アスパラガスは、みずみずしさと甘い香りが魅力の彩り野菜です。ヨーロッパでは紀元前から栽培されており、「春の宝石」、「貴婦人の指先」などと呼ばれ、春を告げる野菜として親しまれています。
日本へは18世紀末にオランダから伝えられましたが、当時は葉を楽しむ鑑賞用でした。食用としての本格的な普及は、1871年(明治4)にヨーロッパからアメリカ経由で北海道に導入されて以降です。第二次世界大戦以前は、アスパラガスといえば缶詰用に発芽後盛り土をして軟白栽培するホワイトアスパラガスでしたが、健康志向の高まりとともに栄養価が高く栽培の容易な生食用グリーンアスパラガスが主体となり、現在流通の大半を占めています。
アスパラガスは、枝や葉が出る前の長さ20センチメートルほどの若茎を食用にする野菜です。「アスパラガス」とは右写真のように(茎葉根が)「たくさん分かれる」というギリシャ語が語源で、「新芽」という意味です。収穫がピークの時期には、1日に10センチメートル以上も伸びる驚異的な成長力を持つため、連日朝夕の2回収穫されます。種を植えてから3年目に収穫可能になり、10年以上収穫できますが、株が古くなると収量が減り、病気にもかかりやすくなるため、10年をめどに改植が必要となります。
一般的なアスパラガスにはグリーンとホワイトがありますが、これは品種ではなく栽培方法の違いによるものです。最近は、紫アスパラガス、ミニアスパラガスなど色や大きさのバリエーションも増えており、消費者からの注目を集めています。
アスパラギン酸などを含み栄養価が高く手軽に調理できることから、女性や若者などから人気が出ており、全国的に消費が増加傾向にあります。国内産への引き合いが強まっていることから、販売価格も堅調に推移しています。
アスパラガスは、重量野菜ではないため高齢者でも作りやすい野菜です。また、資材費が安くおさえられる露地栽培が多いため、今後、低コスト化や高品質化により、国内産シェアの奪回が期待できる品目といえます。
新鮮なものはあまり手をかけずにシンプルな料理で持ち味を楽しめます。ゆでてマヨネーズやゴマ酢でサラダや和え物に。また、天ぷらや、ベーコン巻きにしたり、グリルなどで焼いて塩、しょうゆで味わうのも甘みが増しておいしいです。
緑色が濃くつやがあり、まっすぐに伸びて切り口がみずみずしいものが新鮮です。
穂先から傷みやすいので、穂先が堅くつぼみ、ピンとしてしおれていないものを選びましょう。茎は中太のものが良品とされています。茎の細いものは硬めで、太い方がやわらかく甘みがあります。切り口が乾燥しているものは茎全体が硬いので避けましょう。
アスパラガスには、主にグリーンとホワイトの2種類ありますが、栄養価が高いのは太陽を浴びて育ったグリーンアスパラガス。
グリーンアスパラガスは、カロテン含有量は少なめですが、一度に食べる量が多いためトマトと同様、緑黄色野菜に含まれます。
野菜の中でもたんぱく質や糖質が割合に多いほか、ビタミンB1、B2、C、K、葉酸などビタミン類を豊富に含みます。また、穂先の部分には、アミノ酸の一種であるアスパラギン酸や動脈硬化や高血圧を予防するルチン、シワやたるみなどの老化を防止する働きがあるグルタチオンという抗酸化物質が多く含まれるなど、栄養価の高い野菜です。
ホワイトアスパラガスは、がん細胞の増殖抑制、脂肪吸収抑制効果のあるサポニンを多く含みます。
「五訂日本食品標準成分表」アスパラガス(若茎、生)より
30歳女性1日当たりの食事摂取基準を100とした場合における、アスパラガス(グリーン、若茎、生)100g中に含まれる主な栄養素の割合。(ただし、ビタミンE、カリウムは、目安量の値を、その他は推奨量の値を用いた。)
植物の茎に集中している「アスパラギン酸」は、新陳代謝を促進し、アスパラガス特有の旨みや甘みのもとになっています。たんぱく質を構成するアミノ酸の一つで、アスパラガスから発見されたことから命名されました。
アスパラギン酸は体内でエネルギーの代謝を活発にして、疲労回復を早めます。また、たんぱく質の合成を助けるので、皮膚の新陳代謝を活発にして美肌効果を発揮したり、身体の成長を助けたりするといわれています。アスパラガスの成長が早いのは、芽の部分にアスパラギン酸を多量にもっているからだといわれています。
~穂先に含まれるルチンは生活習慣病予防に効果的~
アスパラガスの穂先にたくさん含まれている成分の一つにルチンというフラボノイドの一種があります。そばなどに多量に含まれていて、毛細血管を丈夫にして高血圧や動脈硬化などの生活習慣病を予防する作用があります。ルチンはビタミンCと一緒に働くとお互いの機能を増強し合って、抗酸化機能を強めるため、ルチンとビタミンCの両方を併せ持つグリーンアスパラガスには、強い抗酸化力を期待できます。
アスパラガスの全国の収穫量は28,200トン(平成18年)です。
以前は4~7月の国内産の出荷期間以外は輸入物が多く出回っていましたが、ハウス栽培や春収穫した後に3~5本の茎を親株として残して育て、養分を根に残しながら長く収穫を続ける立茎栽培の普及により、晩秋・初冬を除く年間を通しての長期出荷が可能となっており、国産と輸入物でほぼ周年供給されています。
国内の主な産地は、北海道や長野、秋田などの寒冷地と、佐賀、長崎、熊本などの暖地に分布しています。国内では群馬産が年初から出回りはじめ、その後、佐賀、長崎、長野、福島、秋田、北海道と秋まで続きます。国内産が減る秋から真冬の2月頃には、オーストラリアやメキシコから、3~4月にはアメリカからも輸入されています。
根元のごく硬い部分だけを切り落とし、硬い皮は削り取って使うと、捨てる部分が少なく、やわらかく食べられます。
グリーンアスパラガスに多い水溶性のビタミン類は、ゆでると減少するため、焼くか炒めるほうが栄養価を効果的に摂取することができます。
ゆでる場合は、たっぷりの熱湯に塩をひとつまみ加え、先端にいくほどやわらかいので、先に根元のほうからゆっくり湯に入れると全体が均一にゆで上がります。水にさらさず、ざるに広げてあおいで冷ますほうが風味良く仕上がります。
アスパラガスは鮮度劣化がとても早い野菜なので、できるだけ買ったその日のうちに食べ切りましょう。
1~2日保存する場合は、ポリ袋などに入れて乾燥しないようにしたら、穂を上にして、立てて冷蔵庫で保存するのがポイントです。横向きに置くと穂先が上向きに起きようとする性質があり、その際に使われるエネルギーで栄養素も失われ、味が落ちてしまいます。
長期保存する場合は、色が変わる程度に軽くゆで、粗熱をとってから冷凍しましょう。