セルリー(セロリ)(以下「セルリー」という)の学名「アピウム・グラフェレンス」は、「湿気のある土地に生え、強い匂いを放つ」という意味を持っており、その名前が示すとおり、紀元前からヨーロッパの山岳地帯の湿地に広く自生していました。
薬用植物としての歴史が古く、古代ギリシャやローマにおいては、鎮静・整腸・強精作用のある薬や香料として利用されており、17世紀に入り、ヨーロッパ南部で食用として栽培が始まりました。
日本に渡来したのは16世紀末。豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に加藤清正が中国から持ち帰ったため、「キヨマサニンジン」という名で呼ばれていました。西洋種が入ったのはその後の江戸時代ですが、一般的に普及したのは、食生活が洋風化した昭和30年代に入ってからです。
セルリーは、茎葉の色によって、黄色種、緑色種、中間種、赤色種、白色種に大別できます。かつて日本では、セルリー特有の強い香りが敬遠され、繊維が多く香りの少ない黄色種が利用されていましたが、最近は、サラダ需要の増加に伴って、肉厚で繊維が少なく香りもほど良い中間種が好まれ、流通の大半を占めています。スープや煮込み料理など、セルリーを加熱して食すことの多い欧米では、肉厚で香りの強い緑色種が主流ですが、近年、日本でもセルリー本来の香りがする緑色種の消費が増加傾向にあります。
産地移動やハウス・トンネル栽培により一年を通して出回りますが、おいしい時期は冬春セルリーと夏秋セルリーの出回り量が多くなる12~4月と7~10月です。
最近の価格動向を見ると、サラダとして一緒に使用されることの多いレタスの価格に連動する傾向があり、好天が続き、野菜全般が豊作による安値傾向にある中、買い求めやすい価格で推移しています。
もっとおいしく! オススメの食べ方
葉の緑色が鮮やかで、ハリとツヤがあるもの、切り口が白くみずみずしいものが新鮮です。また、茎が肉厚で、縦筋にメリハリがあり、凸凹がくっきりとしているものが良品です。
古くなって葉にしおれや黄ばみのあるものや、切り口に穴が開いてスが入っているものは、堅く筋張っているので避けましょう。
セルリーは、カリウムをはじめ、ビタミンK・C・B6などのビタミン類や食物繊維を豊富に含みます。そのため、ビタミン不足や便秘気味の人に特におすすめの健康野菜です。
カリウムは、ナトリウムを排泄して血圧を下げるので、高血圧などの生活習慣病の改善に効果があります。また、ほかの野菜に比べて多く含まれるビタミンB6は、神経伝達物質の合成にも必要なビタミンで、神経の正常な働きを維持するのに効果的です。
薬用植物としての歴史も古く、緑の葉には免疫力を高めるカロテンや疲労回復に効果的なビタミンB群が豊富に含まれるため、茎葉を果物などと混ぜてジュースにするなど、葉も捨てずに利用しましょう。葉を刻んで布袋に詰め、浴槽に入れれば香りもよく冷え症改善にもなります。
「五訂日本食品標準成分表」セルリー(葉柄・生)より
30歳の女性1日当たりの食事摂取基準を100とした場合におけるセルリー(葉柄・生)100グラム中に含まれる主な栄養素の割合(ただし、葉酸・ビタミンC・B6は推奨量の値を、そのほかは目安量の値を用いた)。
セルリー独特の香りは、茎や葉に含まれる‘アピイン’という精油成分によるものです。‘アピイン’には、イライラや不安感を取り除いて精神を安定させる働きがあるため、不眠がちな日が続くときなどに、水を入れたコップにセルリーを挿して枕元に置いておくと、気が休まって安眠効果が期待できます。
そのほか、頭痛改善や抗がん作用、肉や魚の臭みを消して食欲を増進させる効果も認められています。そのため、セルリーを香味野菜として用いるのは、機能的にも理にかなっています。
平成20年度の全国の作付面積は、657ヘクタール(前年度比98%)、収穫量は34,200トン(同97%)となっています。
生育適温は、15~20度。涼しい気候を好み、乾燥を嫌う野菜です。は種から収穫まで6カ月もかかり、病虫害や水・肥料の管理など高度な栽培技術が必要なことから、新規参入が少なく、限られた産地構成となっており、5~11月にかけては長野産、11~5月にかけては静岡産が多く出回ります。この両県で全国の出荷量の6割強を占めており、福岡、愛知、北海道がこれに続きます。このほか、一年を通して主に米国などから輸入されています。
セルリーの魅力は、シャキシャキとした食感です。繊維に沿って切ったり、繊維を断ち切るように切るなど、料理や食べ方に合わせて切り方を工夫しましょう。新鮮なセルリーほど、外側の茎の筋が固いので、茎の端に包丁を当てて、筋を手前に引くようにして取り除くと、食べやすくなります。
カレーやシチュー、スープなどを煮込むときの香り付けとして、セルリーをひとかけ加えると、風味とコクが増して味に深みのある仕上がりになります。また、肉や魚を焼いたり、蒸したりするときに加えると、臭みが取れて、さわやかな風味が残ります。
【保存方法】保存する場合は、葉の部分から水分が失われるので、葉と茎を切り離して、それぞれを新聞紙で包み、ビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室へ立てて入れます。
茎がしんなりしているときは、使う前にコップに冷水を用意し、根元を冷水にひたしてしばらく置くと、みずみずしさが戻ります。