京都中央卸売市場における価格の推移は、キログラム当たり200円から400円と季節により変動がありますが、特に冬季における変動が大きくなっています。
3 輸入動向
こまつなは、財務省「貿易統計」では、単品での集計が行われていないため、農林水産省植物防疫所「植物防疫統計」の検査数量により輸入の動向を見てみると、生鮮での輸入は、価格が高騰した2004年に中国から27トン輸入された程度でありますが、冷凍では、2004年2,817トン、2005年2,390トン、2006年2,746トン、2007年1,813トン、2008年1,143トン輸入されており、輸入先国は、中国が検査数量のほぼ全量を占めています。輸入数量は、国内価格が低迷した2005年に減少しているなど、国内の作柄や在庫調整などにより変動していますが、2008年は、主要輸入先国である中国の食品安全性が大きな問題となったことから大幅に減少しました。
なお、2009年1月から10月の検査実績においては、中国758.8トン、インドネシア8.7トンの合計767.5トンとなっています。