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東京都足立区、葛飾区、江戸川区(こまつな)
シャキッとした新鮮なこまつなを栽培

東京都中央農業改良普及センター東部分室
主任改良普及員 吉村 聡志


産地の概要

 東京都の江東地区(本稿では足立区、葛飾区、江戸川区を意味し、以下、「江東三区」とする)は、東京都の東端に位置し、荒川、江戸川、中川に接する歴史ある下町情緒と、巨大都市「江戸・東京」の食を支えた農産物の供給基地の面影を残す地域です。

 江東三区の総面積は137.9平方キロ、そのうち耕地面積は210ヘクタール(総面積の約1.5パーセント)を占めています。

 江東三区内には617戸の農家(うち販売農家数は435戸)がありますが、農業後継者のいる農家数が234戸と、比較的後継者が多いのが特徴です。また、パイプハウスなどの施設栽培が多く、施設のある販売農家は197戸、その面積は34ヘクタールとなっています。


こまつなの作付面積と耕地面積の推移

 現在生産している主な農産物は、野s菜では主力のこまつなをはじめ、えだまめがありますが、そのほかでは、江戸川区鹿骨の「鉢花」や「花苗」、足立区の「切花」など伝統ある花きの産地も抱えています。

 前述のように江東三区は川に接した低地であるため、土壌は基本的に沖積土壌ですが、乾燥すると固くしまって根が切れやすいなど、栽培管理上の不都合がありました。そのようなことから、今では赤土を客土注)とした土壌の畑が多くなっています。

注)栽培に適した土壌とするために、性質の異なる土を混ぜて土壌を改良すること。

 江東三区では、古くは水田、果菜類、葉菜類、花卉園芸など多様な農業経営がなされていましたが、周辺環境の変化とともに、まず水田が姿を消し、ほかの作物の多くも農地利用効率の良い軟弱野菜の生産へと切り替わってきました。中でもこまつなは、当地江戸川区の小松川地区が発祥の地といわれ、江東三区の特産品として盛んに生産されています。

 こまつなは栽培期間が短く、年間で最大7~8回も作付けが可能なため、経営上の優位性が有ることや、連作障害が起きにくく作りやすいこと、カルシウムを多く含むため栄養面でも注目され需要が伸びたことなどが、都内のみならず周辺の埼玉県、千葉県などにも産地を形成することとなり、今では全国に産地が広がる野菜に成長しました。

 また、「小松菜」の名は、徳川綱吉(一説には吉宗)が命名したという話が伝えられており、栄養面だけでなく物語性でも大衆受けしやすい野菜であったことが、全国的に広まった要因の一つではないかと思います。

 一方、こまつなの作付面積は、江東三区だけで東京都の作付面積のおよそ半分を占めますが、昭和の終わりから平成の始め頃をピークに、耕地面積の減少とともにこまつなの作付面積も減り、現在ではピーク時の半分以下になりました。

作付け体系(周年生産)と品種

 こまつなは、5~9月まきでは、は種後21~24日程度で収穫できますが、冬の露地栽培では、10月下旬まきで50~65日、11月中・下旬まきでは70日以上かかります。

 一方、収穫量は、秋冬作では10アール当たり2トン程度の収量が期待できますが、夏場ではその半分程度まで収量が低下します。さらに夏場の収穫適期は2日程度と短く、冷涼になるにしたがって収穫適期は長くなります。

 以上のような栽培特性のほか、作業性や市場性を加味して品種を組み合わせ、年間の作付け計画を立てます。こまつなは、年間に最大で8回程度作付けできますが、江東三区では5~6回が多いようです。

 こまつなは現在、多くの品種が販売されていますが、江東三区では、秋冬作に「わかみ」、「なかまち」、「夏楽天」などが、夏作では「いなむら」、「まさみ」、「浜ちゃん」などが利用されています。品種選択のポイントは、葉の形や色、生育日数、収量性、収穫し易さ(草姿の立ち性)、ひげ根の量、食味、荷姿など多岐にわたりますが、生産者によって求める品種特性が異なるため、常に新しい品種が注目されています。

こまつなの作型例(施設栽培)

○ は種  ■ 収穫


草姿が立ち性の品種は、
収穫作業性が良い

ひげ根が少ないと抜きやすく
洗う際に土を落としやすい

栽培のポイント

 こまつな栽培の最大のポイントは、生育を揃えることです。そのため江東三区では、は種機にクリーンシーダ(種まき機)が多く採用されています。クリーンシーダは、は種精度が生産者から高く評価されているようです。また、むらの無いかん水も大きなポイントです。は種直後と生育中に適宜かん水チューブによる地上かん水を行いますが、収穫一週間前程度からかん水を止めます。生産現場では、かん水むらによる生育のばらつきが時々見られます。



クリーンシーダによるは種作業
かん水むらによる不揃いな生育


は種直後にチューブでかん水
初期生育の揃った様子

栽培上の特色
~IPM(総合的病害虫管理)による農薬に頼らない生産~

 江東三区では、「安定生産」「耕地の高度利用」を目指して施設化が進められてきましたが、最近では「病害虫防除」の観点からも、積極的に施設が利用されています。施設栽培では、従来から白さび病(葉の裏側に白い斑点ができる病気)の発生が少ないことが知られていました。これに防虫ネットを利用することで害虫の侵入を防ぐことができ、被覆資材を近年開発が進んだ紫外線カットフィルムにすることでアザミウマ類などの微小害虫の侵入を激減させることができます。こういった都の中央農業改良普及センターなどが開発した防除技術を組み合わせたIPM型パイプハウスが、江東三区で導入され、農薬に頼らない安全・安心なこまつなの生産が行われています。

出荷の工夫 ~荷姿にこだわり根付の平束~

 江東三区のこまつなは、市場出荷が中心で、荷姿は多くの他産地と異なり、袋詰めではなく、根付きで平たく結束した束で出荷します。畑で抜き取りながら結束し、根についた泥を洗って保冷庫に収め、箱詰めの後、生産者自らが市場に出荷します。葉も根もシャキッとして新鮮なところが、江東三区のこまつな生産者の誇りです。草丈26~28センチ、重さは500グラム程度の束で出荷する生産者が多いようですが、中には1キログラムほどの大きい束で出荷する生産者もいます。都内の高級料亭など、プロの料理人にも高く支持されていますが、近年は、各区のブランドとしてこまつなを広く一般の方にもアピールしようと、結束テープに産地名を表示しています。



結束作業の様子
荷姿は平束(テープにブランド名)

販売戦略

 江東三区では、こまつなの経営向上に向けてIPMの導入による農薬に頼らない生産や、結束テープのロゴマークによるブランドのアピールなどに取り組んだ結果、こまつな発祥の地として、また都内の最大の産地として、広く一般の方に知っていただけるようになりました。最近では食育の必要性が高まり、学校給食への供給と食育支援を併せた取り組みが進められています。この取り組みは特に江戸川区において盛んで、

① 交流会やほ場見学などを通じて、生産者が栄養士に栽培状況や農薬低減の情報を発信する

② 調理する当日に、生産者が学校に新鮮なこまつなを配達する

③ 生産者が教室に足を運び、子供達に特産のこまつなや江戸川区内の農業について講演を行う

などの取り組みを行っています。



学校に直接配達する生産者
給食の時間に江戸川区の農業について講演

一言アピール

 カルシウムを多く含み栄養面で価値が高く、伝統野菜でもある江戸野菜こまつな。中でも江東三区のこまつなは、昔から高い生産技術と、安全・安心を支える最新のIPM技術で生産された「プロ」が評価する逸品です。高級料亭、あるいは学校やお年寄りのカルシウム補給を目的とした給食、伝統の江戸風雑煮にも、こまつなは欠かせません。江東三区のこまつなをぜひご賞味ください。

お問い合せ先

東京都中央農業改良普及センター東部分室
〒133-0073 東京都江戸川区鹿骨1-15-22
電話03-3678-5905  Fax 03-3670-4250

 
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