産地の概要
~日照量が多く温暖な気候を生かした栽培~
JAとぴあ浜松は東京と大阪のほぼ中央、静岡県の最西部に位置し、平成17年7月1日に合併して誕生した浜松市の一部(旧浜松市、旧浜北市、旧浜名郡雄踏町・舞阪町、旧引佐郡引佐町・細江町)と湖西市、新居町の2市1町からなります。
東は天竜川、西は愛知県境、南は太平洋岸、北は天竜区境で、中央西寄りに浜名湖を抱え込み、大半が海岸地帯・天竜川右岸地帯・浜名湖岸地帯の平坦地で、北部が中山間地となっています。東西、南北とも約30 キロメートル、面積約 560 平方キロメートルです。
当地の気象は、年平均気温 15.7 度で温暖な気候です。年間日照時間は2,132 時間と長く、全国トップクラスの日照量を誇ります。年間降水量は 1,880mm 前後で夏期に多く、冬期の積雪はほとんどありませんが、この時期、西寄りの季節風(通称、遠州の空っ風)が強いことが特徴となっています。
浜松市は、自動車・楽器などの製造業をはじめ、野菜・花き・みかんなど全国的にもトップクラスの農業生産量を誇ります。
また、管内を JR 東海道新幹線、JR東海道本線、東名高速道路、国道1号線が走り、京浜・阪神・中京の大消費地に近いという恵まれた交通環境下にあります。
浜松市は、平成19年4月1日から政令指定都市となりました。周辺の市町と併せて、今後、ますますの発展が期待されています。
JAとぴあ浜松の平成18年度の農業における販売実績額は、全体で225億円で、野菜が110億円(49%)と中心になっています。その他は、花き47億円(21%)、畜産35億円(16%)、果樹31億円(14%)、米2億円(1%)となっています。野菜内訳は、ねぎ15億円(13%)、セルリー13億円(12%)、ちんげんさい11億円(10%)、たまねぎ9億円(8%)、ばれいしょ8億円(7%)となっており、ばれいしょは管内の主力野菜のひとつとなっています。
ばれいしょ栽培は大正初期に始まり、昭和28年から共販出荷に
ばれいしょは、浜松市の三方原台地と湖西市の白須賀台地を中心にして栽培されており、その地域で栽培されたものを「三方原馬鈴薯」といいます。三方原台地は昔、赤松や笹の生い茂る土地でした。先人たちがここを開墾したのですが、当時は、水の便が悪いため大変な苦労が伴いました。当地は酸性の強い粘土質のやせた赤土で、栽培できる作物は限られていました。大正初期に、粗放的な栽培や乾燥害の少ない安定作物として導入されました。
戦後、軍用地の払い下げや開拓民の移住等で、栽培面積は増加しました。昭和28年に、三方原、伊佐見、和地、花川の人たちが農協共販を始め、現在の三方原馬鈴薯の基礎が作られました。しかし、高度経済成長に伴い、他産業への労働力の流失、住宅地の増加で栽培面積は減少傾向にありましたが、近年は安定しています。
近年の生産規模についてみると、平成7年は、生産者数が794戸、面積が306ha、生産量は7,689トンでしたが、平成19年では、生産者が約400戸、面積が218ha、生産量は7,212トン、一戸当たりの平均面積は約55aです。生産者、面積は減少していますが、一戸当たりの作付面積が拡大しているのが特徴です。また、ばれいしょの他に、お茶を複合作物として栽培する農家が多く、また、ばれいしょの裏作としては、主としてだいこん、ブロッコリー、キャベツなどが栽培されています。
生産者の年齢層は、60才前後が最も多く、従来の生産者の他に会社を退職された方が農業を引き継いだり、また一方では20~30代の若い担い手も若干名ばれいしょの生産に取り組んでいます。
栽培品種は「男爵薯」
~肌がきれいで甘みがありホクホク感が特徴~
栽培品種の約80%が男爵薯で、その他の20%がメークインです。市場のニーズに合った品種を選定し長年栽培しています。ばれいしょの主産地である北海道の出荷端境期にあたる5~8月頃に男爵薯を取り扱い、市場販売を主としています。さらに、当地域の特徴である赤土栽培は水はけのよい赤土圃場で栽培をしているため、肌がきれいで澱粉価が高く甘み、ホクホク感のあるばれいしょが生産されます。
ばれいしょは、連作が出来ないので輪作にだいこんやその他の野菜を組み合わせて対応しています。いもが肥大する時に土壌の養分を急激に吸収すると生育に良くないため、農協や行政機関が一体となり、土壌管理について指導を行っています。
栽培は、春作が主で、種いもは、10~11月に男爵薯の産地であり、姉妹提携している北海道のJA今金町の男爵薯を中心に仕入れ、12月~2月に施肥を行い、順次、1~2月に種いもの植付けを行います。2月にマルチ貼り、3月に芽かき、4月~5月に消毒、5月~8月が収穫、出荷となります。
最近では、機械化が進み、種いもの植え付けや、土寄せ作業、掘り取り作業も機械化されました。機械化による労力が削減できたことで、栽培面積を増やした生産者もいます。
ばれいしょは、土壌の影響を受けやすく、生理障害を起こしやすいので、裏作としてだいこんを栽培したり、水はけをよくするよう圃場管理を徹底して障害の防止に努めています。
また、畑の土壌分析はJAとぴあ浜松で分析を行い、結果に基づいて土壌改良剤や施肥について農家への指導を行っています。農薬の使用確認は、圃場毎に「栽培管理台帳」を作成し、出荷前に生産履歴表をJAに提出するなどの生産履歴管理(トレーサビリティー)の徹底を図っています。
出荷体制
~消費者のニーズに応えるため、ばれいしょ専用選果場を建設中~
生産者は収穫前に、営農センターで、澱粉価の検査を行い、出荷基準値をクリアしたもの、農薬の使用が適正であることが確認されたものを収穫し、出荷しています。収穫は、畑が乾燥している晴れた日に行います。収穫されたばれいしょは、各農家が直射日光をさけて暗所で3日以上、皮むけを防ぐための風乾処理した後に、調製・選果し、箱詰し出荷します。
現在、JAとぴあ浜松管内の集荷センターは10数カ所あり、主に、各農家は夕方に集出荷場へ搬入し、JAの検査員が規格検査を行い、品質確認したものを出荷します。出荷規格は、A、マル、Bの3等級、階級が3L~2Sまで幅広く分かれております。包装形態は、10kg入りの段ボールが主流で、加工向けは20kg入りの紙袋です。販売先としては、現在、京浜方面を中心として、県内、中京、京阪神等の卸売市場に出荷しています。
JAとぴあ浜松では、農家の労力負担を軽減するために平成19年度から、ばれいしょ選果場の建設を開始し、平成20年産からの利用を予定しています。ばれいしょ生産の中でも労力を要する選果・選別が省力化されるだけでなく、澱粉価の測定や外観からは判断が難しい空洞果を判別するセンサーもそなえられることから、今まで以上に品質のバラつきが抑えられるようになります。また、これまで農家個々が行っていた箱詰めも機械化されることで、品質的にも消費者の期待を裏切らないばれいしょの出荷が可能になります。
販売戦略
~テレビ、新聞等で積極的にPR~
三方原馬鈴薯の特徴である、甘み、ホクホク感があり肌がきれいなばれいしょを売りにして、他産地にないような戦略で市場開拓を行っています。
具体的には、特許庁の地域団体商標(地域ブランド)、浜松商工会議所ブランド品(やらまいか浜松)として、「三方原馬鈴薯」を申請中です。
さらに、全国の消費者の方々への宣伝として、量販店で試食宣伝会も行っています。その他、消費拡大を目的として経済連や関連会社で、通販事業も行っております。
また、「三方原馬鈴薯」を全面に出した小袋包装や、食品会社との共同企画でPRしたり、JAとぴあ浜松の消費宣伝活動(とぴあフェア)を開催したり、テレビ、新聞等に対し積極的にPRするなど熱心な取り組みを行っています。
販売先は主に卸売市場向けですが、JAとぴあ浜松としては現在、直接取引で、ポテトサラダ用に地元の総菜メーカーへ販売しています。外観がきれいで品質の高いばれいしょという特徴を活かして、他産地との差別化を計った販売に取り組んでいます。
昨年も、東京、大阪で開催された農林水産省、農畜産業振興機構共催の「加工・業務用野菜産地と実需者との交流会」や地元、浜松市で開催された「地場を活かす地産地消推進大会」などの食品展示会に積極的に出席し、新たな市場開拓の取組みにも力を入れているほかに、現在、JAとぴあ浜松では直販事業に取り組んでいます。
やはり、消費者の方に、安全・安心なばれいしょを安定供給することがJAの使命であると自負しており、今後も安定的に供給することを心懸けていくとのことです。
一言アピール
当地域のばれいしょは赤土で栽培され肌がきれいで甘み、ホクホク感がある高品質なばれいしょで、有利な取引がされています。ばれいしょの大産地である北海道に次ぐ男爵薯の産地で5月から8月頃までの北海道産の端境期に男爵薯を提供できることも大きな特徴で、消費者の皆様にご好評を頂いております。
これらの素材の特徴を活かして、粉ふきいもとしてシンプルに調理し食されるのが一番のおすすめです。
その他にも、サラダや肉じゃが、さらに、コロッケなどの加工向けにも適しておりますので、ぜひ、当地のばれいしょを一度ご賞味ください。