頭頂部の大きなつぼみのかたまりと茎を食用とするブロッコリーは、キャベツ同様、東地中海沿岸原産の野生種ケールを起源とする野菜です。
日本へは、明治初めに渡来しましたが普及せず、1970年代になってから、食生活の洋風化に伴って食卓にも上るようになりました。輸入品により消費が定着した代表的な野菜で、国民の栄養意識が高まった1980年代に入って米国カリフォルニアなどからの輸入ものが加わり一年中出回るようになると、その栄養価が評価され、消費量が一気に伸びました。また、需要の増加に伴って国内産地における予冷体制が整い、国産の周年供給体制が確立しました。
品種の分化は多くなく、頭部の大きなつぼみを食用とする頂花蕾(ちょうからい)型が主流ですが、脇から次々と育つつぼみを食用とする側花蕾(そくからい)型、頭部にできたつぼみと脇から出てくるつぼみの両方を利用する頂花蕾・側花蕾兼用型など、花蕾を収穫する場所の違いによって若干分かれている程度です。最近は、長い茎も丸ごと食べられるスティックタイプのブロッコリーのほか、新芽を食べるブロッコリー・スプラウトなどが商品化され、人気を集めています。
手間いらずで鮮やかな緑が映えるブロッコリーは、肉料理の付け合わせに、野菜サラダの組み合わせにと重宝するため、主婦のお気に入り野菜の一つとなっています。また、香りや味にクセがなくほのかな甘味があることから、子供や若者にも人気で、栄養価の高い緑黄色野菜として消費は好調です。一株100円と廉売することで一端入荷が増えた米国産を味や品質の充実により国産が巻き返したという良い例を作った野菜で、国産シェアは今後もさらに高まることが期待されます。
価格動向を見ると、晴天が続き順調に生育していることから、出回り量が増えており、底堅いながらも買い求めやすい価格で推移しています。
花蕾がこんもりと盛り上がっており、つぼみの粒が小さくしっかりと密集したものを選びましょう。また、茎の切り口がみずみずしく、スが入っていないものが新鮮です。
完熟したブロッコリーは軟らかく甘みも強くなりますが、小ぶりのものは早取りされた場合が多いので、重量感のある大ぶりのものを選びましょう。
キャベツ、だいこん、わさびなどのアブラナ科野菜は、芥子油(イソチオシアネート)と呼ばれる辛味成分を含むため、全般的に抗がん作用が高いといわれていますが、特に注目されているのがブロッコリーです。ブロッコリーの新芽に含まれるポリフェノールの一種‘スルフォラファン’には、体内に入った発がん性物質を解毒する酵素を活性化させる働きがあることから、米国国立がん研究所ががん予防効果の高い食材として発表した「デザイナーフーズ」の中でも、高い評価を受けています。
2007(平成19)年の全国の作付面積は11,900 ヘクタール(前年比104%)、収穫量は125,400トン(前年比103%)となっています。野菜全体の消費量が減少する中、ブロッコリーの消費は好調で、作付面積、収穫量ともに増加傾向にあります。1989(平成元)年と比較すると、作付面積131%、出荷量118%と、ともに増加しています。
ブロッコリーの生育適温は18~20度で、冷涼な気候を好みます。6~8月に種子を播き11月以降に収穫する夏播き秋冬どり栽培が主流ですが、緑黄色野菜として需要が増えるにつれ、国内各地に産地ができ、北海道、東北、長野などの高冷地では春播き夏どり栽培が、関東以南の暖地では夏播き冬春どり栽培が行われ、国産ものが一年を通してたくさん出荷されるようになっています。旬は、晩秋の11月から早春の3月まで。この時期は出回り量も多く、甘味があります。また、米国からの輸入が年間を通じて多いのが特徴です。
花蕾の下あたりに包丁を入れて軸を切り落とし、小房に分けます。茎も甘くておいしいので、厚めに皮をむき食べやすい大きさに切ります。色鮮やかに仕上がるように、塩をひとつまみ加えた熱湯に茎の部分から入れ、歯ざわりが残る程度に茹でます。ザルに上げて手早く水切りをすれば、余熱によるゆで過ぎを防げます。