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今月の野菜

香りとやわらかな歯触りがおいしい
初夏の味覚“そらまめ”


流通の大半を占める‘一寸そらまめ’。4~5月にかけて多く出回ります。s

‘一寸そらまめ’は、豆一粒の大きさが一寸ほど(約3.3センチ)あり、ふっくらとした豆の形がお多福さんに似ていることから、‘お多福豆’とも呼ばれます。


市場から

 

 初夏の味覚の一つとして親しまれている‘そらまめ’は、右写真のとおり、さやを空に向けて実るから「空豆」とも、蚕が作る繭の形に似ていることから「蚕豆」とも書きます。

 古代エジプトの墳墓からも種子が出土するなど栽培の歴史の古い農作物の一つで、原産地は西南アジアから北アフリカといわれていますが、諸説あります。

 日本には奈良時代に来日したインドの僧が中国で入手した種子を僧の行基に伝え、兵庫県武庫村(現在の尼崎市)で試作されたと伝えられており、当時は、麦に混ぜるなどして食され、不作のときの救荒作物にもなっていました。

 そらまめには、ダイズ、アズキのように完熟した豆を利用する種類と、若い豆を利用する野菜用の種類があります。完熟豆は、炒り豆や煮豆、甘納豆、あんの原料などに使われます。また、中華料理に欠かせない調味料の豆板醤は、四川地方特産のそらまめを発酵させて作られます。一方、野菜としてのそらまめは、未熟な豆を塩ゆでにして食べるのが一般的です。大さやから小さやまで多くの品種がありますが、さやが大型で豆粒が大きい‘一寸そらまめ’が現在、流通の大半を占めています。

 地域によっては‘四月豆’、‘五月豆’、‘夏豆’など、収穫される季節にちなんだ名前が付けられているとおり、季節性の高い野菜で、おいしい時期は4~6月。大相撲の五月場所をピークに、売れ筋商品がえだまめに切り替わります。

 かつて、東京では、「そらまめの出始め」「大相撲の夏場所」「神田祭」が初夏の風物詩となっていました。タンパク質が豊富で、ビタミン、カリウムなども多く含まれるため、ビールのおつまみ、子供のおやつなど夏バテ防止にもってこいの初夏の味覚として、現在も人気野菜の一つとなっています。

 今年は、暖冬の影響で産地での生育が順調なことから、前倒し出荷により入荷量が増加しており、買い求めやすい価格で推移しています。


もっとおいしく! オススメの食べ方

 

 日本酒やワインとの相性抜群なそらまめは、塩ゆでするだけの簡単な調理でおいしいおつまみになります。また、鮮やかな緑色を活かして、パスタやサラダに入れたり、含め煮やかき揚げ、ポタージュにしてもおいしいです。

情報提供:東京青果株式会社
 加藤宏一
おいしい“そらまめ”を選ぼう!

 

 空気に触れると急速に味が落ちるため、できるだけさや付きを買い求めましょう。さやの緑色が濃く、ハリとツヤがあるもの、外から見て豆の形がはっきりわかり、粒の大きさがそろっているものは生育のよい良品です。背筋が褐色になっているものや触ったときに皮が薄く豆を指で感じるものは、鮮度が落ちている証拠なので避けましょう。

おいしいそらまめを選ぼう!

そらまめの栄養と機能性

そらまめの栄養と機能性

 そらまめは、野菜としては水分が少ない分、各栄養素を豊富に含むバランスのよい野菜です。糖質とタンパク質が主成分で、素早くエネルギー補給ができます。ビタミン類は、代謝を円滑にするビタミンB群(B1、B2、B6、ナイアシン)を豊富に含み、疲労物質である乳酸を分解し、エネルギーを効率よく燃やします。ビタミンB1には、アルコールの分解を助ける働きがあるため、機能的にもお酒のおつまみに最適な野菜といえます。また、「発育のビタミン」とも呼ばれるビタミンB2は、成長の促進、皮膚・髪・爪などの細胞の再生にも関与する働きがあるため、子供のおやつとしても最適です。

 そのほか、体の健康維持に欠かせないミネラルや生活習慣病予防に効果的な食物繊維も豊富に含みます。外して食べることが多い薄皮は、食物繊維の宝庫で、旬のものは軟らかく、無理なく食べることができるので、薄皮も食べると効果的です。

「五訂日本食品標準成分表」 そらまめ(未熟豆・生)より
 30歳の女性1日当たりの食事摂取基準を100とした場合におけるそらまめ(未熟豆・生)100グラム中に含まれる主な栄養素の割合。(ただし、葉酸、ビタミンB1・Cは推奨量の値を、その他は目安量の値を用いた。)



不足しがちな‘ミネラル’を豊富に含むそらまめ




 そらまめは、高血圧予防に効果的なカリウムのほか、骨や歯を形成するカルシウムや鉄、亜鉛など日本人が不足しがちなミネラルを豊富に含みます。特に鉄と亜鉛が豊富で、酸素を全身に供給し貧血を予防する鉄分は、ほうれんそうと同じくらい多く含みます。また、亜鉛は、多くの酵素の成分として重要なミネラルで、細胞の形成や新陳代謝を促すほか、食欲増進、抗酸化作用、味覚を正しく保つなどの効能が期待できます。

監修:実践女子大学教授
田島 眞



そらまめのいろいろ 種類・品種の特徴
そらまめのいろいろ

そらまめのいろいろ
監修:元農林水産省野菜試験場育種部 芦澤 正和

そらまめの主要産地

 

 2007(平成19)年の全国の作付面積は2,520ヘクタール、収穫量は21,500トンとなっています。生育適温は、16~20度と狭く、耐暑性・耐寒性に弱い野菜です。

 主産地は鹿児島、千葉、茨城、宮城など。都道府県別にみた収穫量の割合は、鹿児島県が全国の26%を占め、次いで千葉県14%、茨城県8%となっており、この3県で全国の約半分を占めています。大粒種の秋まき春どり栽培を中心に、春まき夏どり栽培、夏まき秋どり栽培が行われます。ハウスやトンネルなどを利用した施設栽培や、予冷・保冷技術の進歩により、秋の一時期を除いて日本各地から、おいしいそらまめが届くようになっています。

 東京や大阪などの市場へ出回るのは5~6月がピークですが、そらまめの旬前線は桜前線より2カ月ほど遅れて北上します。3~4月に鹿児島産が旬を迎え、4月下旬~5月にかけては愛媛・香川などの中間地帯、5~6月上旬にかけては千葉・茨城などの関東平野部、6~7月にかけては宮城など寒冷地ものへと北上していきます。近年は、鹿児島県における増産により12~4月の出荷量が増加し、出回り時期も拡大しています。

そらまめの主要産地と収穫時期
注:図中の番号は収穫量の多い順番です。
資料:農林水産省「平成19年産 農林水産統計」
調理のヒントと保存方法
【調理のヒント】

 ゆでるのが一般的ですが、蒸したりさやごと焼いてもおいしいです。ゆでる場合は、たっぷりの湯に塩ひとつまみを入れ、フタをせずに強火で2~3分程度硬めにゆで、ザルに取って余熱を冷ますとちょうど食べ頃になります。「お歯黒」と呼ばれる黒い筋のある方と反対側に、豆の縁に沿って包丁の先で切れ目を入れておくと、ほどよく塩味がつき、あとで薄皮がむきやすくなります。

 焼く場合は、さやごと皮に黒く焼き目がつくまで4~5分焼くと、蒸し焼き状態になり、うま味が凝縮され、香りもよくなります。網焼きでも魚を焼くグリルでも、オーブントースターでも可能です。


【保存方法】

 「そらまめのおいしい期間は収穫してから3日間」といわれるくらい鮮度の低下が早いため、買ったその日のうちに食べるのが最適です。保存する場合は、さやつきのものは、風に当てないようにビニール袋に入れて冷蔵庫へ。さやから出したものは、塩ゆでして冷ましてからラップに包んで冷蔵庫へ入れ、1~2日で食べ切りましょう。おいしさを長持ちさせるには、硬ゆでして 水気を切り、くっつかないように少し離して密閉袋に入れて冷凍保存します。









愛媛県(そらまめ) 

産地紹介
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