コメ、ムギと並ぶ世界三大穀物のひとつ、トウモロコシの原産地は、メキシコから南アメリカ北部にかけてといわれています。栽培の歴史は古く、マヤ、アステカなどの古代文明にまでさかのぼります。1492年にアメリカ大陸に到達したコロンブスがヨーロッパに持ち帰り、世界中に広まりました。日本へは16世紀に長崎に渡来し、明治時代の北海道開拓を機に本格的な栽培が始まりました。
トウモロコシには、メキシコ料理のタコスやトルティーヤなど主に穀物として利用される硬粒種(フリント種)、家畜の飼料として利用される馬歯種(デント種)、ポップコーンに利用する爆粒種(ポップ種)、生食用や加工用の甘味種(スイート種)など多くの種類があります。このうち、野菜として利用している甘味種の未成熟トウモロコシを“スイートコーン”と呼ぶようになり、第二次世界大戦後、米国から新品種が導入されると、栽培が急速に普及しました。
スイートコーンは、糖度によってスイート種とスーパースイート種に、また、粒の色によってイエロー系、シルバー系、黄色と白が混ざったバイカラー系に大別できます。甘さの追求も進み、昭和40年代から全国で栽培されるようになった‘ハニーバンタム’以来、甘みの強いスーパースイート種が生食用として主流となっています。現在は、‘ハニーバンタム’を改良した‘ゴールドラッシュ’や‘味来’のほか、昭和60年代に登場した‘ピーターコーン’を先駆けとする‘バイカラーコーン’が流通の大半を占めています。
おいしい時期は、7~9月。朝取りを予冷して輸送したり、旬の時期は北海道から空輸するなど、取れたてのおいしさを各地で味わえるようになっており、季節野菜として、また、子どものおやつとしても消費は好調です。
量販店では、手軽さを求めるニーズに応えて湯気の立つ出来立てを並べるなど、店頭調理も人気を呼んでいます。
価格動向を見ると、今年は穂が出て結実する5月後半の天候に恵まれ、生育が順調なことから、作付面積の増加も相まって、買い求めやすい価格で推移しています。
新鮮なものは、加熱して塩やバターで丸かじりするのが一番ですが、粒を外して炒め物やかき揚げにしたり、スープやグラタンに入れてもおいしいです。また、ピザやラーメン、サラダなどのトッピングにも重宝します。
おいしい“スイートコーン”を選ぼう!
皮の緑色が濃く、実が先までぎっしりと詰まっており、粒がふっくらしているものが新鮮です。ひげの1本1本が粒の一つ一つにつながっているので、ひげが多いものほど粒の多い良品です。また、ひげの褐色が濃いものは、よく熟して甘みがあります。
穀物的性格を持つスイートコーンは、炭水化物が主成分で、エネルギーの補給源となります。
胚芽の部分には、糖質代謝を円滑にして疲労回復に役立つビタミンB群や、生活習慣病の予防が期待できるビタミンEのほかにも、むくみの解消や高血圧予防に効果があるカリウム、骨や歯を丈夫にするカルシウム、タンパク質の合成に必要なマグネシウムなどをバランスよく含む栄養価の高い野菜です。
また、スイートコーンの粒皮は、セルロースという不溶性の食物繊維でできているため、便秘の改善や大腸がんの予防効果も期待できます。
「五訂日本食品標準成分表」 スイートコーン(未熟種子・生)より
30歳の女性1日当たりの食事摂取基準を100とした場合におけるスイートコーン(未熟種子・生)100グラム中に含まれる主な栄養素の割合(ただし、葉酸・ビタミンB1・マグネシウムは推奨量の値を、その他は目安量の値を用いた)。
スイートコーンの胚芽は、‘リノール酸’を含みます。リノール酸は、成長や健康維持のために不可欠な必須脂肪酸の一つで、体内で合成することができないため、食事から摂取することが必要な栄養素です。血液中のコレステロール値を下げて、高血圧や動脈硬化を抑制する働きがあるため、生活習慣病の予防効果が期待できます。
摂取し過ぎると高血圧を招いたり、アレルギー症状の悪化につながるともいわれていますが、逆にリノール酸を含む必須脂肪酸が不足すると、皮膚炎を起こしたり、髪のパサつきや抜け毛が増えたり、感染症にかかりやすくなる場合があるので、適度な摂取を心掛けるようにしましょう。
平成19年の全国の作付面積は25,600ヘクタール(前年比101%)、収穫量は256,700トン(前年比111%)となっています。作付面積・収穫量ともに減少傾向で推移していましたが、夏場に収穫ができ、土壌改良効果も期待できることから、ここ数年、露地野菜地帯での輪作作物として作付面積が増加しています。
全国出荷量の約45%を占めるスイートコーンの大産地、北海道では、生産量の7割以上が缶詰や冷凍、コーンフレークなどの加工に仕向けられます。そのほか、千葉や茨城、長野、群馬などで主に生産されています。
生育適温は22~30度前後。温暖な気候を好みますが、寒さにも比較的強い野菜です。
夏場の旬野菜であり、6月から9月が入荷量のピークですが、ポリマルチ栽培のほか、トンネル・ハウス栽培の併用による栽培技術の進歩や栽培地域の拡大により、中国や豪州からの輸入ものも含めてほぼ周年出回っています。
鮮度の低下が激しく、時間とともに風味や甘みが減少するので、買ったらその日のうちに食べるのがおいしくいただく条件です。保存する場合は、皮付きのままラップで包み、茎を下にして立てた状態で冷蔵庫の野菜室に入れ、翌日には食べ切りましょう。すぐに食べない場合は、ゆでてからラップで包み、冷蔵庫に入れれば2~3日保存可能です。また、冷凍保存する場合は、ゆでたものを3センチ程度の輪切りするか、包丁で実を外して密閉袋に入れます。