さつまいもは約400年前にわが国に伝来したとされるが、いつの時点から焼きいもが誕生したかは定かではない。地域によって、人と焼きいもとの接点はさまざまであったと思われるが、文献として確認できるのは、1719年(享保4年)の朝鮮通信使の記録で、京都郊外の道端で焼きいもを売っている情景が記述されている。
その後、江戸時代には商品として庶民に広く親しまれるようになり、300年の時を経て、現在ではスーパーやコンビニエンスストアの店頭で誰もが気軽に買えるようになった。現在にいたるまで4回ほどあった「焼きいもブーム」については、東京を中心に以下のように整理している。
【第1次ブーム】 江戸時代後期の文化文政期(1800年頃)から江戸末期まで
・木戸番屋(町ごとに警備のために設けられた詰め所)で、甘くておいしく、値段が安い焼きいもが売られ、人気を博した。
・原料のさつまいもは、
新河岸川で結ばれる川越と、海路がある幕張から大量に送られてきた。
・土のかまどに
焙烙(素焼きの平たい土鍋)を載せていもを丸ごと、あるいははす切りにして並べ、蒸し焼きにした。
【第2次ブーム】 明治維新(1868年)から関東大震災(1923年)まで
・東京の人口が急増し、低所得者も多かったため、安価な焼きいもが大人気となった。
・大きなかまどを幾つも並べた大型専門店が続々現れ、最盛期には2000軒を数えた。
・関東大震災を境に食習慣がパンや洋菓子に移り、かまど焼きの焼きいもは衰退した。
【第3次ブーム】 太平洋戦争後の食糧事情がやや緩和して、さつまいもの統制が解除された頃(1950年)から大阪万博(1970年)まで
・墨田区向島の
三野輪万蔵氏が「石焼きいも」を考案、リヤカーで「引き売り」を開始。
・これが東京中に広まり、冬場の出稼ぎに来た売り子は1000人以上に達した模様。
・しかし、大阪万博を機にファストフードやコンビニエンスストアに押されて、売れなくなった。
【第4次ブーム】 2000年初頭から現在まで
・甘くてねっとり系の「安納芋」の焼きいもが若い女性を中心にスイーツ感覚で注目され、2007年に公表された食味の良い品種「べにはるか」の登場でブームに一気に火が付いたとされる。
・この背景には、電気式焼きいも機が開発されてスーパーやコンビニエンスストアなどに設置され、ねっとり系の焼きいもが気軽に購入出来るようになったことが大きな要因としてある(写真1)。
・寒い時期のみならず夏でも人気の「冷やし焼きいも」が定着するなど、季節を問わず一年を通じて国民生活に浸透している。
・寒い時期のみならず夏でも人気の「冷やし焼きいも」が定着するなど、季節を問わず一年を通じて国民生活に浸透している。