ばれいしょの原産地は南アメリカのアンデス高原です。16世紀にヨーロッパに持ち込まれ、当初は観賞用でしたが、次第に食されるようになり18世紀には主要作物として盛んに生産されるようになりました。現在では世界五大食用作物の一つとして世界中でよく食べられており、ドイツやポーランドなどでは主食にもなっています。
日本への渡来は、1600年前後で、ジャカトラ(現在のインドネシア)を東洋貿易の拠点としていたオランダ人が船にばれいしょを積んで長崎に持ち込んだことに始まります。このため「ジャカトライモ」と呼ばれ、それがつまって「ジャガイモ」と呼ばれるようになったとされます。また、「馬鈴薯」という名前は、馬の首につける鈴の形に似ていることからついたとされています。
ばれいしょは、品種が多く系統的な分類はできませんが、栽培上で大別すると春に植えつける春作(男爵薯、コナフブキ、メークイン、ワセシロ、キタアカリなど)と、夏に植え付ける秋作(デジマ、ニシユタカなど)があります。
用途別消費を見ると、家庭などで消費する生食用(約3割)、マッシュポテト・ポテトチップスなどの加工食品用(約2割)、インスタント麺やかまぼこなどの原料として使用されるでん粉原料用(約5割)に大別されます。
生食用の品種としては、長い間、ホクホクとした粉質の男爵薯と煮崩れしない粘質のメークインが大部分を占めてきましたが、品種改良によりキタアカリ、ニシユタカ、ワセシロ、デジマ、とうやなどさまざまな品種が出ており、料理の用途に応じて使い分ける消費者が増えています。
価格の動向を見ると、全国的にやや豊作気味で、とくに北海道産が豊作なことから、安値傾向で出回っています。
ばれいしょは、ポテトサラダ、肉じゃが、コロッケ、カレーライス、シチュー、フライドポテトなど料理の用途の幅が広い野菜です。
品種により特性が異なるので、料理によって使い分けましょう。
ホクホクした粉質の男爵薯は、コロッケや肉じゃがに。また、ポテトサラダに使うときれいな白に仕上がります。粘質のメークインは煮崩れしにくいので、カレーやシチューなど煮こみ料理に向きます。新じゃがはていねいに洗って皮つきのままゆでたり、煮っころがしにするとおいしいです。
全体がふっくらしていてでこぼこが少なく、かたくて重いものを選びましょう。また、皮が薄く、色が均一で新鮮なものが良品です。
大きすぎるものはスが入っている場合もあるので避けましょう。また、芽が出ていたり、光に当たって緑化したものは避けましょう。
ばれいしょはでん粉質が多く含まれていることからエネルギー源となり、主食としても用いられるなど穀物としての特徴をそなえています。一方で、ビタミンB1やB6、C、カリウム、食物繊維なども豊富に含まれ、野菜としての特徴も兼ねそなえています。
ばれいしょは、ビタミンが豊富な野菜です。ビタミンAは、インカのめざめやキタアカリなど果肉が黄色いものにしか含まれませんが、それ以外のビタミンをバランスよく含んでおり、フランスでは「大地のリンゴ」と言われるほど、ビタミンCやB1、B6が豊富です。とりわけ、ビタミンCはりんごの約10倍も含まれており、加熱や長期間の保存による損失が少ないという利点があることから、ビタミンCの重要な供給源の一つといえます。
ビタミンCはコラーゲンの合成に不可欠で、骨や血管を強化して老化を予防します。また、メラニン色素の生成を抑えてしみ・そばかすを改善し、肌にはりとつやを与えるという美肌効果や免疫力を高めて風邪やがんを予防する効果が期待できます。
ばれいしょのビタミンB6含有量は野菜ではトップクラスです。ビタミンB6はたんぱく質の代謝や再合成を手助けし、皮膚や髪、歯などの健康維持に役立ちます。ビタミンB6が不足すると、貧血になったり、目、鼻、口、耳の周囲に皮膚炎を起こしやすくなることから、貧血や肌荒れ予防に効果的なビタミンといえます。
ばれいしょの全国の収穫量は2,643,700トン(平成18年産)です。生育適温は15~21℃と比較的冷涼な気候を好みます。
北海道が全国生産量の約8割を占める主産地ですが、日本全国で栽培されています。9月から1月にかけては北海道産が主に出回ります。2月頃から鹿児島など暖かい地方のものが出回り始め、5月になると長崎など九州産が最盛期を迎えます。6月には静岡や関東産、8月には東北産の出荷が最盛期を迎え、北海道産にバトンタッチします。このように南北に細長い日本では、おいしいばれいしょを年中楽しむことができます。
ばれいしょのビタミンCは加熱調理しても壊れにくいので、煮たりゆでたりしても高い栄養価を保ちます。
水からゆでると、ほっくり甘く仕上がります。切ってゆでるときは、皮をむいて切ったあと、水にさらしてアクを抜きます。丸ごとゆでる場合は、よく洗って皮つきのままゆで、その後に皮をむきます。皮ごとゆでてから皮をむいた方が切ってゆでるよりも水っぽくならず風味が生きます。
【保存方法】