原産地はユーラシア大陸北部といわれています。ごぼうと日本人のかかわりはかなり古く、解毒、解熱、鎮咳などに使う薬草として中国から日本に渡り、平安中期には、宮廷の献立にごぼうの記述があるので、この頃から野菜として食べられていたようです。長い間野菜として栽培し、日常的に食用にしているのは世界でも日本くらい。独特の風味やシャキシャキした歯ざわりが和風料理に欠かせない「根菜」として日本ではよく食卓に上りますが、欧米人の好みには合わないようで、「日本人は木の根を食べている」と驚くとか。最近になって、日本向けにごぼうを生産している台湾や中国でも健康に良いということで、食用にされています。
栽培の歴史が長いわりには品種の分化が少なく、耕土が深く水はけの良い関東では、滝野川群を代表とする長根種、耕土があまり深くない関西では、短根種や葉柄と若い根を食用にする白茎白花群(葉ごぼう)が発達してきましたが、現在では全国的に長根種の滝野川ごぼうが主流になっています。そのほか、日本各地には地方色豊かなブランドごぼうが存在し、千葉県でわずかに栽培されている‘大浦ごぼう’や、京都で栽培が始まった‘堀川ごぼう’などがあります。
貯蔵がきくため、一年を通して出荷されていますが、旬は晩秋から初冬にかけて。この時期のごぼうは旨味が一段と濃くなります。地中に細く長く根を張ることから、「根気がつく、家の土台がしっかりする」という縁起ものの素材としておせち料理に欠かせないため、年末が入荷のピークとなっています。
連作を嫌い収穫・出荷調製作業が大変な上、食生活の洋風化に伴って作付面積は減少傾向で推移していましたが、機械化が進み、低カロリーの健康野菜として鍋物などにも多く利用されるようになっていることから、近年消費は堅調で、作付面積も下げ止まっています。
価格動向を見ると、中国産が敬遠され、青森産を中心に国産の引き合いが強まっていることから、安定して推移しています。
香りと旨味は皮付近にあるので、鮮度も風味も保ちやすい泥付きを選びましょう。ひげ根が少なく太さが均一で、すらりと伸び、ひび割れていないものが良品です。
中国で薬草として用いられてきたごぼうは、水分が少なく炭水化物がとても多い野菜で、その成分には多くの効能があります。野菜の炭水化物は、消化・吸収されてエネルギー源になる糖質と、消化・吸収されない食物繊維に分けることができますが、ごぼうに含まれる多糖類のイヌリンや繊維質のセルロース、リグニンの含有量は、野菜の中でもトップクラス。いずれも便秘の解消、整腸、動脈硬化やガンの予防などの効果が期待できます。ごぼう特有のシャキシャキとした歯ざわりはイヌリンによるものですが、腸内での糖分吸収を遅くし、血糖値の上昇を防ぐ働きがあるため、糖尿病予防も期待できます。
ビタミン類は少なめですが、血圧上昇を抑えるカリウム、貧血を予防する鉄、カルシウムとともに骨の合成を助けるマグネシウム、味覚や嗅覚の働きを助ける亜鉛などのミネラルも豊富に含みます。
「五訂日本食品標準成分表」 ごぼう(根・生)より
30歳の女性1日当たりの食事摂取基準を100とした場合におけるごぼう(根・生)100g中に含まれる主な栄養素の割合。(ただし、食物繊維、カリウムは目安量の値を、その他は推奨量の値を用いた。)
平成19年の全国の作付面積は、8,800ha(前年比101%)、収穫量は163,100トン(前年比102%)と、前年よりわずかに増加しました。生産地は、東日本にやや偏っており、青森県、茨城県、北海道、千葉県、宮崎県で全国収穫量の約7割を占めます。また、収穫量の4割近くが東京都を含む関東地方で占められる都市近郊型野菜です。
作型は、大きく春播き秋どりと秋播き春どりに分かれます。栽培の主流を占める春播きは、早いもので9月から収穫が始まり、3月までは貯蔵され順次出荷されます。秋播きは、マルチやトンネルなどの保温資材を活用して、4、5月頃から出荷されます。ごぼうの周年供給はこうして達成されています。
ごぼうの香りや旨味は皮の部分に含まれているので、調理するときは皮の表面をたわしで洗うか、包丁の背で軽くこそげ落とす程度にしましょう。アクが強く、空気に触れると変色するので、白く仕上げたい場合は、切った端からサッと酢水にさらします。
繊維は縦に走っているので、歯ごたえを楽しみたいときは繊維に沿って切り、やわらかめにしたいときは、回しながら鉛筆を削るようにささがきにします。