九条ねぎの青果用出荷では、
圃場で株を根元から抜き取り、株元の白い部分もついた状態で出荷するのが一般的である。一方、刻み加工などに用いられる加工・業務用出荷では、主に緑色の葉の部分が使用されるため、稲刈りのように株元の白い部分を残して、葉の部分のみを収穫して出荷することが多い。このため、圃場に残った株からまた葉を再生させることで繰り返し収穫することが可能となる(図1)。この方法は、「刈り取り再生栽培」とも言われており、一度の育苗、圃場準備、定植作業で1シーズンに2~3回収穫できるため、極めて効率の良い生産方法である。ただし、刈り取った収穫物は青果用として出荷することはできず、また、株元がついたものに比べると日持ちが悪い。そのため、出荷先と出荷量があらかじめ定められた契約栽培でのみ成り立つ生産方法となる。
圃場で収穫した後、施設に運ばれ、すぐに調製作業となる(写真2)。枯れた下葉を取り除き、定められた出荷規格に形状を整えて箱詰めする。出荷規格といっても青果用のような厳密さは求められず、箱に収まるように茎の長さを調整することや加工時に異物と判別される黄変した部分がないかなどのチェックが主になる。袋詰めなどはなく、簡素化が図られている(写真3)。段ボール箱に梱包後は、静岡県にあること京都の藤枝工場へと運ばれる。
みのり風土では、こと京都との間でシーズンの初めに年間の出荷数量を協議した上で、生産計画の策定を行っている。当地では、6~11月にかけてが出荷期間となる(図2)。2月に
播種し、ハウスで育苗した後に4月下旬から5月にかけて定植している。主な契約量はこの定植分で賄うが、他産地での出荷量が減少する8~9月にかけては、注文が増加するため、7月頃に追加で育苗、定植を行っている。定植した苗は、約2カ月で初回の収穫期を迎え、その後は刈り取り再生栽培となるため、1カ月から1.5カ月の間隔を空けて次の収穫期を迎える。圃場に苗を植えてしまえば、収穫までの作業はほぼ機械でこなせるので、以前のきゅうり栽培に比べると格段に作業が楽になったという。シーズン中は、圃場管理、収穫、調製といった作業が並行して常時行われるため、従業員のシフトを組みやすく、分業によって効率的に作業を進めることができる点も九条ねぎ生産の特徴である。
このような生産の特徴により、以前に比べ、村上氏自身が会社運営に関わる時間を確保できるようになったこと、それぞれの作業にスキルを持った従業員が育ちやすくなったことなどが、経営規模の拡大につながっている。
